親日ミャンマー人が現地で経験した2度目のクーデター

第10回「攻撃してくる象はまず一歩引く」
(本稿は2021年2月執筆です)

 ヤンゴン市内では朝早くから市民全体がシュプレヒコールをあげ、反対運動を行っている。ただ、自分達が経験してきたデモ行動と少し違う感じがした。要するに“お祭り騒ぎ”のような印象でもあり、「本気でデモ活動をしているのか?」と思われる人もいるだろう。

 ただ、現代の若者達は我々の世代よりも賢いと思わざるを得ない。我々はクーデターへの反対という思いばかりだったため、活動内容は過激であり、攻撃的な衝突ばかりを起こした。冷静さや総合的な判断に欠け、結果、多くの犠牲者が出ることとなった。

 ジェネレーションZは明確に目標を設定し、それに向かってあらゆる可能性を模索しながら行動しているようだ。デモ活動も個性的であり、お互い役割分担で動いている。情報共有の仕方や効率性の追求、表現力も我々よりも一枚上手だ。結果はまだ出ていないものの武力を持つ国軍相手に非暴力で訴えるという心理的な揺さぶりも頼もしい。

 それに対し、軍評議会も着々と対応してきている。NLDの関係者などの拘束は現在わかっている数でも180名にのぼっている(2月12日現在)。今もこうして誰かが拘束されているに違いない。一定数の政治家を拘束し、その後デモ隊を鎮圧すると思われる。そろそろインターネットの遮断もされるだろう。市民側を段階的に弾圧してくるのはわかっている。

 だが、デモ隊もすでにあらゆる想定をし、対応できる用意はしている。とはいえ、血が流れる可能性も否定できない。国軍兵士は上司の命令が絶対だからだ。ミャンマーには「攻撃してくる象はまず一歩引く」ということわざがあり、現在の軍隊はまさにそうした状況。嵐の前の静けさといった様子で、ミャンマーに在留の日本人の方も気をつけてもらいたい。

(続く)

Bandee
1965年、ヤンゴン市生まれ。88年、ヤンゴン大学在学中に8888民主化運動に参加。91年に日本に留学し、語学を学ぶ。2004年にミャンマーに帰国後、ボランティアの日本語講師となる。現在は主に人材派遣の育成プログラムを作成し、教育事業を行っている