異国の地からミャンマー事業を継続 Work From Japan

政変以降、前進するiSGMの働き方改革 深化するリモートワーク昨年10月に本誌リモートワーク特集で、最先端の働き方を解説してもらったiSGM・京MD。あれから半年以上が過ぎ、リモートワークには変化が起きたのだろうか? 京MDに改めて話を聞いた。

ICT Star Group Myanmar(iSGM)
Managing Director
京 淳一 Kyo Junichi

政変以降は完全リモートに
適材適所でアプリを使い分け

──過去に御社のリモートワーク特集を掲載したのが、2020年の10月号でした。その時から変化はありましたか
 当時はリモートワークとオフィスワークが混在した形で業務していましたが、今年2月以降は完全にリモートワークとなり、その点が大きな違いです。

──完全リモートワークの違いとはどういったことでしょうか
 例えば、業務管理システムのiHRMSは、当初はヤンゴン市内に住んでいるスタッフの管理という設定でしたが、政変以降は地方の実家に帰るスタッフが急増し、そもそも「どこにいるのか?」というのが重要になりました。また、地方であれば、ネット環境も未整備なので、まずはそうした環境を整えてあげることが前提となりましたね。

──具体的にどのようなことが変わりましたか
 これまではオフィスにいても、リモートでもチェックイン(出社)、チェックアウト(退社)を管理していたのですが、今やスタッフが何をやっているのか把握できないという問題が出てきました。自ずと働き方も変えることとなり、管理体制も変化が迫られ、アウトプット(結果)を重要視することになりました。それをチームごとにシェアし、リモートでも誰が何をやっているかを共有、課題があれば互いにフィードバックできるようなシステムを構築し、社員の働き方改革が進みました。

──主軸となっているアプリはどういうものでしょうか
 リモートワークにはクラウドサービスが向いていますが、一番使っているのはMicrosoft、Google、Amazon Web Servicesです。それらのコストや使いやすさ、セキュリティ面を比較し、適材適所で利用しています。我々の方でカスタマイズしたり、そうしたノウハウを生かし、顧客にも提案しています。

──業務時間内でも自分の業務が終わればチェックアウトしていいのでしょうか
 そこはミャンマーの労働基準法の問題もあり、仮に早く終わってもチェックアウトは通常業務時間にさせています。ただし、自分のタスクが終われば、家の仕事や勉強をしてもいい、とアナウンスはしています。

▲コロナ禍ではソーシャルディスタンスを保ちながら業務していた同社だが、政変後は完全リモートワークに
▲Zoomのミャンマー代理店ということもあって、かなり早い段階でオンラインMTGを取り入れていた




結果重視の評価で生産性向上
人材育成もオンラインで可能

──個人の評価がアウトプットベースとなり、生産性は変わりましたか
 部署にも寄りますが、基本的にはICT全般、ソフト開発、日本と連携するオフショア、BPO業務はリモートワークが向いており、効率は非常に上がっています。実績ベースでみても3割は向上しました。

──ミャンマー経済が厳しいなか、業績、人数の増減はありますか
 コロナ以前から弊社は約250名体制でしたが、それは今も変わっていません。いつまでこの体制を保てるのかという危惧はありますが、今年1年はこれでやると決めました。ただ、社員と話し合いながら減給も受け入れてもらっています。現在はミャンマー経済が止まっている状況ですので、並行して新たな収入源を増やすべく奔走中。日本からのオフショア、BPO、ソフト開発の案件拡大を図っており、難局を乗り越えよう努力している最中です。

──完全リモートワーク下での人材育成はどうでしょうか
 リモートワークの方が育成も効率よくできています。今まではオフィスで学校の授業のように先生が一方的に教えるスタイルでやっていましたが、教え方にもバラツキがあり、教わる側も受け身のため、主体的に取り組むことができません。今はPCベースとなったことで、まずは資料などを弊社が用意し、あとは「基礎的なことは自分たちで勉強しましょう」と主体的にさせることでずいぶんと改善されました。

──スタッフのレベルは上がりましたか
 コロナ、政変が起きたことで、スタッフたちが以前よりも「自分たちでやらなければならない」という意識に変わってきました。これまでは「ある程度終わればいい」といった人任せだった部分も「自らやらなければならない」という姿勢に変化したと思います。また、自分たちからアイデアが出てきたり、報連相が定着するようになりました。まだまだ課題はありますが、今後も働き方は変わっていくでしょう。
 リアルなコミュニケーションも大事なので100%リモートワークが最適とは言えませんが、ベストな働き方をスタッフとも相談し、今後も模索していきたいと考えています。

▲自社で独自に開発した業務管理システムiHRMS。
出社、退社などをアプリで報告し、一元管理している