【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

民主活動家 ウィン・チョウ マティダ夫妻(P.3)

日本で同胞と民主化運動を開始
2020年の選挙で感じた高揚

ウィン・チョウ 最初は栃木に行って住み込みで働き、お金を貯めて東京に出てきました。90年頃の東京には、ミャンマー人はほとんどいませんでしたが、次第に国を脱出した同胞が集まってくるようになったので、団結して民主化運動をすることになりました。妻とはそこで再会しました。訪日から約2年後のことです。

永杉 そもそも8888民主化運動当時、お二人に面識はあったのですか。

マティダ 友達の友達というくらいの関係性でした。なので、日本で再会したとき、私は思い出せなくて(笑)。でも、再会して3日後にプロポーズされて、1週間で結婚しました。

永杉 その後、お二人は30年にわたって日本に住み、国外から祖国の民主化運動を続けてきました。その間に起こった、テイン・セイン政権による民政移管、NLD政権樹立、そしてクーデターと至る一連のできごとについての思いを聞かせてください。

ウィン・チョウ 2008年の憲法がありましたから、そもそも民主化には懐疑的でした。議員の一部は軍人に割り当てられ、憲法改正も困難で、しかもアウン・サン・スー・チーさんは大統領になれない仕組みになっていましたから。
 しかし、NLDメンバーは本当に頑張ったと思います。私達の友人だった弁護士のコー・ニーもその一人です。彼はスー・チーさんのために国家顧問のポストを作るアイデアを出した人です。07年にヤンゴン国際空港で暗殺されるという最悪の結末を迎えてしまいましたが、彼らの奮闘により民主化は着実に進んでいたと思います。
 2020年の選挙は本当に感動しました。私達にとって人生始めての投票だったので「この一票で国を変えられる」と強い希望を抱いたことを思い出します。しかし、そんな思いは長く続かずクーデターですべて壊されてしまいました。

永杉 今回のクーデターを受けて、ミャンマーという国が今後どのように歩んでいくとお考えですか。そして、日本からはどのような支援をするべきでしょうか。

ウィン・チョウ すぐに状況が劇的に改善するとは思っていません。本当の意味で安定した国を作るためには、半世紀以上かかったとしても不思議ではありません。
 しかし、希望はあります。今回のクーデターを機に、若者たちが政治のこと、国のこと、軍政の問題点、少数民族問題などに強い関心を抱くようになりました。クーデターという残念なきっかけではありますが、若者たちが自国の問題点を強く認識できたことは、きっと良い未来につながると思っています。

マティダ 私達は2015年の選挙前、ミャンマーの各地域にNLDの青年部を作るお手伝いをしました。彼らとはSNSを通じてつながりを持ち、結成当初は300名程度のコミュニティが、今では3,000名以上に成長しています。そこでは、政治問題だけでなく、社会をよりよくするための議論も行われており、私達も日本のゴミ拾いの習慣を伝えて、携帯灰皿を送る活動なども行いました。こうした若者たちへの小さな働きかけが、国を良くしていくと信じています。

ウィン・チョウ 悲惨な状況は続いていますが、それでも軍支配が終わった後のことも考えて動く必要があるのです。戦闘により手足を失った人々への支援、破壊された学校の再建など、未来につながる活動をひとつずつ進めていくことが大切だと考えています。

永杉 私も在日ミャンマー人や日本人有志とともにNPO法人を立ち上げ、人道支援が必要な地域に寄付金を送っています。こうした急を要する支援活動はもちろん意味があると思いますが、若者たちの未来への支援も必要という考えには強く同意します。
 実は、ミャンマージャポンも10月から、ミャンマーの若者を日本企業に紹介する人材紹介事業をスタートさせました。緊急の人道支援はこれまで通り行いつつも、長期戦を見据えて若者たちの就労支援にも力を入れるフェーズだと考えております。本日はお二方ともにお忙しい中ありがとうございました。

▲ミャンマー困窮者支援のためには少額の募金でもありがたい

永杉 豊 [Nagasugi Yutaka]

MJIホールディングス代表取締役
NPO法人ミャンマー国際支援機構代表理事

学生時代に起業、その後ロサンゼルス、上海、ヤンゴンに移住し現地法人を設立。2013年6月より日本及びミャンマーで情報誌「MYANMAR JAPON」を発行、ミャンマーニュースサイト「MYANMAR JAPONオンライン」とともに両メディアの統括編集長を務める。ヤンゴンでは人材紹介事業を立ち上げ数多くのミャンマー人材を日系企業に紹介する。UMFCCI(ミャンマー商工会議所連盟)、ヤンゴンロータリークラブに所属。著書に『ミャンマー危機 選択を迫られる日本』(扶桑社)。

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