親日ミャンマー人が現地で経験した2度目のクーデター

第12回「上有政策下有対策」
(本稿は2021年2月執筆です)

 本日2月13日はアウン・サン将軍の誕生日。昨日と同じく、国軍への抗議デモに参加してきた。多くの市民もこうした活動に慣れてきたようで、プラカードの統一感も出てきて、皆のゴールも明確になってきた。
 一方、軍評議会は機動隊を使い、市民の押さえ込みにかかっている。すでに地方では機動隊とデモ隊の衝突も起きているという。また、昨日の恩赦で釈放された囚人たちが、民家に侵入したといった情報も流れてきて、そうした様子はFBにもアップされている。どうやら彼らは薬物を与えられている模様で、市民によって拘束された囚人らは意識が朦朧としていたとのこと。なかには警察から金銭を受け取り、派遣されている人間もいた。
 信じ難いことだが、これらはすべて8888年のときと同じ手法。すでに警察はCDMに参加する公務員を令状なしに連行している。つまり警察が法を率先して破るという無法地帯であり、市民は自分たちで近隣を守らなければならない。今はシフト制で夜間勤務をし、放火といった事態に備えている。

 本日の軍評議会の報道によれば、反政運動家リーダ―7名に逮捕令状を出しているという。国軍はスーチー政権とNLD議員などの拘束に追われており、ヤンゴンとマンダレーのデモ隊を後回しにするのだろうか?
 Facebookのおかげで、8888年のリーダー達から全国の市民に対して指示が伝わった。その内容は「いかに血を流さず、効率のいい戦いをするか」といったこと。G-Z世代も理解力があり、機動隊を撹乱させるような行動を取ることができる。
 CDMで停止している銀行に対して、軍評議会は営業するように促したが、そうしたアクションは逆効果になるに違いない。市民は銀行がオープンすれば、金を引き出すだけで、決して入金はしないだろう。デモ隊のリーダーたちは電気料金、水道料金、税金など軍評議会の資金源となる金を絶つようにと呼びかけている。

 中国には「上有政策下有対策」という諺があり、それが意味するのは「国に政策が​あれば、国の下にいる国民にはその政策に対応する策がある」ということ。ミャンマー人の生活にもそうした教訓が刻まれている。
 軍評議会を打倒するには、時間がかかるだろうが、今回立ち上がらなければ再び30年は暗黒の時代となる。国際圧力と国内のデモ活動に対して、ミン・アウン・フライン国軍最高司令官は対策を講じることはできないはず。さらに軍部内のクーデターが起こる可能性がある。

 いくら押さえつけようとも市民の抵抗が止むことはない。仮にできたとしても維持することは不可能だ。不正義の時代は終わり、正義の時代に突入する。

(続く)

Bandee
1965年、ヤンゴン市生まれ。88年、ヤンゴン大学在学中に8888民主化運動に参加。91年に日本に留学し、語学を学ぶ。2004年にミャンマーに帰国後、ボランティアの日本語講師となる。現在は主に人材派遣の育成プログラムを作成し、教育事業を行っている