親日ミャンマー人が現地で経験した2度目のクーデター
(14)日本人に伝えたい2つのこと
(本稿は2021年2月執筆です)
クーデターが起きてから今日で18日目。ミャンマー情勢は日本に住んでいる方たちにも広く伝わっていると思う。日本のニュースも評論家も現状をありのままに近い形で報道してくれたことをありがたく感じている。
皆さんはミャンマー軍政をどう思っているのだろうか。平和な日本で育った方々が軍事政権を感覚的に捉えられないのは理解できる。だからこそ、こうして現実をお伝えしたく、私はコラムを書かせてもらっている。
(1)ミャンマー在住の日本人に伝えたいこと
ミャンマーに在住している日本人は、日本人社会だけで生きている人と、ミャンマー人と交流しながら生きている人がいて、ともに一生懸命ミャンマーのことを勉強されていると思うが、そこで得られる情報はあくまでも表向きなものに過ぎない。
今のような非常事態の情勢では、平時の安全が保証されるどころか、明日さえ読めない状況となっている。平和な生活が当然だと思っていると、かえって危険に晒される可能性がある。日本の感覚でいると、想定外のハプニングに対応できないかもしれない。
そうしたハプニングを避けてほしく、私はこうしてミャンマー人目線から説明させてもらっている。不愉快に感じられる人もいるかもしれないが、現在のミャンマーでは一歩間違えば何が起きるかはわからない。それを十分に理解してほしい。
(2)日本の方たちと在日ミャンマー人のために
日本でも多くのメディアがミャンマーの情報を報道してくれているが、決してすべてが紹介されているとは限らない。一般的にテレビに出るケースでは、暴力的なシーンなどが取り上げられることが多いものの、ミャンマー人の気持ちがクローズアップされることはほとんどない。
日本に住んでいるミャンマー人は今も不安を抱えながら生活を続けているだろうし、そうなると仕事場でミスをしてしまい、会社に迷惑をかけてしまうかもしれない。そうしたことを少なからず、日本の方たちにも理解してもらいたい、というのが正直な気持ちである。
先日、日本にいるミャンマー人がコロナ禍にもかかわらず、国軍に対するデモ活動を行った。私としても申し訳ない気持ちだが、ミャンマー人にとって今回のクーデターは死活問題であり、それを日本人の方達に理解してもらいたかったという思いがある。
そんな彼らの精神的な支えとなるため、日本人の方たちの支援が必要であり、これからも私はミャンマー人として発信していきたいと思う。
温かく見守ってほしい。よろしくお願いいたします。
(続く)
Bandee
1965年、ヤンゴン市生まれ。88年、ヤンゴン大学在学中に8888民主化運動に参加。91年に日本に留学し、語学を学ぶ。2004年にミャンマーに帰国後、ボランティアの日本語講師となる。現在は主に人材派遣の育成プログラムを作成し、教育事業を行っている
バックナンバー
・(1)「クーデター発生から2日目の思い」
・(2)「アウン・サン・スーチー女史が国民に託した思い」
・(3)「なぜミャンマー国軍は強いのか?」
・(4)「なぜアウン・サン・スー・チー女史は国民に支持されるのか」
・(5)「今後のミャンマーの行方」
・(6)「私が為すべき役目とは」
・(7)「軍事政権への反対運動」
・(8)「国軍が戦略を変更したのはなぜか」
・(9)「ミャンマーの正義を守るための闘い」
・(10)「攻撃してくる象はまず一歩引く」
・(11)「2万4,000人の囚人が世に放たれる」
・(12)「上有政策下有対策」」
・(13)「民主化後、国軍幹部は処罰されるべきだった」