【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

国際人権NGO ヒューマン・ライツ・ウォッチ アジア局プログラム・オフィサー 笠井哲平 氏

今回のテーマ 世界各地で人権問題の改善に取り組む国際NGO

笠井哲平 氏 [Teppei Kasai]

国際人権NGO ヒューマン・ライツ・ウォッチ アジア局プログラム・オフィサー
1991年生まれ。早稲田大学やカリフォルニア大学バークレー校などで国際関係論・ジャーナリズム論を学んだ後、グーグルジャパンに入社。2014年にロイター通信の英文記者に転身し、貧困、性暴力、ISIS関連など幅広いテーマの記事を執筆する。2018年に国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチに転職。国内の人権問題や日本政府の外交政策における人権的懸念などについて調査や政策提言を行っている。

人権問題に深く取り組むべくジャーナリストから転身

永杉 本日は、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(以下、HRW)の笠井哲平さんにお話をうかがいます。笠井さんは国内外のさまざまな人権問題と向き合っており、ミャンマー情勢に関する提言も数多く行っています。まずは、HRWという組織について教えてください。

笠井 HRWは、世界各地で起きている人権侵害を調査・公表し、人権尊重の実現に向けて各国の政府や企業などに対して提言を行う国際NGO団体です。拠点のニューヨークを始めとして世界各国にオフィスがあり、総勢500~600人が在籍しています。スタッフは弁護士や大学教授、元ジャーナリストなどが多く、それぞれの専門性を生かした活動をしています。
 東京オフィスは2009年に開設。現在はスタッフ10名と大学生のインターン数名で運営しており、私は東アジア局プログラム・オフィサーとして働いています。

永杉 元ジャーナリストも多く在籍する組織という話ですが、笠井さんも元ジャーナリストですね。HRWに加わるまでの経緯を教えてください。

笠井 早稲田大学やカルフォルニア大学バークレー校で、国際関係論やジャーナリスト論などを学んだ後、グーグルジャパンに入社しました。しかし、高校生の頃からジャーナリストになることが夢だったので、1年ほどでロイター通信に転職し記者になりました。ロイターでは、こどもの貧困、性暴力、東日本大震災や九州豪雨など、幅広いテーマで記事を書いてきました。HRWに転職したのは、ロイターで4年ほど働いた後の2018年のことです。

▲2016年、福島県にて(©花井亨)

永杉 憧れだったジャーナリストの道からHRWに転じた理由はどこにあるのでしょうか。

笠井 ロイターでは記者生活を通じて、普段は会えないような方々とじっくり話す機会を得て多くのことを学びました。しかし、会社の性質上どうしても時事ニュースを中心に追いかけなければなりません。すると、自分が本当に大切だと思うテーマ、つまり社会問題や人権問題を深く掘り下げられないことに歯痒さを感じていました。HRWならジャーナリストの経験を生かしつつ、こうした問題に腰を据えて取り組めると思い、転職を決意しました。

永杉 現在はどのような問題に取り組んでいるのでしょうか。

笠井 主に日本の女性刑務所における人権問題、日本政府の外交政策に対するモニタリングの2点に取り組んでいます。

永杉 ミャンマー問題は後者に含まれるわけですね。

笠井 はい。日本の外交政策が、ミャンマーの人権状況を悪化させていないかを監視しています。また、日本の政策により人権状況を改善できる余地があるにもかかわらず、その動きを取っていないという事案もあるので、こうした問題をまとめて政府や外務省に提言しています。また、プレスリリースや記事を使った国民への周知や問題提起も業務に含まれます。

▲九州豪雨被害者を取材(2017年、福岡県)

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