【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

駐日ミャンマー連邦共和国大使館 ソー・ハン特命全権大使

コロナ禍によるダメージはあるが
新たな投資は途切れずに続いている

今回のテーマ 2020年末に着任した新駐日ミャンマー大使

ソー・ハン大使 [Mr. Soe Han]

Republic of the Union of Myanmar Ambassador
1964年ヤンゴン生まれ。物理学修士、経営学修士。
1993年に外務省入省。在タイ大使館と在日大使館で一等書記官、在中華人民共和国大使館で参事官、外務省本省で政務局長などのポストを経て、2019年から外務次官。2020年12月17日に信任状を捧呈し、駐日ミャンマー連邦共和国特命全権大使に就任した。留学と合わせ、今回が3回目の日本在住となる。

外務次官を務めた外交官が
12年ぶりの日本で大使就任

永杉 本コロナ禍で中断しているTOP対談ですが、2021年最初の号ということで今月に限り復活をすることになりました。そこで今回お迎えするのは、2020年12月17日に信任状を捧呈し、正式に駐日特命全権大使に就任されたソー・ハン大使です。大使は以前、日本在住経験があるそうですが、久しぶりの日本はいかがですか。

ソー 日本に住むのは今回で3回目になります。最初はMBA取得のために国際大学(IUJ)に2年間留学したとき。2度目の滞在時には駐日大使館で一等書記官として3年間勤務しました。前回大使館で働いていたのは2005~08年のことですから、12年で東京の街並みは様変わりし、以前私の子どもが通っていた学校も大きな建物に建て替えられていました。しかし、伝統的なものを大切にするなどの日本国民の精神性は、あの頃と変わっていないように見受けられます。

永杉 大使はこれまでにタイ、日本、中国の在外公館における勤務経験をお持ちで、2019年には外務次官のポストに就かれていました。その経歴を有する外交官が駐日大使として就任するということは、日緬両国の関係が非常に友好かつ重要であることを示していると考えます。今回の就任にあたって、どのようなミッションをお持ちでしょうか。

ソー 両国の関係は歴史的に見ても極めて良好であると考えます。国民の交流は広がっていますし、経済面の協力も拡大を続けています。近年では2010年、2015年頃に日本から非常に大きな投資が行われたほか、現在も発電や交通分野などで大きなプロジェクトが進行しています。一方で、日本の中小企業からの投資はまだまだ伸びしろがあると考えています。日系企業が持つ優れた技術とミャンマーをつなぐことは、私のミッションといえます。
 日本の皆さんが好んで食べるこんにゃくを例に挙げてみましょう。原料となるこんにゃく芋は元々東南アジア原産で、ミャンマーでは比較的容易に栽培することができます。こうした事実をもっと広くアピールし、こんにゃくの加工技術を持つ日本の企業にミャンマーへ投資してもらうといった橋渡しができればいいですね。こんにゃくはあくまでも一例で、これ以外にも両国が協力し合える事業は数多く存在しているのです。

コロナ禍で経済にダメージも
21年はV字回復の見込み

永杉 昨年から続くコロナ禍により世界経済が大きな影響を受けています。ミャンマー経済の現状をお聞かせください。

ソー COVID-19の発生以前、ミャンマー経済は非常に好調で、ASEAN内でもトップクラスのGDP成長率を記録していました。しかし、コロナ禍において各国と同様にミャンマー経済も大きなダメージを受けました。ミャンマー政府はCOVID-19Economic Relief Plan(CERP)という制度を立ち上げて、国民や企業へ援助をしています。特に影響の大きかった衣料品製造、ホテル・観光、中小企業に対しては1000億チャット規模の支援を行ったほか、その他業種の企業に対しても860億チャットの予算を用意して1%の金利で貸付を行う制度も開始しました。また、収入が途絶えた家庭へは給付金を支給しました。

永杉 私もミャンマーで起業、会社を経営している立場なので、一日でも早く感染が収まってほしいと考えています。

ソー 大変な状況ですが、すべてが停滞しているわけではありません。IMF(国際通貨基金)の試算によると、ミャンマーの経済成長は2020年こそ2%ほどに低迷するとしていますが、21年はプラス6%程度まで回復するだろうとしています。
 投資は続いており、モン州に新たな経済特区を作る計画のほか、ヤンゴンの西部に工業団地を新設するプロジェクトも進行しています。さらに、丸紅、住友商事、三井物産の3社とミャンマーのエデングループが合弁会社を設立し、ティラワ経済特区に液化天然ガス(LNG)火力発電所を建設することが決定しました。2025年頃に稼働する予定で、電力の安定供給に大きく貢献してくれるはずです。このように、コロナ禍であっても大きなプロジェクトは動き続けているのです。

日本の若者に対して
文化を広くアピールしたい

永杉 日本で働くミャンマー人労働者が増えています。こうした動きについてどうお考えですか。

ソー 両国にとってよいことだと考えています。日本で働いた経験と技術を有するミャンマー人が帰国したとき、ミャンマーの発展に大きく寄与してくれることでしょう。我々としては、日本での就労許可を積極的に出していきたいと考えています。

永杉 文化面の交流促進についてはいかがでしょう。最近日本ではミャンマーの格闘技ラウェイの認知度も上がってきているようです。

ソー ラウェイはグローブを着用しないハードな格闘技で、以前はミャンマー国内の人気に留まるものでした。今は世界中に広がりつつあるようで大変うれしく思います。ミャンマーには他にもチンロンという伝統的な球技などもあります。チンロンのトッププレイヤーを日本に招待して技を披露してもらうといったイベントもやってみたいですね。ほかには、ミャンマーの食文化を広める活動にも力を入れたいと思います。
 日本人の年配の方は、ミャンマーと日本には歴史的に深いつながりがあると理解している人が多くいるのですが、若い人の場合ミャンマーに馴染みのない人も増えています。食、文化、観光など、あらゆる分野を若い人にアピールして、両国の文化交流を促進したいですね。

永杉 経済活動の活性化も、両国の文化交流促進も、感染への不安が払拭されてこそ。一日も早く状況が落ち着いて、新大使が主導するさまざまな交流が実現すればよいと思います。本日は公務ご多忙の折、誠にありがとうございました。

永杉 豊 [Nagasugi Yutaka]

MYANMAR JAPON CO., LTD. CEO
ミャンマー・日本で発行するビジネス情報誌「MJ Business」、英語・緬語ビジネス情報誌「MJ + plus」の発行人。ミャンマー初のTV&オンラインショピングサイト「TV SHOP」を運営。「美容・健康・快適生活」をコンセプトに、ハイブランドを中心とした商品ラインナップを展開している。ミャンマーの政財界や日本政府要人に豊富な人脈を持ち、ビジネス支援や投資アドバイスも務める。日本ブランドの展示・販売プロジェクト「The JAPAN BRAND」主宰者。一般社団法人日本ミャンマー友好協会副会長、公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会特別委員、ヤンゴン和僑会会長、UMFCCI(ミャンマー商工会議所連盟)、ヤンゴンロータリークラブ所属。