異国の地からミャンマー事業を継続 Work From Japan

コロナ医療物資以外の通関業務がストップ 1ヵ月停止状態の物流
公休日の延長で港湾の混雑が深刻化、現場作業員も集まらない現状からほとんど稼働できていない物流。日本に帰国し、ミャンマー事業を続けている物流関係者に現状を教えてもらった。

二度目となる日本退避
スタッフの8割が罹患

 建設と同じく経済成長や日常生活にも欠かせないインフラといえば物流。現在、日本に退避している物流関係者のDさんはコロナの影響で昨年日本に帰国し、9月にヤンゴンに帰還。しかし、再びのコロナ感染拡大を受け、今年7月に再帰国。ワクチンをすでに2度接種し、再びヤンゴンに戻るタイミングを見計らっている。

 ミャンマーの物流の現状について、Dさんによると7月17日から続いている公休が8月31日まで延長となり、コロナ関連の緊急医療物資以外は通関がストップした。また、銀行も休業のため、船社への支払いができず、港湾の混雑は深刻化、これ以上長引けば物流の遅れが発生する可能性もあるという。「コンテナが5段積みの状態になっているはずです。実際9月初旬に積もうとしていた貨物は予定していた船社からブッキングを断られ、やむなく運賃が異なる他船社にお願いしました。7月以降はほぼ業務が停止状態なので、ほとんど進捗はありません」と嘆くDさん。

 政変以前は地方を含めて10件以上の業務を抱えていたというが、大型案件がストップし、建設現場はコロナのクラスターが発生し停止。あらゆる現場の作業員が集まらず、再開の見込みは立っていない。また、Dさんの社内でもコロナ感染者が急増し、8割方のスタッフが罹患、Dさん自身も本業以上にスタッフのケアに時間を割いていた。「日本から1日3回ほどスタッフの健康チェックをしていました。それがここ1か月のミャンマーとのやりとりです」。

 現在同社の日本人スタッフはDさんしかいない状況だが、公休が終わっても現状業務に大きな支障はないと話す。その理由には港湾の現場作業者がすぐに戻ってくることは厳しく、前述した港の混雑状況が解消するまでに1、2か月かかり、荷動きが活発になることはないからだ。「コロナの感染は減少傾向ですが、急になくなるのではなく、緩やかに下がっていくはず。港湾の作業員も簡単には集まらず、それは税関やトラック運転手も同じ。仮に稼働していいとなってもいきなりは動かせないでしょう。また、コンテナも早く出したいものほど山積みされた下にあり、トラックやトレーラーを待機させても物理的に出せないわけです」。

 Dさんの会社は5月に一部のレイオフを行い、現在は最小人数で事業を運営しているが、前述した通り、あまり業務はない。Dさんの仕事量も激減し、ミャンマーでの売り上げ見込みが立てられない焦燥感を感じながらも具体的な対策も取れないというもどかしさもあり、手が空いた時間で他国の業務サポートも考えているという。「幸いなことにミャンマー近隣国での業務が忙しいため、そちらのサポートも視野に入れています」。ミャンマーからの撤退については、長年積み上げてきた実績や顧客との信頼関係もあり、現状まったく考えてはいない。

 当初、Dさんは秋のミャンマー戻りを想定していたが、大口の顧客が戻る気配がないことから現状は先が見えない状況が続いている。仮にDさんがミャンマーに戻れば、現地のコストが跳ね上がり、収支の観点からも現実的ではないという。「このコロナ拡大でミャンマー戻りが不透明になってしまいました。あるゼネコン関係者は来年に戻るとも言っていますし、コロナの拡大によって、ミャンマーに戻れるのはだいぶ先になりそうです」。

▲1ヵ月以上の公休が続き、コロナ関連以外の物資が停止した物流。9月からは再開するとみられている
▲コンテナが山積み状態のヤンゴン港。出したいものほど出せないという悪循環の状況となっている




すでに罹患、回復していた男性の体験談
成田でコロナ陽性が発覚
ヤンゴン発のフライトから1人のコロナ陽性者が発見。男性は過去にコロナに罹患し体調も戻っていたが、成田の検査は予想と反したものだった。
成田到着から隔離が終わるまでの体験談をお届けする。

 7月初旬にコロナに罹患し、回復して体調は万全だったのですが……。日本行き前のPCR検査はヤンゴンのクリニックで受け、当然陰性。問題なく飛行機に乗り、成田に着くと到着ロビーに用意されたパイプ椅子で書類提出を待ちます。1時間ほど経ち、自分の番になると諸々の書類を渡し、PCR検査用の唾液を提出。何もなければそのままイミグレに移動するのですが、私の場合は職員から「唾液検査で不備があり、陽性の可能性もある」と言われました。その後、さらに1時間ほど待ち、パーテーションに区切られたスペースに移動、医師から陽性と告げられました。イミグレの手続きは職員がやってくれて、荷物も持ってきてもらいました。専用のバスに乗り、空港内の滑走路から出て直接ホテルまで向かいました。

 最短8日間の隔離が決まり、ホテルは軽症者向きの施設のようでした。チェックイン前に生活に関する動画を見て、部屋のカギ、パルスオキシメーター、体温計を受け取りました。毎日2回の体温、酸素濃度の数値をQRコードで指定されたウェブサイトに入力していました。食事は3食あり、内容も充実していたのがうれしかったです。8月13日、14日の2日連続でPCR検査を行い、両日とも陰性だったので16日にチェックアウト。その後が不思議なのですが、成田空港まで送ってもらい、「自分で帰ってください」と言われました。「電車に乗っていいのですか?」と聞くと、「問題ない」という返答。通常だと6日間のホテル隔離後、自分で手配した車などで帰り、その後8日間は自宅やホテルで隔離となりますが、私の場合はその後のアプリの報告なども免除されることとなりました。

 成田でのワクチン接種のスケジュールは大幅にずれ込みましたので、改めて成田に行って接種してきます。

▲男性は「いろいろと政府への批判も多いですが、空港職員、隔離先スタッフの方には非常によくしてもらったと感じています」と振り返った