なるほど! 納得!! ミャンマー法 ~駐在弁護士が気になる“あれこれ”を解説~

【コラム】 2020602


新型コロナウィルス問題の労務関係への影響

 業務量の減少により、従業員を一定期間自宅待機にすることを考えています。この自宅待機期間については、給与を支払わなくてはならないでしょうか。

 まず、自宅待機期間中の給与を賃金から控除することができるか検討します。賃金支払法は、賃金からの控除は、同法の定める要件を満たさない限り、行うことはできないとしています。同法は、法定の休暇及び祝日を除く欠勤時の給与を控除することができるとしていますが、ここでいう「欠勤」は、従業員の側から欠勤の申し出があった場合を意味すると解されます。そのため、会社側からの自宅待機命令の際は、同法に基づき賃金からの控除をすることはできません。

 その他、ミャンマーの労働法規には、自宅待機時の賃金支払の要否について明示した規定はありません。雇用契約においては、従業員は、雇用契約所定の出勤日に出勤し、労務を提供する義務を負っており、他方、使用者は、上記労務の提供に対して、所定の賃金を支払う義務を負っています。ミャンマー契約法の一般原則によると、契約の権利者が、契約の義務の履行の受領を拒んだ場合、義務者は不履行の責任を負わず、契約上の権利を失わないとされています。すなわち、従業員が労務を提供できる用意があるにもかかわらず、使用者の指示で自宅待機となった場合、かかるミャンマー契約法の一般原則からすると、当該自宅待機期間について、使用者は従業員に対する給与支払の義務を負うと解釈することが可能といえます。

 具体的な給与金額については、基本給は当然に支払うことになりますが、手当については、その性質によるものと解されます。生活補償的な側面が強い手当は支払う必要性が高いと思われ、他方、当然ですが残業手当等の実際に稼働したことに伴う手当は、支払不要ということになるでしょう。

 このように、使用者が従業員に自宅待機を命じた場合、現行法上は、稼働しなかった分について、給与を減額する法律上の根拠はないということになります。

 他方で、ミャンマー法上、法定の補償金(勤務期間6ヵ月以上、1年未満は0.5ヵ月分、2年未満は1ヵ月分、3年未満は1.5ヵ月分、4年未満は3ヵ月分など期間により増額され、最大25年以上勤務で13ヵ月分)を支払えば、使用者は従業員を解雇することに法律上の制限はありません。

 このように、ミャンマー法上は、給与全額の支払を継続するか、補償金を支払って従業員を解雇するかという二者択一の方法しか規定されておらず、フレキシブルな対応ができないといえます。

 実務的な対応としては、一定期間について、出勤日数を減らして、給与も減額するといった合意を使用者と従業員の間で締結することも考えられるでしょう。

(2020年6月号掲載)

甲斐史朗(かい ふみあき)
TMI総合法律事務所パートナー(ミャンマー担当)。日本国弁護士。早稲田大学政治経済学部政治学科、ロンドン大学LLM卒業。2015年1月よりヤンゴンオフィス駐在。

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弁護士約420名、弁理士約80名を擁する日本の五大法律事務所の一つ。
ミャンマーには、日本の法律事務所として最初に進出し、2012年にヤンゴンオフィスを開設。

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