【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

歯科医師 松本敏秀 氏(P.3)

国境の町に増える避難民
その数は現地住民の3倍

永杉 ミャンマー入国は難しくなりましたが、2023年9月にタイのメーソートに入られて避難民への支援活動を行ったと聞いています。私も一昨年メーソートを訪れましたが、松本さんは現地をご覧になりどのように感じましたか。

松本 まず、ミャンマー人の多さに驚きました。メーソートに住むタイ人の人口はおよそ10万人と言われているのですが、現在はその3倍以上のミャンマー人がメーソートに身を寄せています。
 メーソートでは、逮捕を逃れたNLDの政治家、CDM(市民不服従運動)に参加したために軍や警察に追われている元公務員、国軍の攻撃により家や田畑を焼かれた市民などに直接会って、話を伺うことができました。他にも普段はミャンマー領内のジャングルで国軍と戦っていて、用件のためタイに一時入国し、またジャングルに戻っていく人などにも会いました。それぞれの話を聞くたびに、胸がひどく痛みました。

永杉 子どもたちの姿も多く見かけましたね。

松本 1988年の軍事クーデター以降、メーソートには常に一定数の避難民がいました。そのため、避難児童を対象にした移民学校があるのですが、近年その数は増加の一途を辿り、公式には65校、実際にはそれ以上の数があるとも言われています。今回はそのうち3校を訪問し、保健衛生・予防歯科指導をしてきましたが、歯の磨き方を知らない子も多く、継続した支援が必要であると痛感しました。

永杉 メーソートを始めとする国境の町での難民支援を、今後どのように行っていきたいと考えていますか。

松本 まず重要なことは、タイ側の理解を得ることです。現状、多くの難民がタイに流入していることで新たな軋轢が生まれていることも事実です。先程お話しした移民学校も、タイ側は「School」ではなく「Learning Center」と呼称しており、ミャンマー難民の扱いに苦慮していることがうかがえます。

永杉 タイ政府によるミャンマー難民の強制送還が行われていることも報じられています。

松本 支援活動は地元の理解がなければ成り立ちません。政府もそうですし、メーソートのタイ人住民、歯科医などにも活動の意義を説明し、協力してもらう必要があります。まずは現地の状況をもっと細かく勉強し、タイ人の考えを尊重しながらどのような支援が適切なのかを考えなければいけません。
 次は、この2月にメーソートを訪問する予定です。今のところ観光ビザでのタイ入国なので滞在は1ヵ月が限度ですが、今後も何らかの方法で継続して支援をしていきたいと思います。

永杉 2021年のクーデターからちょうど3年が経ちます。避難民は増え続けており、彼らの健康状態の悪化は懸念事項の一つです。口腔衛生の改善は感染症予防にも直結しますから、松本さんの支援活動は今後より重要になっていくと考えています。
 本日はお忙しい中ありがとうございました。そして、改めて受賞おめでとうございます。今後ますますのご活躍をお祈りしております。

▼タイ北西部メーソートのミャンマー避難民施設で保健衛生・予防歯科指導(2023年11月)

永杉 豊 [Nagasugi Yutaka]

MJIホールディングス代表取締役
NPO法人ミャンマー国際支援機構代表理事

学生時代に起業、その後ロサンゼルス、上海、ヤンゴンに移住し現地法人を設立。2013年6月より日本及びミャンマーで情報誌「MYANMAR JAPON」を発行、ミャンマーニュースサイト「MYANMAR JAPONオンライン」とともに両メディアの統括編集長を務める。ヤンゴンでは人材紹介事業を立ち上げ数多くのミャンマー人材を日系企業に紹介する。ヤンゴンロータリークラブに所属。著書に『ミャンマー危機 選択を迫られる日本』(扶桑社)。

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