日本在住17年目のミャンマー人が見たクーデター

ミャンマーの武装勢力事情
(本稿は2021年3月執筆です)

ここに来てミャンマーの少数民族の武装組織の役割が出てきたのでまとめます。ミャンマーでは大きく8つの部族、全体で135に及ぶ民族が存在します。各民族の地域では軍の迫害から守るために武装組織が結成されています。

こちらは各武装組織が支配地域を表している図です。図の白い部分は主にビルマ族の多い地域で国軍が支配しています。ミャンマー国軍と武装組織は平和条約を締結して支配地域を決めて戦闘を避けています。

出典:https://bit.ly/2Ot2xG3

民族の武装勢力とは

写真はKNUがデモに参加する住民を援護している様子

・KNU
武装組織の中でもKNU(カレン族の元相武装組織)は戦後1948年から結成された組織です。主な目的はカレン州の独立とカレン族の治安維持が目的です。カレン州とタイとの国境を支配しています。一番伝統のある組織です。

・RCSS
RCSSはミャンマー最大のシャン州に拠点をおいて活動しています。シャン州の南を支配しています。以前は麻薬取引で有名なタイ、ラオス国境のゴールデン・トライアングルの地域を支配していた武装組織から分離しています。

・KIA
ミャンマーの最北のカチン州を拠点に活動するカチン独立軍という武装組織です。カチン族の独立を目指す為に設立されました。主に翡翠(ひすい)発掘を主な收入としています。また中国政府に忠義を尽くしているという噂もあるのでミャンマー国民から信頼されていません。

・AA
AAは2009年に設立されたばかりの武装組織です。ミャンマー西海岸に位置するラカイン州の北部拠点を構えて活動している武装組織です。アラカン族の独立を目指す為に設立されました。元はミャンマー国軍の軍事作戦で秘密裏に使っていた民間組織が独立したと言われています。裏では中国政府からの支援を受けているためミャンマー国民から信頼が薄いです。

それ以外にUWSAやTNLAなどの主に中国国境で活動する秘密裏に中国政府に忠誠を尽くしている武装組織もあります。武装組織同士で争いで戦闘に発展することもしばしばあります。

民族の武装勢力の歴史

国軍以外の武装組織がこれほどたくさん存在する国は世界でも珍しいです。武装組織のが乱立している理由はイギリス統治政策によるものです。イギリス軍は少数でありながらたくさんを植民地を支配するために原住民を分離させる策略を使いました。これはミャンマー以外にはネパール、スリランカ、インドなどにも使われた手法です。

ミャンマーでは一番多いビルマ族を抑えるために少数民族に武器を持たせて抑えさせました。第二次世界大戦前はミャンマー国軍の殆どは少数民族が占有していました。カチンやカレン族はイギリス軍によく訓練された優秀な兵士がたくさんいました。またミャンマー西北の山岳地帯のチン族は非常に頑丈で戦闘力が高い兵士を揃えています。少数民族はキリスト教徒が多いのはこれが理由です。

戦後アウンサン将軍(スー・チー氏の父)が暗殺されてミャンマーは暗黒の地に引きずり込まれました。ビルマ族は長らく支配されてきた少数民族へ復讐心から迫害を続けて来ました。元から武器の扱いに慣れている少数民族は種族を守るために組織を結成して内戦へと発展して行ったのでした。

クーデター後の情勢

2021年2月1日のクーデターで内閣は発足できずに議会を代表とする議会代表委員(CRPH)が誕生しました。CRPHは国民の支援の元、国際社会で認められる正式な政府の発足を急いでいます。CRPHはミャンマー国軍から国民を守るために新たな防衛軍を設立する必要があります。

CRPHは少数民族の権利を守る新たな憲法を制定し、少数民族の武装組織を防衛軍として取り込もうとしています。つい一昨日に憲法のドラフト版が完成しました。少数民族の権利は保障され軍は政府に支配される構成になったので国民は希望に満ちています。一番伝統のあるKNUは昨日、国軍の一掃すると宣言しました。今日からKNUとミャンマー国軍で戦闘がおきているという話しも聞きました。

ササ医師


少数民族の武装組織と交渉しているのはササ医師です。彼は山岳地帯が多いチン族の出身で英語も堪能な優秀な方です(逆にミャンマー語は下手です)。ササ医師の伝説は別の記事にまとめます。

写真はササ医師と少数民族武装組織とのミーティングの様子

ササ医師はCRPHからミャンマー代表の国連特別大使として任命されました。ササ医師は国連安保理などに出席してミャンマー国軍を圧力かけるように呼びかけています。またICCという国際刑事裁判所でミャンマー国軍最高司令官のMALを国民の虐殺の罪で訴えるために準備を進めています。

ササ医師の働きによってミャンマー国軍は相当に圧迫されています。ASEAN各国とも交渉してさらに国軍を追い詰めようとしています。国軍はササ医師の家族を血みどろになって探していますがチン州の武装組織に保護されて安全な場所にいます。ササ医師は日々の活動をSNSで発信することで国民は元気づけられています。彼は今やミャンマーの英雄です。いずれかはミャンマーの大統領になると信じています。

(続く)

テウインアウン
日本在住17年目のWebエンジニア
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