【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

チェリスト・指揮者 山本祐ノ介 氏(P.3)

永杉 最後にコンサートが開催されたのは2020年2月。その直後にコロナウィルスが襲い、さらに2021年にはクーデターが勃発し、活動の中断を余儀なくされました。現在、MNSOはどうなっているのでしょうか。

山本 MRTV所有のオーケストラなので、存続はできているそうです。ただ、あの頃のようにコンサートを開催できる状況ではなくなりました。楽員とは今もSNSでつながっていますが、歌番組のバックで演奏するなどして細々と活動をしているようです。

▲新型コロナの蔓延直前に行われたNovotel Yangon Maxでのコンサート(2020年2月)
ASEANでコンサートを開催しミャンマー児童を招待したい

永杉 コロナとクーデターは政治と経済だけでなく、ミャンマーの文化にも大きな打撃を与えました。発表する場がなくなり、別の職業に就かざるを得なくなった芸術家も多いと聞いています。
そのようなミャンマーと今後どのように関わっていきたいのか、ビジョンを聞かせてください。

山本 現在、MNSOとのワークショップに対しては経済的支援が得られず、活動することが難しいです。そこで、これから力を入れたいのは、日本とASEAN諸国のジュニアオーケストラを結びつける活動です。
私も近年知ったことなのですが、シンガポールやタイ、マレーシアなどのジュニアオーケストラは、相互交流が非常に盛んに行われているそうです。例えば、シンガポールのオーケストラがタイを訪れる場合、旅費はすべて訪問する側のシンガポールが負担。一方、受け入れるタイ側は会場の手配とプロモーションを担当するという仕組みで、お互いの国でコンサートを開くという交流が行われています。
ところが、日本だけがこうした交流に参加できていない。日本のジュニアオーケストラの公式サイトは日本語しか書かれていないことが多く、海外の人々からは誘いたくても誘えないという状況だったのです。これは、日本の子どもたちにとっても損失ですから、今後はこうした交流事業を進めていきたいと考えています。私は、ここにゲストとしてミャンマーの子どもたちを招待したいと思います。MNSOの楽員の子どもには楽器をやっている子も多いので、手始めに彼らを招待できれば良いですね。

永杉 素晴らしいビジョンです。2021年のクーデター以降、ミャンマーでは埋めがたい分断が続いています。軍による支配が終わった後、ミャンマーの各民族は再び結束をしなければならないと考えますが、私は音楽にその力があるのではないかと考えます。カレン族のキリスト教徒が歌い、その横でビルマ族が民族楽器を奏でるような日が再び訪れることを強く願います。本日はお忙しい中ありがとうございました。

永杉 豊 [Nagasugi Yutaka]

MJIホールディングス代表取締役
NPO法人ミャンマー国際支援機構代表理事

学生時代に起業、その後ロサンゼルス、上海、ヤンゴンに移住し現地法人を設立。2013年6月より日本及びミャンマーで情報誌「MYANMAR JAPON」を発行、ミャンマーニュースサイト「MYANMAR JAPONオンライン」とともに両メディアの統括編集長を務める。ヤンゴンでは人材紹介事業を立ち上げ数多くのミャンマー人材を日系企業に紹介する。ヤンゴンロータリークラブに所属。著書に『ミャンマー危機 選択を迫られる日本』(扶桑社)。

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