JETRO STREAM~日系企業動向、ミャンマーの新潮流を読み解く~

【コラム】 20201007

コロナ禍におけるミャンマーの経済動向(その1)
~貿易・投資は順調に推移~

 ミャンマーでは、3月25日に全外国人に対する入国制限措置が発動されて以来、経済的には厳しい状況が続いています。本稿では、足下の経済状況についてご紹介します。

2020年はプラス成長を維持
 2020年の経済成長率の予測については、緬政府は発表しておらず、国際機関が同予測を発表しています。2020年の実質GDP 経済率は、IMF及びADB がいずれも1.8%の成長を予測しています。また、世界銀行は、6月25日に“MyanmarEconomic Monitor”を発表し、2019/2020会計年度の実質GDP 経済率は0.5%と、厳し目な数字を出しています。同行によれば、パンデミックは、工業(▲0.2%)及びサービス業(1.0%)、とりわけ小売業、ホスピタリティ産業、輸送業への影響が最も大きく、農業(0.7%)は弾力性があると分析。一方、ICT は、e コマースの特需などで、好調に推移すると予測しています。ベトナムを除く、他のASEAN 主要国がマイナス成長を余儀なくされる中、ミャンマーは労働人口の約6割を占める農業が下支えする形で、直近のコロナ禍では経済を牽引していくものと見られています。

外国直接投資は順調に推移
 ミャンマー投資委員会(MIC)によれば、2019年10月~2020年7月期の外国直接投資認可額は、既に前会計年度(約42億ドル)を上回る約50億ドルと順調に推移しています。金額的には香港企業による電力投資やシンガポール企業による不動産投資などが上位を占めていますが、件数ベースでは219件が認可され、その約4分3が製造業への投資となっています。直近のコロナ禍においては、シンガポールのセムコープがレーグーにて436ヘクタールのインダストリアルパークの開発、日本のイオンモールは、ダゴンセイカンにおいて、2023年の開業を目指して第1号店の出店をそれぞれ発表しています。既述の製造業投資や各種大型プロジェクトは将来のミャンマーに対する投資家の信認の表れと見ています。

貿易も回復傾向に
 2019年10月~2020年8月7日期の対外輸出額は、前年同期比7.1%増の約88億ドル、同期の対外輸入額は同6.0%増の約136億ドルとなりました。
 2020年1~7月期の対日輸出額は、前年同期比1.0%増の約814億円。同期の対日輸入額は同1.4%減の365億円となっています。
 月別の対日輸出額を見ると、3月155億円→4月137億円→5月55億円→6月73億円、7月107億円と推移しています。4月のティンジャン祭り明けの当局による工場査察のため、生産ラインがストップしたため、5月は大幅に落ち込みましたが、6月以降は回復傾向にあります。
 主要輸出品である衣類・同附属品も、5月は457億円でしたが、6月505億円、7月572億円と回復傾向が見られます。

(2020年10月号掲載)

田中一史(たなか かずふみ)
日本貿易振興機構(ジェトロ)ヤンゴン事務所長。主にアジア経済の調査や企業の海外展開支援業務を担当。海外勤務は、マニラ事務所調査ダイレクター、サンフランシスコ事務所北米広域調査員、バンコク事務所次長を歴任。2017年12月より現職。

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