【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

ドキュメンタリー映像作家 久保田 徹氏(3/3)

▲アジア国際青少年映画祭(AIYFF)受賞時(2021年6月)
▲2022年11月18日早朝、帰国直後の羽田空港にて(撮影: Ryu Ika)
突然の恩赦と「自由の国」への帰国
そして今後の活動予定は

永杉 10月5日と12日に、久保田さんが起訴された3つの罪について軍事法廷が開かれました。容疑は観光ビザで取材活動を行った出入国管理法違反、デモに参加した扇動罪、それにロヒンギャに関する映像を作りミャンマーのイメージを悪化させたという電子通信法違反でした。このうち扇動罪というのはどういう根拠だったのでしょうか。

久保田 僕が横断幕を持ってデモに参加したということです。写真も提出されました。しかし、これは逮捕後に警察署で横断幕を持たされて、撮影されたものでした。裁判に英語の通訳はつきましたが、明らかに国軍側の立場の人でした。英語もそれほど話せる様子ではありません。例えば軍人が1、2分ほど話しているのに、訳すのはひと言くらいです。弁護士の同席は認められませんでした。

永杉 判決は禁錮10年。

久保田 想像以上に重いものでした。しかし、まず判決が出された後に強制送還されるという話を他の外国人受刑者から聞いていたので、希望と絶望が半分半分ではありました。

永杉 そして実際、11月17日に釈放となりましたが、当日はどのような流れでしたか。

久保田 朝8時のことでした。本を読んでいたら看守がやってきて、すぐに出ろ、と。荷物をまとめる時間もなかったと思います。差し入れや服などはほかの受刑者に渡して、すぐに大講堂のような場所に連れていかれました。
 そこには著名なミャンマー人8人と、外国人が3人。僕の隣に座ったのはショーン・ターネル(アウンサンスーチー氏の経済顧問だったオーストラリア人経済学者)で、ビッキー・ボーマン(元駐ミャンマー英国大使)の姿もありました。

永杉 恩赦により釈放すると、軍は発表しています。

久保田 大勢の軍人がまるで来賓のように集まってきていて、ビデオカメラも回されて。ショーンが「まるで卒業式だね。馬鹿馬鹿しいよ」と言っていました。その後ミニバスに乗せられて、空港に直行です。そこで在ミャンマー日本国大使館の丸山大使が待ってくれていました。「ようやく会えましたね」と声をかけていただいて。飛行機に乗る間際には「羽田でも記者会見があるでしょうが、周りのことは気にせず好きなことを話してください」と言ってくださって、すごく安心したのです。“自由の国”に戻れるのだと。

永杉 翌18日に帰国されましたが、記者会見で訴えたかったことは?

久保田 ミャンマーの現状について知ってもらいたい、知ってもらうことで状況の改善につなげたいという事です。僕はミャンマーで不当に逮捕された1万6000人のうちの一人にすぎません。その陰で死刑となっている人がたくさんいます。そちらにも目を向けないと国軍の思うつぼです。

永杉 まったくその通りです。AAPP(ミャンマー政治犯支援協会)によれば、現在でも1万3000人以上が収監されていて、2500人以上が殺されています。その中で久保田さんは解放されました。最後になりますが、今後の活動についてのビジョンを教えてください。

久保田 僕は映像を作ることが仕事です。だから映像を見ることで、例えばSNSでシェアしたら募金につながるような、そんな仕組みができないかと考えています。もちろんスポンサーが必要なのですが、映像とミャンマー支援を結びつけるような活動をしたいですね。
 いままでは内密にしていましたが、逮捕前日までに撮影した動画が手元にあります。これらを公開していきたいとも思っています。

永杉 私は「ミャンマー国際支援機構」というNPO法人を、在日ミャンマー人や日本人有志、超党派の国会議員らとともに22年6月に立ち上げ、ミャンマーの困窮者や民主化の支援を行っています。ミャンマーに目を向けてくれるようアピールするためにも、久保田さんの映像と組み合わせて、うまくPRできればと思います。本日はありがとうございました。

永杉 豊 [Nagasugi Yutaka]

MJIホールディングス代表取締役
NPO法人ミャンマー国際支援機構代表理事

学生時代に起業、その後ロサンゼルス、上海、ヤンゴンに移住し現地法人を設立。2013年6月より日本及びミャンマーで情報誌「MYANMAR JAPON」を発行、ミャンマーニュースサイト「MYANMAR JAPONオンライン」とともに両メディアの統括編集長も務める。
(一社)日本ミャンマー友好協会副会長、(公社)日本ニュービジネス協議会連合会特別委員、UMFCCI(ミャンマー商工会議所連盟)、ヤンゴンロータリークラブに所属。近著に『ミャンマー危機 選択を迫られる日本』(扶桑社)。

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