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企業はどうコロナと向き合うべきか Myanmar New Normal

 
新型コロナウイルスの影響②〜縫製業

8月、9月危機の到来

従業員4000人というマンモス工場を運営しているハニーズ。労働集約型事業において、コロナの恐怖とは一体どういったものなのか?

──稼働に影響はありましたか
 4月は水かけ祭りや政府の工場のコロナ対応に関する立ち入り検査もあり、営業日の半分以上は操業できませんでした。また、従業員の確保にも影響はありましたが、現在は平時に戻っています。
 
──従業員の増減については
 コロナ発生時、弊社の従業員は3800人ほどで、そのうちの2000人以上が地方出身者。その多くの従業員が水かけ祭りのときに帰省したものの、村や町がロックダウンされていたり、ヤンゴンに戻るための遠距離・高速バスがストップしてしまい、帰りたくても帰れない状態になりました。従業員向けのFacebookに「5月20日までに戻れば、給料もポジションも保証します」と通知しました。5月末には、全体の7~8割が回復し、現状はアルバイトも入れて約4000人が従事しています。
 
──原材料は安定して入ってきましたか
 2月は中国側がロックダウンしていましたが、工場がストップするということはなかったです。というのも、中国の春節(旧正月)では長期的な休みに入るため、それ以前からある程度多めのオーダーをしていたことが奏功しました。
 
──4000人ではソーシャルディスタンスも大変ですね
 5、6月はプラスチックの仕切りを作って作業を行っていました。現在でも必要な部署ではプラスチックの仕切りは継続しており、全員マスクを着用しています。また、食事も一人で行えるように食堂にも仕切りを設置。通勤用バスに乗るときも、全従業員にフェイスシールドとマスクの着用を義務付けました。
 
──従業員に1人でも感染者がいれば、操業は停止でしたか
 その可能性はありました。一番怖かったのが、水かけ祭りの後に戻ってきた従業員たちです。地方では、他国から帰ってきたミャンマー人とも接する機会はあるでしょうし、正直10人や20人は感染者が出ると思っていたんです。ただ、ミンガラドンの工業団地内では、約4万人の従業員が働いているのですが、どこの工場からも感染者は一人も出ていないんですよ。
 
──縫製業自体は順調なのですね
 そうとも言い切れません。縫製業内で「8月、9月危機」と言われているのが、欧州のオーダー減少による経営難。弊社は日本からのオーダーのため問題はないのですが、欧州向けの生産をしている工場は非常に厳しい状況と聞いています。今も弊社には、毎日4、50人の従業員が面接に来ており、そうした人たちも欧州向け工場の出身者が多く、人材の流動が激しくなっている印象があります。
 

HONEYS GARMENT INDUSTRY
Managing Director
井口 猛[Iguchi Takeshi]

再燃するチャイナリスク
ミャンマーに商機が訪れる

 ポジティブなニュースはそれだけではない。今回のAfterコロナでシフトチェンジが起こるとされるのが、世界的なサプライチェーンの多元化。今回、中国に原材料を依存していた工場では、4月~5月に輸入が止まってしまい、稼働できなかったといったケースも報告されている。また、ウイルスの発生源も元をたどれば中国の武漢とされ、そうした背景から再びクローズアップされたのが“チャイナリスク”。一方、ミャンマーでは早くから感染者のトレースを徹底し抑え込みに成功、治安の悪化といった問題も起きず、平時を維持した。そして、国家間の協調関係では、先のみえない米中貿易摩擦があり、中国以外の国からの調達が進むとされ、そこでミャンマーという選択肢が挙がる可能性も高い。事実、経済産業省が推進する海外サプライチェーンの強靭化の支援事業では、コロナ禍で需給が逼迫している「医療用ゴム手袋」に対する支援が決定している。ミャンマーにおけるこうした支援対象企業の拡大を期待したい。

 日系企業のメインでもある縫製業では、感染者が拡大しているバングラデシュからミャンマーに興味を持つ企業も出始め、先日、田中所長も繊維製品の染色・仕上げ加工を行う愛知県のツヤトモとミャンマー国営企業との合弁企業のオンライン調印式に参加した。そうした動きからも、Afterコロナではミャンマーへの進出がさらに進むのではないかと期待値は高い。

 また、世界的な潮流と同様にDXも避けることはできず、それはミャンマー政府の意向でもある。4月27日にミャンマー政府が発表した「Covid-19 経済救済計画(CERP)」があり、そこでは7の目標、10の戦略、36の行動計画が示され、金融刺激策、財源の確保、貿易・投資の促進といった目標のなかの一つに組み込まれたのが、イノベーションの促進。具体的な内容は、モバイル決済の利用、Eコマース・ソーシャルコマースの促進などで、つまりはリアル体験を介さないITサービスの拡充。スマホ所持率ほぼ100%のミャンマーだけに、マーケットはすでに醸成され、もっといえば、ログが残るために汚職の撤廃にも寄与するだろう。「コロナウイルス対策で革新的なアイデアを競うチャレンジ助成金」なども予定され、これまであまり進んでいなかったミャンマー政府のIT推進への本気度がうかがえる。日本でも定着していないオンライン決済がミャンマーで実現すれば、リープフロッグ現象が起きることとなる。(続く)