活動意図を総理に直談判 資金協力を取りつける
永杉 いくら「ゼロ・ファイター」とはいえ、農村開発を行うとなれば資金が必要になります。調達はどのようにして行うのでしょうか。
井本 昨年11月、首相官邸に岸田首相を訪ね「少数民族支援をタイ側で行いたい。時間差はあるかもしれないが、必ずミャンマー支援につながる」ということを説明させていただきました。その結果、外務省より本事業に対して「ODA連携無償資金協力」という枠で資金協力を得ることができました。
永杉 先ほども井本さんがおっしゃった通り、通常は政府系組織であるJICAが国軍の支配地域で支援活動を行い、民間団体は少数民族武装勢力の支配地域で支援活動をするという線引きが存在していました。
しかし、今回のプロジェクトは、名目上「タイにおけるプロジェクト」ですが、その実は国境を隔てたミャンマーの少数民族も利することを目的としたものです。この活動資金を日本政府が出すというのは、画期的なことではないでしょうか。
井本 そう思います。これまで、日本政府は軍に対する姿勢が批判されることが多くありました。ミャンマー人からは「二枚舌外交ではないか」などの言葉も聞かれることがあります。しかし今回、日本政府が資金提供という形を通じて、ミャンマーの少数民族に寄り添う姿勢を示せたことは素晴らしいことだと思います。
一方、ミャンマー人から見れば、「結局はタイでの活動ではないか」と思われてしまうかもしれません。しかし、「タイの少数民族も豊かにしながら、ミャンマーの少数民族を支援する」という理念は、近い将来きっと理解してもらえると信じています。
永杉 私自身はクロスボーダーで支援することが重要だと思いますが、軍の締め付けが厳しい今、正規の方法以外で支援を続けることは大きなリスクが伴います。ですから、本当の意味で息の長い支援を続けるためには、タイ側から支援を広げていくやり方はしかるべきだとも思います。我々もこうした取り組みを、多くのミャンマー人に広めていくお手伝いができればと考えます。本日はお忙しい中ありがとうございました。