親日ミャンマー人が現地で経験した2度目のクーデター
(16)ついに国軍による発砲で死傷者が
(本稿は2021年2月執筆です)
クーデターから20日目、ミャンマー情勢は緊迫の度合いを増してきた。マンダレーやカチン州の州都ミッチーナでは、抗議のデモ隊を排除するための国軍の発砲で死傷者も出た。
軍隊と警察隊のどちらを動かすのかは、その場の状況次第で決められるらしい。銃撃によって市民を煽り、混沌とした状況とさせ、それを鎮圧するという「既成事実」を作る作戦と思われる。軍隊の後方には、国軍のクーデターを正当化するドキュメンタリーを撮影するカメラマンが帯同しているという。
マンダレーでの発砲事件は、軍隊が川の船着き場に船を取りに行った際、近隣住民と小競り合いになり、国軍側が発砲、市民2人が死亡した。亡くなった2人は男性で、1人は頭部、1人は胸を撃たれ、ともに即死だった。このほか50人以上が負傷したという。誰が撃ったのかは明らかになっていないが、実弾で撃ったのは事実で、威嚇ではなかった。民衆の怒りはピークに達し暴動になりかねないが、その罠にはめられたら“非暴力運動”は水の泡となり、国軍の“思うつぼ”となる。
今の時代は、動画をすぐに配信することが可能なので、事実を歪めることはできない。市民たちも素早く反応し、冷静な行動を呼びかけている。
2021年2月22日は数字の「2」が5つ重なるので、SNSなどを通じてミャンマー国内で「22222REVOLUTION」と名付けた全国参加の革命運動が呼び掛けられている。国軍のやり方は、日本人の想像を超える非人道的なもので、日を追うごとに残虐化している。革命運動には犠牲がつきものとはいえ、あまり犠牲者が出ないよう皆が気を付けながら行動するしかない。これまでの最大規模の抗議活動を前に、緊張が高まっている。
国軍は、8888運動の時のように今の状況を「クーデターではない」と否定している。タイの軍事クーデターを模倣したいのかもしれない。国際社会に認めてもらいたいゆえに「憲法に従って政変を起こした」として内政不干渉の態度を貫くのだろうか? しかし、それは民衆の支持なくしてそれは不可能だ。今こそ、軍政の思い通りにならないということを知らしめるしかない。
まだまだ闘い続けます。見守ってください。
(続く)
Bandee
1965年、ヤンゴン市生まれ。88年、ヤンゴン大学在学中に8888民主化運動に参加。91年に日本に留学し、語学を学ぶ。2004年にミャンマーに帰国後、ボランティアの日本語講師となる。現在は主に人材派遣の育成プログラムを作成し、教育事業を行っている
バックナンバー
・(1)「クーデター発生から2日目の思い」
・(2)「アウン・サン・スーチー女史が国民に託した思い」
・(3)「なぜミャンマー国軍は強いのか?」
・(4)「なぜアウン・サン・スー・チー女史は国民に支持されるのか」
・(5)「今後のミャンマーの行方」
・(6)「私が為すべき役目とは」
・(7)「軍事政権への反対運動」
・(8)「国軍が戦略を変更したのはなぜか」
・(9)「ミャンマーの正義を守るための闘い」
・(10)「攻撃してくる象はまず一歩引く」
・(11)「2万4,000人の囚人が世に放たれる」
・(12)「上有政策下有対策」」
・(13)「民主化後、国軍幹部は処罰されるべきだった」
・(14)「日本人に伝えたい2つのこと」
・(15)「長期化も予想される籠城戦 vs 兵糧攻め」