【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

ドキュメンタリー映像作家 久保田 徹氏

今回のテーマ
国軍に逮捕・収監された映像作家の獄中3か月半

久保田 徹 氏 [Cynthia Maung]

ドキュメンタリー映像作家
1996年生まれ。
BBC、VICE、Aljazeera English、Yahoo!、NHK Worldなどでドキュメンタリー制作経験がある。2020年4月以降は日本でDocuMemeプロジェクトを開始。ディレクション・撮影・編集まで単独で手掛ける。2020年『東京リトルネロ』でギャラクシー賞、ATP奨励賞、貧困ジャーナリズム賞を受賞。

きっかけは学生時代から撮り始めた
在日ロヒンギャ難民の記録

永杉 11月17日にミャンマー国軍から解放されたばかりですが、その後まもなくの取材に応じてくださりありがとうございます。久保田さんは7月30日、ヤンゴンで国軍への抗議デモを撮影していたところ、治安当局に逮捕・拘束されました。まずはこれまでのミャンマーとのご縁を教えてください。

久保田 高校の時分に、ロヒンギャの映像を見たことがきっかけでしょうか。大学の試験ではそれを題材に小論文を書きました。そのため大学に進学してからは、日本に住んでいるロヒンギャ難民の方々と触れ合うようになったのです。

永杉 群馬県の館林市に、ロヒンギャの方々が270人ほど住んでいます。

久保田 はい。館林に住む彼らの姿を映像で撮り始めました。自分たちの境遇を聞いてくれることに皆さん喜んでくれたのですが、批判的な意見もあったのです。「どうして私たちがミャンマーを逃れて日本に来なくてはならなくなったのか。本当に辛い部分、苦しみをわかっていない」と。それで実際にミャンマーに行こうと決心しました。2015年の夏でした。

永杉 その後は、ロヒンギャが弾圧されているラカイン州に何度も足を運ばれている。

久保田 2016年5月にはIDP(国内避難民)キャンプに行きました。しかし保護という名目でロヒンギャを隔離している強制収容所のような場所でした。
『Light up Rohingya』〈ミャンマーラカイン州で
隔離される"ロヒンギャ族"の現実〉(2016)
https://youtu.be/3SWS8lXIAJE

永杉 2017年、ラカインでは国軍によるロヒンギャの虐殺が起きます。そして、2021年には国軍がクーデターによって政権を掌握。報道の自由も失われ、いまミャンマーは「ジャーナリストにとって世界で最も危険な国の一つ」とも呼ばれています。なぜ今回、抗議デモの取材をされたのでしょうか。

久保田 海外に逃れていくミャンマー人がたくさんいる中、それでも国に残って、困窮している人々への慈善活動をしている友人がいます。彼は、それが「自分にとっての民主化革命なのだ」と。そのような友人の姿を記録する必要があると感じたからです。ヤンゴンに着くと、奇妙な違和感を持ちました。あれだけ悲惨な事件が起きた後でも、表向きは人々が普通に暮らしているように見えたからです。兵士に暴力をふるわれ、持ち金を奪われたと訴える路上生活者の女性にも会いました。表向きの平和の裏では、国軍による暴力が影のように忍び寄っていることを感じたのです。次第に、デモを撮影する必要があるのではと考えるようになりました。ただ、デモ取材は危険な行為だとわかってはいました。デモに参加する人々と同じ目線に立つべきという感情に流され、判断が甘かったのだと思います。

▲逮捕直前は、デモ隊のはるか後方で撮影していた

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