【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

ミャンマーの民主化を支援する議員連盟 中川正春会長/石橋通宏事務局長

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今回のテーマ 長年にわたりミャンマーの民主化を支援する超党派議員連盟

中川正春 [Nakagawa Masaharu]

1950年三重県生まれ。米国ジョージタウン大学外交学部卒業。96年に衆議院議員に初当選し、現在9期目。民主党政権時代に文部科学大臣や防災担当大臣、男女共同参画担当大臣などを歴任する。ミャンマーの民主化を支援する議員連盟会長のほか、政治分野における女性の参画と活躍を推進する議員連盟の会長なども務めている。

石橋通宏 [Ishibashi Michihiro]

1965年島根県生まれ。中央大学法学部卒業。アラバマ大学大学院修了(政治学修士)。92年全電通(現NTT労組)中央本部(国際部)入職。2001年から国際労働機関(ILO)の専門官としてアジアの労組活動家の人材育成に携わる。10年、第22回参議院議員選挙で初当選。現在2期目。ミャンマーの民主化を支援する議員連盟で事務局長を務める。

アジアにおける日本の立ち位置を問われる今
人権と民主主義を背骨とした外交を選択すべき

88年の民主化運動を受け
超党派議員連盟を結成

永杉 今回は「ミャンマーの民主化を支援する議員連盟」の中川正春会長と石橋通宏事務局長をお迎えし、鼎談形式でお話をうかがいます。まず、同連盟の成り立ちをお聞きします。

中川 1988年の民主化運動が設立のきっかけで、90年代初頭には連盟の形になっていたと記憶しています。超党派の議員連盟で、現在は59名の議員が所属。これまでに江田五月さんや、元衆議院議長の大島理森さんなどが役員を務められ、私は10年ほど前から会長に就任しています。結成以来、ミャンマーの民主化支援と少数民族和平の実現という2つの柱で支援活動を行ってきました。

永杉 2021年のクーデターを受け、同年6月には「ミャンマーにおける軍事クーデターを非難し、民主的な政治体制の早期回復を求める決議案」が衆参両院で採択されました。連盟はこれに尽力し、石橋事務局長は参議院本会議で趣旨説明を行いました。その後一年近く経過しましたが、現状をどのようにとらえていますか。

石橋 あの決議には2つの柱がありました。ひとつは、「日本はクーデターを非難し、国軍による支配を認めない。私たちは民主化を求めるミャンマー国民と共にある」という意思の表明です。国権の最高機関である国会がこの決議をしたことには大きな意味があったと言えます。
 そして、2つ目の柱は、日本政府に対して、ミャンマー国軍による残虐行為の即時停止や民主体制への復帰等の実現に全力を尽くすことや、緊急人道支援の提供等を求めるものでした。しかし残念ながら、今なお目に見える進展はありませんし、日本政府の人道支援も期待通りにいっているとは言えません。これまで政府と外務省が行ってきた人道支援は、主に国連機関を通して行うものです。このルートも重要ではありますが、ミャンマーが現状、国軍の影響下にあることを考えれば、国連ルートだけでは本当に支援を必要とする人には支援物資が届かないという大きな課題があります。

永杉 2月8日に外務省が発表した文書によると、日本はすでに2,000万米ドルを超える人道支援を行っており、さらに追加で1,850万米ドルの支援も決定したとしています。

中川 今の支援方式のままでは、そのお金がクーデターに抗議し市民的不服従運動に参加している人々に届かないばかりか、結果的に軍事政権が支配構造を強固にするための資金になる危惧さえあります。これを見れば、ミャンマー国民や国際社会から日本は何をやっているんだと言われても仕方がありません。平時のスキームでは支援が行き届かないことを認識し、民主派や少数民族系のNGOなどとも連携し、非常時の支援スキームを構築すべきだと政府・外務省に働きかけています。

ODAは立ち止まって精査
少数民族勢力と積極的対話を

永杉 ODA継続の可否や経済制裁など、経済面ではどのように向き合うべきと考えていますか。

中川 現在、新規ODAは停止しており、既存分をどう扱うかが問題になっています。私は一律にすべて中止すればいいとは考えていません。完全停止してしまえば、軍とは関係ない市民の経済活動に悪影響を及ぼす恐れもあります。まずは一旦立ち止まって、一つひとつを精査し、利権構造を見極め、軍や軍系企業、幹部ファミリーを利するODAは完全にストップさせる姿勢が適切でしょう。

石橋 国軍が一切関わっていない企業や事業などはないという指摘もあります。しかし、少なくとも国軍系財閥や国軍幹部のファミリーらが直接関与して利益を得ている企業などとの関係は、完全に断つべきですし、そのための努力を目に見える形でやるべきです。そうした企業と付き合いを続け、ミャンマー国民や国際社会から白い目で見られることは、ビジネスと人権や社会的に責任ある投資(SRI)等の観点からも、日系企業の未来にとって決して良いことではないはずです。

永杉 ミャンマー国民統一政府(NUG)はPDF(人民防衛隊)を組織し、少数民族武装勢力とも連携して国軍に武力で対抗する構図も生まれています。

石橋 NUGは、PDFはあくまで国軍の暴力から自国民を守るための自衛のための組織だと説明しています。一方で、いくつかの少数民族勢力は、クーデター以前も長年にわたって、自らの民を守るために国軍と戦っていたことを忘れてはなりません。カチン民族独立軍(KIA)は、先日の独立記念日に「NUGや、ほかの少数民族とも連携をし、国軍を殲滅する」という宣言を行いました。これに他の少数民族がどれだけ呼応するか定かではありませが、展開次第では武力衝突が全土に拡大することを懸念しています。今こそ国際社会は、そして日本政府こそ、強く国軍に対して市民に対する武力や暴力の行使を即時全面停止するよう働きかけるとともに、NUGや少数民族勢力との対話を積極的に行っていかなければなりません。

中川 しかし、日本政府及び外務省は国軍とのパイプはあるものの、少数民族勢力とのつながりは決して強くないのです。88年の民主化運動以後、難民として日本に逃れてきた人々の中には多くの少数民族がいました。本来ならば彼らを通じて少数民族とのつながりを強めるべきでしたが、上手く関係を構築できなかった。そのため、現在は国軍とのパイプがメインになってしまっている。少数民族との対話チャネルを強化することは急務といえます。

88年の民主化運動を受け
超党派議員連盟を結成

永杉 日本国として、今後どのように対ミャンマー外交を行うべきでしょうか。

中川 外交には背骨が必要です。では何を背骨にすべきか。私は「人権と民主主義を守ること」を確固たる背骨にすべきと考えます。商売のためだけに外交をしてはいけません。今、国軍に利するようなことをすれば、長い目で見たとき日本国にとっても日系企業にとってもプラスに働くことはありません。今一度、日本外交のあり方を見つめ直し、毅然とした態度で国軍にあたることが求められています。

石橋 今の日本の外交は、態度を曖昧にしたまま、相手の機嫌を取ることだけに注力しているように見えて仕方ありません。日本は、国軍支配を、武力行使を、人権侵害を、一切容認しないこと、そしてこれからも民主主義と人権と平和を希求するミャンマー国民とともにあるのだという姿勢を、もっと明確に態度や行動で示すべきだと思います。

永杉 中国の台頭もあり、人権や民主主義が揺らぐできごとが増えています。日本も時には、外国に対して強い意思を示すことが大切だと思います。超党派の議員連盟で日本の外交姿勢をしっかりと監視し、適切な行動を促すことを期待します。本日はお忙しい中ありがとうございました。

永杉 豊 [Nagasugi Yutaka]

MYANMAR JAPON CO., LTD. CEO
MJIホールディングス代表取締役

学生時代に起業、その後ロサンゼルス、上海、ヤンゴンに移住し現地法人を設立。2013年からミャンマー在住。月刊日本語情報誌「MYANMAR JAPON」を発行、ニュースサイト「MYANMAR JAPONオンライン」を運営、各メディアの統括編集長を務める。(一社)日本ミャンマー友好協会副会長、(公社)日本ニュービジネス協議会連合会特別委員、UMFCCI(ミャンマー商工会議所連盟)、ヤンゴンロータリークラブ所属。著書に『ミャンマー危機 選択を迫られる日本』(扶桑社)など。