【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

NPO法人 日本ミャンマー・カルチャーセンター 創設者 マへーマー 氏(P.2)

内定取り消しで人生が一変
日緬をつなぐNPOを設立

永杉 日本ではどのようなことを学んだのでしょうか。

マヘーマー まずは2年ほど日本語学校で学び、その後、中央大学商学部に入学しました。当時は日本で学んだ後、ミャンマーで起業したいと考えていたのです。20年ほど前のミャンマーには、今のようにコンビニはなく、スーパーすらありませんでした。そこで、日本の近代化されたコンビニのシステムをミャンマーに持ち込みたいと考えていたのです。
 それでもまずは企業で働こうと考え、就職活動で某IT企業から内定をもらいました。しかしその企業が業績不振で、内定取り消しになってしまったのです。それが2001年のことです。そこで就活を再開して、2002年に語学学校でミャンマー語講師兼事務員として働くことになり、ここで語学教室の運営のノウハウを身につけました。

永杉 2002年といえば、まさにITバブル崩壊の真っただ中ですね。そのようなきっかけがあって、ミャンマー語を教える活動を始められたのですか。その後しばらくしてJMCCを夫である落合さんと共に立ち上げられています。設立に至る経緯を教えてください。

マヘーマー ミャンマー語は大学時代から少し教えていて、法人の設立についても知人がすでにNPOを通じた社会貢献をしていたのです。ただ、以前からその願望は漠然とあったのですが、どのようなNPOにするかまでは思い至っていませんでした。
 そのような折、夫の友人で「ミンガラードー」という伝統舞踊団の団長を務める在日ミャンマー人の家に遊びに行ったのです。そこはミャンマー人がたくさん住んでいる高田馬場のアパートで、団長さんと同居していたミャンマー人が銀行や電力会社からの通知書を手に「この手紙に何が書いてあるのかを教えてくれ」と口々に質問してきたのです。中には、未払い通知書なども紛れていて、日本で暮らすミャンマー人のサポートを誰かがしなければならないと痛感しました。
 そこで、ミャンマー人には日本語や日本での暮らし方を教え、日本人にはミャンマー語やミャンマーの文化を伝えるNPO法人を立ち上げることを夫と共に決心しました。私は日本語とミャンマー語双方を教えることができ、日本の生活ルールも教えることができます。また、「ミンガラードー」など、さまざまな在日ミャンマー人の協力で、伝統舞踊や竪琴など、文化を教える講師を手配することも可能だと考えたのです。

永杉 近年再びミャンマー人の技能実習生が増加しています。しかし、ほとんど日本語が話せない実習生も多く、生活をする上で支障が出るようなケースがあると聞いています。
マヘーマー 仮にミャンマーでN1(日本語能力試験1級)を取得していたとしても、日本に来てコミュニケーション不全に陥ることがあります。単語や文法を理解するだけではなく、日本人の考え方も含めて理解しないと意思の疎通は難しいのです。私達はそうした文化的背景も含めたコミュニケーションができるようなレクチャーを心がけています。

▲JMCC恒例のミャンマー文化紹介ベント「まるごとビルマ体験パック」は、朝スンヂュエを行って無事を祈る
現地での支援活動も実施
芸術家へのサポートにも注力

永杉 2021年2月のクーデターから、まもなく2年半になろうとしています。いまだミャンマー国民の多くが苦しむ中、JMCCはどのような支援活動を行っているのでしょうか。

マヘーマー ミャンマー国内にいるミャンマー人は、肉体的にも精神的にも逃げ場がなく苦しんでいます。
 昨年8月、クーデター後はじめてミャンマーに入国したのですが、会う人会う人、堰を切ったように経験したできごとを私達に伝えようとしてきました。そして、一通り話し終えると、どこか安心したような表情を浮かべていたのが印象的です。彼らが吐き出す話に深く耳を傾けることは、精神的なケアにつながるのだと感じました。現地で直接話を聞くことはもちろん、オンラインを通じて思いを聞く場を、今後もしっかりと作っていきたいと思います。
 もちろん、形のある支援活動も実施しています。現地での生活困窮者支援はこれまでに6回ほど、おもに食料品の提供を行いました。
 また、当法人と関係が深い、伝統音楽・舞踊の担い手への支援にも力を入れています。彼らはコロナとクーデターのダブルショックで公演機会がなくなり、経済的に困窮しています。現在は、彼らを支援するためのチャリティー・オンラインサロンを開催しています。例えば、6月に20回を迎えた「まるごとビルマ体験パック」というオンラインイベントがあったのですが、そこでは、ミャンマーと回線をつなぎ、現地のミャンマー人からミャンマー語、竪琴演奏、伝統舞踊、ミャンマー料理などを教わる体験ができます。芸術家の方々に、こうしたイベントに講師として出演してもらうことで、彼らの生活支援につなげたいと考えています。

ミャンマーの国内避難民は180万人以上に