【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

公益財団法人社会貢献支援財団 安倍昭恵 会長

今回のテーマ:国内外の社会貢献活動を支援する前首相夫人

安倍昭恵 [Abe Akie]

公益財団法人社会貢献支援財団 会長
東京都生まれ。聖心女子専門学校英語科卒業。立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修了。株式会社電通の新聞局に勤務していた1987年、後に第90・96・97・98代内閣総理大臣となる安倍晋三氏と結婚。社会貢献活動に尽力しており、現在は公益財団法人社会貢献支援財団の会長を務める。ミャンマーとの関係も深く、学校建設などの活動を行っている。

ミャンマー国民の分断と対立を抑える道を模索し
世界がミャンマーを忘れないための努力を

人のために尽くす日本人
国内外にはたくさんいる

永杉 今回は、ちょうど7年前にもインタビューさせていただきました、安倍晋三前首相の奥様である安倍昭恵さんにお話をうかがいます。安倍さんは、以前から社会貢献活動に尽力されており、現在、公益財団法人社会貢献支援財団の会長として活動されています。まず、財団について教えてください。

安倍 前身は1971年に設立された日本顕彰会という財団法人で、2001年に現在の名称に変更されました。当財団の主な事業として、功績が広く知られていない社会貢献者の方々への表彰と支援を行っています。内容は緊急時の人命救助や青少年の育成、国際協力など多岐にわたります。私は2014年6月から会長を務めています。

永杉 つまり社会に貢献する方々を表彰し、陰から支援する財団ですね。今まで、会長としてさまざまな受賞者の方とお会いになる機会があったと思いますが、日本の社会貢献活動にどのような印象を抱きましたか。

安倍 人のために尽くす日本人がこんなにたくさんいらっしゃるのだと認識しました。そして、人生のすべてを支援に捧げている方が多くいることに感銘を受けました。例えば、個人的にも親しくしている田中千草さんという方は、カンボジアの学校で教師として働いて同国の教育の発展に寄与しつつ、貧困や家庭問題などで家族と暮らせない子どもたちを引き取り、生活をともにされる活動をしています。ある時、生徒の一人が人身売買の対象になったことを知った彼女は、組織からその子を取り戻すために自分が身代わりとなり、後からお金を届けてもらい解放されたなんていうエピソードも持っている方です。このように我が身を捧げるような支援をされている日本人が多くいることを、この職を通じて知ることができました。

社会支援に関心を持つ人と
受賞者を結ぶ役割を

永杉 会長になられてから7年になります。今後のビジョンをお聞かせください。

安倍 まず、支援団体同士のネットワークを作れたらいいと考えています。私達は50年間で1万を超える個人・団体を表彰してきました。それぞれ素晴らしい活動をされているのですが、受賞者同士の横のつながりがあればより良い結果になることもあります。そうした連携の橋渡しをしていきたいです。
 また、多くの団体が資金集めに苦労している現状があり、代表の方が身銭を切って活動しているケースは珍しくありません。こうした状況を解決するために、先日「ひとしずく」というプラットフォームを財団のHP内に設立しました。これは過去の受賞者を検索でき、彼らの現在の活動状況や資金・人材の募集状況などを閲覧できるものです。例えば「ミャンマー」で検索すれば、コロナやクーデターの中で支援を続けている井本勝幸さんや医師の名知仁子さんなどの団体を知ることができ、各団体の支援窓口に直接アクセスすることができます。このように、支援団体と人々をつなげる活動にはより一層力を入れていきたいと思います。

永杉 安倍さんは寺子屋づくりをはじめ、ミャンマー祭りにも関わるなど、ミャンマーに対して多くの支援活動をしてきました。クーデター以後、これらのプロジェクトにどのような影響がありましたか。

安倍 寺子屋の運営スタッフとも連絡を取りましたが、クーデターによる直接の被害にあった子どもはいませんでした。しかし、新型コロナウィルスや食糧問題など、厳しい状況も聞いています。
 ミャンマー祭りに関しては、しばらく開催は難しいでしょう。ただ、これまでの開催の中でミャンマーをテーマにした写真コンテストを実施していて、多くのストックがあります。そうした写真を使った展示会などを開催し支援していかれればいいですね。

永杉 ミャンマーは2月のクーデター発生以降、社会や経済が混迷の度を深めています。クーデターから始まった一連の流れをどのように捉えていますか。

安倍 前提として、あれだけのことをした国軍を許すわけにはいかないという思いはあります。一方、ミャンマー国民が分断され対立を深める現状は憂慮しています。ミャンマー人と話していると、日本に対して「なぜ国軍に強い圧力をかけないのか」といった怒りをあらわにされる方も多くいらっしゃいます。その言い分は痛いほどわかります。自分だって身近な人があんな暴力を受けていたら同じように言うかもしれません。しかし、対立が深まり、軍と民主派双方が武器をとって戦うという状況になることは避けなければなりません。平和的な解決方法をなんとか模索してもらいたいと願っています。

ポジティブなミャンマーも
人々に伝えていきたい

永杉 そのような状況下で、安倍さん個人はミャンマーとどのように向き合おうと考えていますか。

安倍 日本や世界に対してアピールをし続けることです。ミャンマーは混迷を極めたままですが、ニュースの扱いは減ってきています。最近ではアフガニスタン問題などもあり仕方がないことかもしれませんが、少しでも皆さんに注目してもらい、忘れてもらわないためにもミャンマーのアピールを続けていきたい。そうやって集まったミャンマーへの思いを、「ひとしずく」などを使って実際の支援に結びつけていきたいですね。

永杉 実は、今回掲載される2021年10月号で本誌創刊100号を迎えます。もし差支えなければ、ひと言お祝いのメッセージをいただけますか(笑)。

安倍 まずは創刊100号おめでとうございます(笑)。ミャンマーの生の声がわかるメディアは大変貴重ですし、それが100号も続いたのは大変喜ばしいことです。現地を知っているからこそ、クーデターに関する悪いことだけでなく、元々は優しい顔を持っているミャンマーという国のことも併せて伝えてほしいと思います。それが今後のミャンマーのためになるのではないでしょうか。

永杉 たしかに昨今はミャンマーの凄惨な状況ばかりが伝えられています。それも大切なことですが、本来のミャンマーの魅力や人の温かさなども伝え続けられるメディアでありたいと改めて認識しました。本日はお忙しい中ありがとうございました。

永杉 豊 [Nagasugi Yutaka]

MYANMAR JAPON CO., LTD. CEO
MJIホールディングス代表取締役

学生時代に起業。その後ロサンゼルス、上海、ヤンゴンに移住し現地法人を設立。2013年からミャンマー在住。月刊日本語情報誌「MYANMAR JAPON(MJビジネス)」、英語・緬語情報誌「MJ+PLUS」を発行、ニュースサイト「MYANMAR JAPONオンライン」を運営、3メディアの統括編集長も務める。(一社)日本ミャンマー友好協会副会長、(公社)日本ニュービジネス協議会連合会特別委員、UMFCCI(ミャンマー商工会議所連盟)、ヤンゴンロータリークラブ所属。