【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

国民統一政府(NUG)女性・青少年・児童担当大臣 スザンナ・ラ・ラ・ソー 氏

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今回のテーマ
女性や青少年、児童への支援を担うNUG担当大臣

スザンナ・ラ・ラ・ソー 氏 [Naw Susanna Hla Hla Soe]

国民統一政府(NUG)女性・青少年・児童担当大臣
1965年、ヤンゴン生まれ。ヤンゴン大学で動物学の学士号と修士号を取得する。在学中から活動家としてのキャリアをスタート。女性に対する暴力など幅広い問題の解決に取り組み、2012年にはアメリカでインターアクション人道賞を受賞するなど、高い評価を得る。15年、アウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)からミャンマー総選挙に出馬し当選。20年の選挙でも再選を果たす。21年、民主派の国民統一政府(NUG)の女性・青年・児童担当大臣に任命される。

社会活動家として幅広い分野で活躍
2015年から政治家としても活動

永杉 9月号から始まったタイ・ミャンマー国境地帯におけるインタビューの第2回目は、国民統一政府(NUG)の女性・青少年・児童担当大臣であるスザンナ・ラ・ラ・ソーさんにお話を伺います。
 スザンナさんは、ヤンゴン大学で動物学を学びながら、社会活動家としてのキャリアをスタートさせました。人道支援や開発援助などを手掛けるアメリカのNGO団体「ワールド・ビジョン」でプロジェクトマネージャーを務めたほか、2003年にはカレン女性行動グループ(KWAG)に参加し、女性問題や少数民族問題の解決に向けた活動も行ってきた実績があります。活動に対する評価は極めて高く、12年にはアメリカで「インターアクション人道賞」を受賞。12年と13年にはミャンマーメディアによって「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」に選出されるなど、輝かしい経歴をお持ちです。その後はミャンマー女性団体ネットワーク(WON)の会長など数多くの要職に就き、15年からは政治家としてのキャリアをスタートさせました。それでは、初当選から現在に至るまでの経緯を教えてください。

スザンナ 私は15年のミャンマー総選挙で国民民主連盟(NLD)から出馬して当選し、政治家としてのキャリアをスタートさせました。一期目となる5年間は多数の委員会の委員長を務めるなど、積極的な活動を行うことができました。そして、20年の総選挙にも立候補して再選を果たし、2期目には少数民族問題担当大臣になることが内定していたのです。しかし、その矢先にクーデターが発生し、就任は白紙になりました。

永杉 社会活動家としてカレン州における活動を活発にされていましたから、その功績を認められて少数民族問題担当大臣に推挙されたのだと思います。クーデター後は、NLDメンバーを中心に結成された国民統一政府(NUG)に参加。現在は、女性・青少年・児童担当大臣のポストに就かれています。

スザンナ NUGの指名委員会がカレン族指導者などとの間で協議を行った結果、私に大臣就任のオファーが届いたのでお受けすることになりました。

永杉 女性・青少年・児童担当大臣としてどのような活動をされているのでしょうか。

スザンナ 活動は多岐にわたります。例えば妊娠中の女性への支援、栄養状態が悪化している子どもへのサポート、教育を受けられなくなった青年たちのための能力向上トレーニングなども行います。また、市民防衛隊(PDF)に所属する若者への保健衛生分野の支援活動も行っています。活動地域は、カレン州、カレンニー州、チン州やザガイン管区、マグエー管区など、ほとんどの戦闘地域をカバーしています。

永杉 具体的にどのような支援が行われているのでしょうか。

スザンナ 妊婦に対しては現金の支給を行っています。昨年は妊婦5万人に対して一人当たり50,000チャットの支援金を用意し、モバイル送金サービス「Wave Money」を通じて送金を行いました。今年はこれまでに1.1,000人の妊婦に対して同額の送金を行った実績があります。現在、このプログラムを継続させるため、資金提供を行ってくれる支援者や団体を探しているところです。

永杉 支援活動のほかにはどのような活動を行っていますか。

スザンナ 軍評議会(SAC)が率いる国軍は、あらゆる残虐行為を国民に対して行っています。女児や女性に対する強姦や殺人、親のいない子どもの拘束や焼殺などです。我々は国内の弁護士グループとも連携し、これらの証拠を集めて国際社会に訴え続けています。ちょうど本日もニューヨークの国連において我々のレポートが読み上げられました。

永杉 市民防衛隊(PDF)に共鳴する若者たちが、カレン州にも多数流入していると聞いています。彼らに対してはどのようなサポートを行っていますか。

スザンナ PDFに参加を希望する若者は保護をして、必要に応じてシェルターを与えています。また、PDF参加者以外にも、市民不服従運動(CDM)に参加したことで職を追われた学校教員などもカレン州に集まってきており、彼らは私たちの学校の運営を担ってくれています。彼らのおかげで、若者たちへの職業訓練や教育を施すことができています。

永杉 本当に細やかな支援活動をされていますね。このような活動を続ける上でさまざまな困難もあると思います。現在、何か問題はありますか。

スザンナ やはり資金調達が最大の問題です。海外在住のミャンマー人による寄付のほか、海外の団体から資金を調達して支援プログラムを運営していますが、十分とは言えません。政府として国民に対して細やかな支援を行うためには、今とは比べ物にならないほど多額の資金が必要なのです。
 また、ミャンマー中央部への支援方法にも課題があります。カレン州やカレンニー州ならば越境支援が可能ですが、ザガイン管区やマグエー管区など国境から離れた地域への支援はルート確保が困難という現状があります。

▲国軍による空爆のため、カレン州の防空壕に避難する
日本への誤解を解くためにも
自衛隊の国軍幹部受け入れ停止を

永杉 日本とミャンマーは今後どのような関係であるべきと考えますか。また、日本にはどのような支援を期待しますか。

スザンナ 日本と我が国には長い友好の歴史があります。近年も平和構築分野で数多くの支援をしてくださいました。カレン州の話でいえば、レーケーコー村の開発事業が挙げられますね。

永杉 日本財団などが行っていたレーケーコー村の帰還難民支援事業ですね。国軍と少数民族武装勢力との間の戦闘が激化したことで発生した避難民の帰還を促すため、同村を観光地として開発するという支援事業も行われていました。

スザンナ 素晴らしい取り組みでしたが、それもクーデターで台無しにされてしまいました。軍による支配が続く限り、こうした平和への取り組みが前進することはありません。一刻も早く国軍による支配は排除されなければならないのです。
 我々は決して、個人的な恨みで武器を取って戦っているわけではありません。自国民を殺している今の軍による支配を即時終わらせ、連邦制民主主義体制が確立されなければ平和が訪れることはないのです。日本には、軍による支配を終わらせるための強力な支援をお願いしたいと思います。
 そしてもう一つ、日本に対して要求することは、現在も継続しているミャンマー国軍幹部・士官候補生を自衛隊が受け入れることを即刻やめていただきたいということです。

永杉 数人とはいえ、今の国軍から幹部らを受け入れ軍事訓練を施すことは即時停止すべきであると私も同意見です。

スザンナ こんなことは言いたくありませんが、カレン州の一部では「国軍は旧日本軍から残虐行為を受け継いだ」と信じられているのです。

永杉 それは誤解です。旧日本軍は今のミャンマー国軍とは異なり、ビルマの一般市民を標的にすることはありませんでした。

スザンナ そうかも知れません。しかし、残念ながらそれを信じる人がいるのは事実です。そして、彼らの目から見れば、現在の日本政府も自分たちを惨殺しようとするミャンマー軍将校を受け入れてトレーニングをしているのだと思ってしまうのです。
 日本への誤解を解くためにも、重ねて、受け入れは即時停止していただきたいと考えています。

▲コートゥレイ植樹祭で、カレン族の若者たちと環境保護に取り組む
NUGは有事における暫定的な存在
国軍打倒後は新たな政府を作るべき

永杉 大臣として、今後ミャンマーをどのような国にしていくべきとお考えですか。そして、そのゴールに向かってNUGが果たすべき役割は何でしょうか。

スザンナ 自由で民主的な連邦国家こそが、私が描くミャンマーの理想像です。戦いや殺し合いなどなく、常に発展し続ける国。軍隊自体は否定しませんが、国民を守るプロフェッショナルな軍を擁する国家であるべきです。
 NUGに関しては恒久的な組織ではなく、あくまでも暫定政府としての位置づけです。暗黒の時代とも言える今のミャンマーを正しくリードする役割を担うべきですが、軍を倒し、民主主義を取り戻した暁には、NUGは解散すべきだと思います。その後は新しい政府が政権を引き継ぎ、新しい憲法に則って国家運営を行うべきでしょう。

永杉 それは素晴らしい考えだと思います。しかし、国軍との戦いに勝つためにはどのような一手が必要だと考えますか。

スザンナ 国際社会の支援が必要不可欠です。現在、人道支援関連のプロジェクトは各国が行ってくれています。しかし、正直に申し上げて今私達に必要なのは武器なのです。軍評議会(SAC)に対する外交的圧力に加え、ウクライナのような軍事的な支援を国際社会に求めます。

永杉 これまでインタビューでお会いした多くの方々が「ウクライナと同様の軍事支援をミャンマーにもしてほしい」とおっしゃっています。国際社会は問題の根幹を解決するために、軍事的な支援に舵を切る局面に来ているのかもしれません。日本は憲法上の問題があり、軍事支援は不可能ですが、だからこそ多くの人道支援をすべきだと考えます。私が代表を務めるNPO法人ミャンマー国際支援機構 MIAO(ミャオ)でも、避難民への食糧・医療支援を中心に、きめ細かな支援活動を行っていきたいと考えております。本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。

(取材協力:ジャパンソサエティ井本勝幸 撮影 尾崎ゆうき)

▲女性・青少年・児童担当大臣として、国内避難民(IDPs)の子どもたちのために活動する
▲アーティストとして、タイ・ミャンマー国境地帯のIDPs の子どもたちのアートトレーニングにも貢献する

永杉 豊 [Nagasugi Yutaka]

MJIホールディングス代表取締役
NPO法人ミャンマー国際支援機構代表理事

学生時代に起業、その後ロサンゼルス、上海、ヤンゴンに移住し現地法人を設立。2013年6月より日本及びミャンマーで情報誌「MYANMAR JAPON」を発行、ミャンマーニュースサイト「MYANMAR JAPONオンライン」とともに両メディアの統括編集長も務める。(一社)日本ミャンマー友好協会副会長、(公社)日本ニュービジネス協議会連合会特別委員、UMFCCI(ミャンマー商工会議所連盟)、ヤンゴンロータリークラブに所属。近著に『ミャンマー危機 選択を迫られる日本』(扶桑社)。

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