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iSGM が実践する働き方改革 Guide to Remote Work

日本に退避し、今もリモートワークでミャンマー人スタッフに指示を出しているビジネスマンは少なくない。「スタッフは理解しているようだが、本当に大丈夫なのか?」といった心配は尽きず、もどかしい思いを抱えているだろう。コロナ禍で起きた働き方改革は世界を一変させ、こうした流れは止まらないとみられている。ミャンマーで最も早い時期からリモートワークを導入してきたIT企業・iSGMから現場のリアルな姿を紹介する。

コロナで変わった仕事の常識
リモートワークの可能性とは

 新型コロナウイルス以前の“リモートワーク”とは、多くの場合、かつて話題となったノマドワーカーに代表されるIT分野でのワークスタイルを指していたが、それがコロナによって完全に変わってしまった。今では、国や業種問わず、あらゆるビジネスシーンで適用され、ZOOMやGoogleハングアウトといったサービスを使うのはもはや常識(LINEやFBメッセで代替も)。かつては「テクノロジーなんてわからない」と済ませられていた人々も、今やそうしたエクスキューズは通用せず、ビジネスマンであればある程度等しくIT知識が求められるようになった。

 とはいえ、前述したノマドワーカーは完全なるフリーランスだからこそ、自ずとリモートワークを余儀なくされるが、会社に所属するサラリーマンにとってのそれは少し違う。フリーランスにはない部下の育成や管理といったマネジメント業務が発生するためだ。フリーランスなら自身の業務だけに集中していればいいが、サラリーマンのリモートワークにはいろいろと課題がつきまとう。オンラインでの勤怠管理システムを導入したいが、そこにはコストがかかり、人材育成もZOOMだけで行えるのかといえば懐疑的。ましてやミャンマーといった途上国では、そもそもビジネスマインドの成熟度も高いとはいえず、古い表現だが“膝と膝を突き合わせて”面と向かって指導しなければ、伝わるものも伝わらないという実情もある。

 しかし、すでにゲームチェンジが起きてしまった事実は変えようがなく、中長期的にみれば、ITシステムの導入は事業効率化、コスト面という観点からも決してマイナスではない。勤怠管理システムでは個人のデータを可視化することで、業務における不得意な部分を顕在化し、指導の仕方や評価方法も明確にすることができる。これまで曖昧だった部分をクリアにすることで、不適切な指導や評価軸の軋轢をなくし、結果的に会社、従業員双方にとってメリットにもなりうる。
 現在はリモートワークへの移行の過渡期であり、しばらくは多くの日系企業が人材育成で悩むだろうが、将来的には新しいテクノロジーが解決してくれる可能性は高い。約260名もの大所帯のスタッフを束ねる、ミャンマー生まれミャンマー育ちのiSGM・京MDは「リモートだけでも現状問題はありませんし、厚い信頼関係を築いていくことが大事」と強調する(京MDの「ミャンマー人の人材育成論」については、MJビジネスサイト内のプレミアム会員限定にて後日掲載)。

 今回は、先進的な働き方を体現しているiSGMを取り上げ、ミャンマーのリモートワークの最先端をお届けする。


リモートワークといっても、基本的に複雑なわけではない。社内外含めビジネスの基本はコミュニケーションとマネジメントであり、それをいかにテクノロジーで代替するのか、というのがポイントとなる。

日本から入金も可能
進むオンライン決済

日本で退避しているビジネスマンにとって、ネックとなっているのが出入金の問題。毎回サインをしていたMDにとっては厳しい現状だと予想されるが、すでにミャンマーの一部銀行では、オンラインでの入金が可能となっている。京MDはKBZとSMBCを利用し、スマホやPCを使い、二段階承認を経て行う。

健康維持のための
ストレッチ体操

iSGMでは、決まった時間になると、日本の学校でもおなじみのチャイムが鳴り、ストレッチを中心とした体操を行う。1日のほとんどがPC業務なので、肩や首のコリも絶えず、スタッフ全員で対策している。実質の強制ではあるものの、個人で行うのもはばかれるため、健康に気遣うスタッフにはありがたい。

政府指定のコロナ対策も完璧。入り口には、概要がまとめられたプリントが貼られ、消毒をした上でオフィスに入る。

普通のオフィスでは、セキュリティが行う体温チェックも自動化。体温計に額を近づけると自動で感知し、数字を表示。

基本的に机1つに1人のレイアウトだが、場合によっては、仕切りを設置し、ソーシャルディスタンスを確保する。


前述した通り、社内でもZOOM でミーティングで行う同社。大人数の場合、広めの会議室でもソーシャルディスタンスを担保しにくいからだ。また、マネジメント層は独自の勤怠管理システムを使い、全スタッフの状況をオンタイムで把握している。リモートワークでキモとなる2ツールに注目。

Web会議サービス

コロナ禍で株価が急上昇した米企業・ZOOM。日本でもすっかり定着し、オンライン授業やウェビナーといったバーチャルなコミュニケーションスペースを創造するソフトとして、圧倒的な地位を確立した。

日本の京MD も参加するスタッフミーティング。有料版なら100人以上の参加も可能。

PC 画面をそのまま資料として表示しながら説明。使い勝手がよく、機能性に優れる。

同じフロアにいながらも、ZOOMでミーティング。右の写真が参加しているメンバー。

すぐ近くにいながらもPCを使ってミーティングなど、かつては考えられなかった。

勤怠管理システム iHRMS

同社が開発した勤怠管理システム・iHRMS では、勤怠時間から休日日数、残業時間といった労務管理から給与計算といったところまでもカバー。左の写真はマネージャーがアクセスするPC 管理画面。



チャックイン(出勤)、チャックアウト(退勤)といったことをクリック一つで行い、詳細な時間帯まで設定できる休日申請から、外出先、テレワークといった現状把握も一元管理。個人の勤務時間だけを抽出し、データ分析も可能。スタッフの出社時間と作業進捗状況や売り上げに注目すれば、最適なスタッフィングにも応用できる。また、同社では、そうしたカスタマイズに応え、企業への販売も行っている。