【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

Overseas Irrawaddy Association(OIA)代表 フォー・ティンジャン 氏

今回のテーマ
命がけでタイ国境の困窮者を支援するボランティア団体

フォー・ティンジャン 氏 [Phoe Thingyan]

Overseas Irrawaddy Association(OIA)代表
1978年バゴー生まれ。
1998年からタイのメーソートでミャンマー人移民労働者を支援する活動を始める。2005年にOverseas Irrawaddy Association(OIA)を結成、代表を務めたが、ミャンマーの民主化にともない2013年から2020年まで一時休止する。2021年のミャンマークーデター以降は再びOIAの代表を務める。難民の救済や権利の実現など、人権保護や人道支援に取り組んでいる。

労働者保護組織として発足
タイでミャンマー人を支援

永杉 タイ・ミャンマー国境地帯インタビュー第5回目となる今回は、タイに拠点を置くボランティア団体「OIA」の創設者であり、代表のフォー・ティンジャンさんにお話をうかがいます。OIAはクーデター後、タイのメーソートや国境地帯における避難民支援活動を行っている団体として存在感を強めています。まずは、OIAという組織の成り立ちについてお聞かせください。

フォー OIAは「Overseas Irrawaddy Association(海外イラワジ協会)」の略で、タイ北西部メーソートを拠点に我々ミャンマー人によって運営されている団体です。
 メーソートでは古くから、ミャンマー人の出稼ぎ労働者が多数働いていました。皆、ミャンマーの政情不安や経済危機により母国で生きていくことが難しくなったため密入国して働きに来た人たちばかりです。弱い立場の彼らはかつて、酷い労働環境の下で働くしかありませんでした。賃金が著しく低いことなどはざらで、未払いすらめずらしくなかったのです。
 そのような労働者を支援するために2005年に立ち上げた団体がOIAです。当初はメーソートで働いているミャンマー人出稼ぎ労働者から寄付金を募り、そのお金を基金として労働者たちのサポートを行っていました。例えば、解雇された場合の失業一時金の支給や、病気や怪我の際の医療費支援などです。他にも、不当な労働条件を是正させるため、工場側との交渉を受け持つこともありました。

永杉 必要に迫られて結成された労働組合、あるいは互助会というのが当初の形だったのですね。2011年にはミャンマーで民政移管が行われ、ミャンマー国内の状況も安定してきました。民政移管前後でOIAに変化はありましたか。

フォー 民政移管後すぐに、アウン・サン・スー・チーさんがメーソートを訪問されました。その時点ですでに膨大な数の出稼ぎ労働者がメーソートに住んでおり、彼ら全員をミャンマーに帰国させることは現実的ではありませんでした。そこでスー・チーさんは、「ミャンマーからの出稼ぎ労働者を正規の形で働けるようにして欲しい」という要望を出したのです。タイ政府はこれに応え、出稼ぎ労働者たちが一定の権利を有して働けるような制度づくりを行ってくれました。これにより、かつてのような不当な労働環境は激減したのです。
 そうなると、OIAもかつてのように労働者への給付金支給や、工場側との交渉などを行う必要がなくなります。そこで組織形態も変化させ、一部幹部のみを残したボランティア団体に形を変えることになりました。労働者へのサポート内容も変化し、葬儀の世話や教育施設・図書館の運営など、労働者やその家族の福祉、健康、教育などの質を高める活動にシフトしていったのです。

▲子どもたちと支援物資(タイのメーソートで)

3,000円のご支援で1か月飢えをしのぐことができます