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新制度施行直前!日本の人材不足は解消されるのか? 海外人材育成機関

外国人労働者の門戸を開放!日系企業も選ばれる側に
「特定技能」制度で
日本の雇用が変わる!

4月1日から国内で施行される特定技能制度。これは、外国人労働者の受け入れを幅広く認めたものであり、人材不足に悩む日本の雇用対策の一つ。想定しうるはミャンマー人労働者の流入だが、果たして実態はどうなるのか?J-SAT の西垣代表に実情を聞いた。

J-SAT代表取締役
西垣 充 Nishigaki Mitsuru

外国人採用が変わる「特定技能」制度

──日本でミャンマー人技能実習生の失踪や難民申請など不当労働行為がしきりに取り上げられています
 複数の要因があると思いますが、最初から失踪しそうな実習生を採用していたことも大きな原因だと感じています。こういった問題が起きる一つの原因は、海外(ミャンマー)での面接時間が少ないことが挙げられます。採用を担当する経営者や人事担当者は多忙で、1日で内定を出すことがほとんど。国内で日本人を採用するとき、面接1回で決めますか?ということなんです。
 とはいえ、日本の企業が人材採用のためにミャンマーに3、4回と来られるかといえば、現実的ではありません。だからこそ我々は事前の適切なスクリーニングが大切だと考えており、日本の社会や会社に馴染めそうで、失踪する可能性の低い実習生を選出しています。しっかりとした事前スクリーニングは“いい外国人”採用するには不可欠です。

──現在、日本では人材不足が問題となっています
 日本人を採用してもすぐに辞めてしまい、“いい日本人”を採用できないのが根本的な原因です。最近は、応募しても面接にも来ない日本人も多く、改善する見込みはないため、将来的には外国人に頼らざるえない現状なのです。だからこそ、やみくもにミャンマー人(外国人)を採用するのではなく、“いいミャンマー人”を採用することが大切です。そのためには面接に時間をかけなければならず、やはり一番はマッチングが根幹になるわけです。

──ただ、「希望職種は特にないが、とにかく日本で働きたい」という実習生もいると思います
 むしろそういったケースがほとんどです。日本で働きたいミャンマー人、日本語が話せるミャンマー人が“いいミャンマー人”ではありません。優秀なミャンマー人はただ単にお金を稼ぎに行くのではなく、「キャリアになる」「いきなりクビにはならない」「安心・安全」というイメージから日本で働くことを選んでいます。そもそもミャンマー人はミャンマーにある日系企業で働く高度人材の給料を見て、ずば抜けて高くないことは知っています。

──採用する際に基準となる素地というのは、真面目さになりますか
 どちらかというと、日本の会社で働ける感覚を持っているかということでしょうか。“いいミャンマー人”に就職先として選んでもらうためには、ミャンマーに帰ってきてからのキャリア育成も大切。これまで実習生として日本に行ったミャンマー人が帰国後に日系企業で実際働いているかといえば、そういうわけではありません。日本に行ったプライドがあり、日本で得ていた給料をベースに転職活動を行うものの日本語は中途半端、そもそもワーカーのような仕事をしていればキャリアも中途半端、パソコンは使えない、そうなったら日本で貯蓄したお金以外に何も残っていないんですよ。だからこそ帰国後までも想定してあげることが、“いいミャンマー人”に選ばれる条件となります。

▲これまで管理組合が入っていたフローは変わり、技能実習生は高度人材と同様に企業との直接契約となる

▲外国人労働者にとっては、より日本で仕事をしやすくなる新制度。受け入れ側の企業も誠実な対応が求められる

──海外人材雇用での注目トピックを教えてください
 4月1日から「特定技能」制度が施行されます。「技能実習生」の延長戦が「特定技能」と捉えている人が多いと思います。発表されている人材雇用のフローをみれば、「高度人材」に近いものと言えるでしょう(図1参照)。以前は技能実習生は海外で技術を学び、母国に役立てるという国際貢献の意味合いが強く、管理組合に所属しながら、受け入れ企業での研修という形でした。一方、大卒の高度人材は就労ビザで入国していました。技能実習生は管理組合を経由し、企業との3社契約だったのですが、新制度では管理組合を介す必要はなく、高度人材と同じく企業と直接契約する形になり、就労ビザでの入国になります(図2参照)。これは当然ミャンマーだけではなく、中国、フィリピン、インドネシア、カンボジア、タイ、ベトナム、モンゴル、ネパールも対象。そして、現在は14業種と限定されており、特定技能1号では5年の在留期間、2号では在留期間の上限が設けられず、家族も同伴することができると言われています。

イージーな採用は崩壊へ
外国人に選ばれるために

──ポイントはどういったことでしょうか
 特定技能では転職が可能となります。ワーキングビザ(就労ビザ)ですから当然です。これまで技能実習生は転職が許されず、だからこそ不当な労働問題も起き、失踪といったことが頻発していました。しかし、今回は転職が可能なので、低賃金などの環境が悪ければ当然辞める(転職する)ことができます。何が起こるかというと、給料が高い大企業、都市圏の企業が有利になるわけです。受け入れ企業側が転職されない仕組みを作らないといけません。正当な待遇でなければ、外国人を雇用できなくなります。優秀な外国人を確保したければ、企業側がしっかりとした受け入れ態勢を整えなければ厳しいということです。

──ミャンマー人だけじゃなく、あらゆる外国人が日本に来ますね
 そうとも限りません。先進国はどこも人材不足だからです。ただ、他国とミャンマーが大きく違うのは環境の差。この国は堅調に景気が上向いていると言われていますが、労働省が発表した2019年の就職人数は1〜9月で国内16万人、海外18万人です。つまり国内には就職口がないことが明らかとなっています。弊社は技能実習生も大卒以上が対象なのですが、大卒者は1学年に20万人いるとされ、中卒、高卒も含めての国内での就職口が16万人ですので、大学を卒業しても就職できないミャンマー人であふれています。これは他のアセアン諸国とは違います。だから今の日本においては、優秀なミャンマー人を雇用できるチャンスなんです。

──もはや日本の企業は、給料がそんなに高くないという認識なのでしょうか
 前述した通り、ミャンマー人も現状を理解しています。とある調査で高度人材として働くヨーロッパ人、アジア人に日本で働く理由を聞いたところ、多くの回答は給料ではなく、「日本の文化が好き」というものでした。弊社に登録しているミャンマー人のほとんどが日系企業が好きなんです。給料だけが魅力ではないわけですよ。

──優秀な外国人が日本に来れば、スキルのない日本人が淘汰されますね
 そもそもスキルがなければ、日本人も外国人雇用も同じというスタンスになりますよね。受け入れ側も、送る側も同じ感覚になっていくと思いますよ。

──とはいえ、地方ではまだ外国人労働者はリスクが高いと思われているでしょう
 だからこそ我々は日本の企業で長く働ける力を養うように教育しています。まず日本語能力は当たり前。プラス日系企業に対する素養、文化に馴染めるかといったことも重要。仕事だけじゃなくて日常生活も大事だからです。企業側が「日本語人材は不要です」と言っても、日本語は彼らの生活で必要なんです。コンビニに行くにしても日本語が大事ですし、英語が浸透していない地方ならなおさら。プライベートが充実しないと日本を楽しむことはできません。我々がサクラタワーに学校を持っているのは、日系企業やビジネスマンに多く触れる機会があるからなんです。日系企業にいかに慣れていくかが、大切だと感じています。

▲現状のミャンマー人雇用について、西垣氏が講演を行なった神戸市主催ミャンマーセミナー
(写真提供:神戸市海外ビジネスセンター)