互いに助け合えるような
両国の交流を

 MIAOにはスーチーさんの言うように、両国がお互い助け合えるような活動を期待したいと思っています。具体的にはやはり教育面でしょうか。私は児童養護施設の後援会長もしているのですが、そこで暮らす高校生たちをミャンマーの寺子屋に連れていったことがあるのですね。現地ではダンスを踊ったり紙風船を作ったり絵を描いたり、それぞれ得意なことをミャンマーの子どもたちに教えてもらったのです。すると子どもたちがもう大喜びで、日本人の高校生たちに感謝するんですよ。

 施設で育った高校生たちは、親の愛情には恵まれず、心に傷を抱えています。でもミャンマーの子どもたちが貧しいながらも心から楽しそうにしていて、自分たちに感謝を伝えてくることでなにかを感じたのか、彼たちも少しずつ気持ちや表情が変わってくるんですね。普段から支援者に対して「ありがとうございます」の手紙を書き続けるような毎日を送っている高校生たちが、「なにかをしてもらう」のではなく、自分からなにかをして、感謝が帰ってくるという喜びを知るのだと思います。

 ミャンマーの寺子屋の子どもたちを、日本のミャマー祭りに招いたことがあります。飛行機にも、エスカレーターにすら乗ったことのない子供たちが日本の発展ぶりに驚いて、日本の建築物は素晴らしい、ミャンマーにも建てたいなんて口々に言うのです。そうやってお互いに刺激を受け合うような交流もMIAOにも手がけてほしいですね。

©ミャンマー祭り

「平和の鐘」に込められたミャンマーへの思い

 2019年に大阪で行われたG20(第14回20か国・地域首脳会合)で、私は首相夫人として各国首脳の配偶者の皆さまをエスコートさせていただきましたが、そこで小さな「鐘」をお配りしました。国連に飾られている「平和の鐘」のミニチュアです。これは戦時中、日本兵としてミャンマーで戦い、負傷した経験から平和活動に携わるようになった愛媛県宇和島市元市長の中川千代治さんが、世界中の硬貨を集めて鋳造し、1954年に国連に寄贈したものです。

 そのミニチュアのひとつをスーチーさんにもお渡ししました。彼女は鐘を9回続けて鳴らすと、「9はミャンマーでは特別な数字で、縁起が良いと言われています。枕元にこれを置いて、毎日鳴らします」とおっしゃっていただきました。私も鐘を鳴らしながら、その思いに共鳴したいと思っています。そしていずれは、またミャンマー現地にも赴き、ミャンマーの人々や教育のためになにができるのか考えてみたいですね。

 ミャンマーには、経済ばかりを追い求めてきた日本人が忘れ去ってしまったものがたくさん残っています。一方、ミャンマーにも足りないものがたくさんあります。両国が補い合い、手を取り合ってアジアを牽引する力になれば、そしてそのための支援がMIAOでできればと考えています。

安倍 昭恵 [Akie Abe]
東京都生まれ。聖心女子専門学校英語科卒業。立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修了。株式会社電通の新聞局に勤務していた1987年、後に第90・96・97・98代内閣総理大臣となる安倍晋三氏と結婚。社会貢献活動に尽力しており、現在は公益財団法人社会貢献支援財団や一般社団法人ミャンマー祭りの会長を務める。ミャンマーとの関係も深く、学校建設などの活動を行っている。

NPO法人ミャンマー国際支援機構(MIAO)を通じて避難民や民主派団体へのサポートをお願いします

ミャンマー支援のための
サポーターを募集します