【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

日本財団会長・ミャンマー国民和解担当日本政府代表 笹川陽平 氏(3/3)

「沈黙の外交」批判は承知
それでもミャンマーのために沈黙を守り抜く

永杉 人道支援の一方で、笹川さんはスー・チー氏だけでなくミン・アウン・フライン氏ともパイプを持ち、ミャンマー和平のために外交活動を続けておられます。この「パイプ」がときに批判を受けています。こうした意見に対しては「沈黙の外交」を堅持するとお話されていましたが、現在もその方針に変わりはありませんか?

笹川 まったく変わりません。今回の停戦交渉はアラカン軍と国軍の双方から要請があり、極秘で進めてきたのですが、アラカン軍が何らかの事情で「笹川の仲介」と発表したのです。
 いろいろなご批判があることは承知していますが、私としては沈黙を守って仕事をするだけです。日本語で言えば〝アヒルの水かき〟でしょうか。水面に黙って浮いているように見えますが、水の中では一生懸命足を動かしているのがアヒルです。今回の停戦ではアラカン軍が記者会見したことで私の活動も表に出ましたが、本来は沈黙しつつ働くというだけです。たくさんの人が絡むデリケートな問題ですからね。

永杉 アヒル、ですか(笑)。しかし、そのラカイン州では停戦後にマウンドーにある国軍系のBGF(国境警備隊)旧駐屯地に国軍兵士約200人が追加配備され、アラカン軍が警戒しているという情報もあります。

笹川 停戦について大筋はまとめてきましたが、詳細を詰めていく作業はこれからも続きます。〝アヒルの水かき〟です。ともかく停戦を機にラカイン州への陸路も水路も開きましたし、農民は安心して稲の刈り入れができるようになりました。

永杉 ミャンマーとの最も太いパイプを持ち、民間外交ができる人物と言っていい笹川さんですが、今後のミャンマー和平をどう進めていこうとお考えでしょうか。

笹川 ミャンマーは困難な歴史が非常に長い国で、さまざまな立場の方が関係しています。だから和平と言っても、こちらで解が出たと思っても、別の方向から見れば答えになっていなかったりします。高等数学を解くような話なのです。力で解決できる問題でもありません。私はもう84歳になります。人生最後の仕事だと思っています。一日も早くミャンマーが平和な国になるよう“アヒルの水かき“を続けて参ります。

永杉 本日はご多忙の折インタビューにご対応くださりありがとうございました。一日も早くミャンマーに平和が訪れることを祈念したいと思います。

永杉 豊 [Nagasugi Yutaka]

MJIホールディングス代表取締役
NPO法人ミャンマー国際支援機構代表理事

学生時代に起業、その後ロサンゼルス、上海、ヤンゴンに移住し現地法人を設立。2013年6月より日本及びミャンマーで情報誌「MYANMAR JAPON」を発行、ミャンマーニュースサイト「MYANMAR JAPONオンライン」とともに両メディアの統括編集長も務める。
(一社)日本ミャンマー友好協会副会長、(公社)日本ニュービジネス協議会連合会特別委員、UMFCCI(ミャンマー商工会議所連盟)、ヤンゴンロータリークラブに所属。近著に『ミャンマー危機 選択を迫られる日本』(扶桑社)。

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