親日ミャンマー人が現地で経験した2度目のクーデター
第2回「アウン・サン・スーチー女史が国民に託した思い」
2021年1月26日に行われた国軍による記者会見で報道官のゾー・ミン・トゥン少将が語った「憲法や現行の法律の範囲内でクーデターを起こさないとは言えない」という言葉の背景には、場合によってはクーデターを実行の可能性を示唆していた。下記の写真はミン・アウン・フライン国軍司令官が1月28日にアウン・サン・スーチー女史に送った手紙である。
2021年1月28日
2020年11月8日選挙の有権者リストの調査を行った。結果、多数の100歳以上の投票が含まれていることが判明し、また1048万2116名もの多重投票が行われていた形跡が見られた。再調査するようお願いする。
選挙管理委員会(UEC)のメンバーは有権者リストを再調査する上で重要な役割を果たすため、UECを改めて再編成し、軍が推薦したメンバーも入れるべきである。
新たなUEC委員会による再調査を行うため、2021年2月1日に開催される議会の招集を取りやめる必要がある。本日(2021年1月28日)中に指示するようお願いする。
軍による調査結果のコピーをこの手紙に添付する。
これらの要望に応じない場合、国軍は2008年のミャンマー連邦共和国憲法に従った行動を取る
遡れば1989年初頭、アウン・サン・スー・チー女史はエーヤワディ管区へ政治活動に赴く度に、国軍から「安全の保障はできない」と言われていた。それ以来、彼女は万が一の際に国民民主連盟(NLD)の幹部と相談し、今後のことを書面で残していた。
その内容は父(アウン・サン将軍)と元インド大使の母(Daw khin kyi)が暮らしていたヤンゴンの住まいを博物館として国に寄付すること。そして、今回も活発化する軍隊の動きからクーデターを予見し、NLD幹部に下記の"国民への訴え"を託していた。
"NLD党首・アウン・サン・スー・チーから国民への訴え"
NLDは2008年の憲法を認めないという姿勢ではありましたが、議会政治においては憲法に従い、順守してきました。
憲法の改正については常に検討する必要があります。
1990年総選挙、2012年補欠選挙、2015年総選挙、そして2020年総選挙は規定に従って行いました。
この書面を皆さんが読んでいるならば、国軍は自らが制定した憲法を破棄し、議会と政府が解体したことを意味します。
それは現在の国民が直面している感染症予防対策を無視した行為であり、軍部の復権にほかなりません。国軍によるクーデターを国民全員で拒否し、反対運動を行ってください。
国民がすべて(かけがいのない国民)です。
アウン・サン・スー・チー
(署名はNLD幹部のウィン・ティン氏によるもの)
(続く)
Bandee
1965年、ヤンゴン市生まれ。88年、ヤンゴン大学在学中に8888民主化運動に参加。91年に日本に留学し、語学を学ぶ。2004年にミャンマーに帰国後、ボランティアの日本語講師となる。現在は主に人材派遣の育成プログラムを作成し、教育事業を行っている
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・第1回「クーデター発生から2日目の思い」