異国の地からミャンマー事業を継続 Work From Japan

昨年のコロナ禍で退避し、現在も日本から業務 1年4ヵ月の完全リモートワーク
昨年のコロナで日本帰国したビジネスマンが、今もミャンマーに戻っていないというケースは少なくない。1年4ヵ月に及ぶリモートワークとは一体どうだったのか?日本にいたからこそ得られたメリットとは?

業務への圧倒的打撃は政変
管理業務は効率性が向上

 IT関連に勤めるCさんが帰国したのは、昨年の4月末。これまで一度もヤンゴンには戻っておらず、実に1年4か月の歳月が過ぎた。

 業務においてコロナの影響は若干受けていたものの甚大な影響はなかった。それまで提案していた大型案件の進捗や新規の問い合わせも少なからずあったからだ。しかし、それらがすべて止まったのが2月の政変以降。顧客からは「いったん待ってほしい」という声が相次ぎ、ほとんどの案件がペンディングとなり、一部キャンセルもあった。「政変の方がビジネスとしては何十倍もマイナス。今のコロナが収束しても顧客がこの状況で事業を再開するのかもわかりません」と吐露するCさん。

 新規提案はほぼなくなり、現在はメンテナンス業務が9割となっているが、政変後は経済制裁の影響で欧米系メーカーの機器やライセンス販売に最も苦労している。審査のための必要書類が増え、海外送金も容易ではなく、納期遅れが日常化した。「一部のサプライヤーはミャンマーへの販売を取りやめ、ライセンスの更新ができずに本当に困っています」。

 日本からの完全リモートワークとなったことで社内マネジメントではデメリットもメリットも経験した。一番のネックはコミュニケーションの問題。簡単なことならその場で説明すれば済むことが、リモートではなかなか伝わらないといったことが頻発。そのため定期的にzoomやTeamsを使い、顔を合わせてのコミュニケーションを図っている。「ケースバイケースで使い分けています。数字などの実数を伝えたい場合はメールがいいし、簡単なことならチャットを使っています」。メリットとしては完全リモートワークになった分、訪問営業や会食などの機会が減り、その分管理業務に集中できるようになったこと。「効率的に仕事ができるようになったのはよかった点。ただ、お客様とのコミュニケーションをいかに増やしていくかが現状の課題です」。

 また、これだけ長い間、日本にいたからこそミャンマーでは得られないメリットもあった。今まで顔を合わせたことがなかった、同じくコロナで帰国しているASEANの他拠点メンバーと実際に会い、新規ビジネスや顧客、課題などの情報交換を定期的に実施したという。「ASEANの課題はどこも似ているのでサービスの横展開やお客様の課題を共有しました。新規サービスの創出などの可能性も見えたので、そうした時間は貴重でした」。

▲日本の本社に出社し、メリットもあったというC さん。ヤンゴンにはなるべく早く戻りたいと考えている
▲工場案件も進んでいたが、政変によって多くがペンディングに。現在はメンテナンスが主な業務となっている




日本人がいない現状でどうビジネスをしていく?
ヤンゴンに残る事業者の本音

大ラ王(レストラン)
岸本店長

3年間で今が一番厳しい時期

 私がミャンマーに来てから3年以上経っていますが、過去と比較しても今が一番厳しいです。売り上げ比率は日本人が8割でしたが、今は6、7割。ただ、コロナを恐れてミャンマー人が外出しないですし、日本人もヤンゴンにいないので難しい状況。
 チャットの下落から食材の値段は上がっていますし、光熱費も同じ。物流も止まっているので仕入れにも時間がかかり、提供できないメニューもあります。ただ、メニューの値上げは考えていません。デリバリーもやっていますが、来店と比べると単価は下がります。オンライン決済も対応しているのですが、手数料も引かれるため、利益は減るわけです。
 しばらく飲食店は試される時期になると思います。ただ漫然とやっているお店は潰れてしまうでしょうし、一人で来ても幸せを感じてもらえる空間づくりにしていかないといけない。個人的には知名度も上がり、常連客が増え、スタッフも揃い、過去最強の布陣になったのに過去最悪の状況というのが切ないところです。

Body Conditioning Noi(鍼灸接骨院)
野一色桃子

日本人の身体をケアしたい

 ビザ更新のため、2020年4月に日本帰国し、ヤンゴンに戻ったのは今年7月9日。早く戻りたいとは思っていましたが、1年以上経ってしまいました。転機となったのは救援便が150人に達した場合に飛ぶという状況に変わってから。JCCMに加盟する石井病院から業務委託を受けており、未達の際にJCCMの再募集に滑り込んだ形でした。
 日本人が一時退避する8~9月の事業は厳しいですが、現地にいる方たちと助け合って生きられればいいと思っています。儲けは二の次。こういう状況でもゴルフをやられる方はいらっしゃるでしょうし、身体のメンテナンスは大事ですので。現在私と同じような治療院も減り、誰かの助けになれればと思います。完全予約制で治療を受け付けています。
 今後は石井病院と業務提携し、ジャンクションシティにオープンするクリニックに分院を開く予定。次のステップアップとして、海外保険が適用できるようになれればと考えています。