【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

歯科医師 松本敏秀 氏(P.2)

大きすぎる現地の歯ブラシ
日本製品を22万本寄付

永杉 そのような経緯があったのですね。その後、どのように活動をスタートさせたのでしょうか。

松本 まず、ミャンマー人歯科医師と交流を持ち、現地の状況を知ることから始めました。ジャパンハートが運営している養育施設「ドリームトレイン」をはじめ、各地の養護施設、孤児院、学校などで巡回診療や予防指導なども行ってきました。また、現地の歯科医師を対象にした研修会の開催、治療器材の支援なども活動の一つです。
 そして、もう一つ重要なのは歯ブラシの提供です。私は活動のスローガンに「歯ブラシ1本からの健康作り」を掲げており、予防の大切さを強く訴えています。しかし、ミャンマーの歯ブラシは品質が良くないだけでなく、子どもの口には大きすぎるものしか販売されていません。そのため、子ども向けの歯ブラシを現地に送る活動もしており、本数は累計で22万本を超えました。

永杉 松本さんが活動を始められた2011年といえば、ミャンマーが民主化に踏み出した年でもあります。民主化はボランティアをする上でプラスに働いたのではないでしょうか。

松本 もちろん軍事政権下に比べれば地方にも行きやすいですから、プラスに働いた部分は大きいでしょう。一方で困ったことも起きました。私が活動を始めた当初、子どもの虫歯の割合は決して多くなかったのですが、民主化が進み外国産の甘いお菓子や炭酸飲料などが入ってきたことで、虫歯が爆発的に増加したのです。これはデータにもはっきりと出ています。

永杉 民主化はミャンマーを大きく発展させましたが、そういった意外な弊害も出るものなのですね。松本さんはその後約10年にわたりミャンマー各地で活動を続けましたが、2020年のコロナ禍、そして2021年のクーデターという大きな出来事がミャンマーを襲います。とりわけクーデター以後、活動は大きく制限されたと思います。

松本 私は軍に反対する立場を明確にしていますから、今のミャンマーに渡っても監視対象となり、満足な活動は難しいと考えています。ですので、近年は私が主宰する「福岡・ミャンマー友だちの会」における活動に力を入れ、国軍に抗議する市民を支援する写真展を開いたり、福岡近郊在住のミャンマー人と地域住民との交流会を行ったりする活動を増やしています。

▲九州大学・ヤンゴン歯科大学口腔外科唇裂・口蓋裂治療チームと小児歯科との連携支援

ミャンマーの国内避難民は260万人以上に