【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

<2020年5月号>SINGAPORE MYANMAR INVESTCO カイン・ティンザー・トゥン ゼネラルマネージャー

変化するミャンマー人のライフスタイル
高価格帯のスキンケア商品も好調

今回のテーマ ミャンマーにおける資生堂の代理店企業

カイン・ティンザー・トゥン [Dr. Khine Thinzar Htun]

SINGAPORE MYANMAR INVESTCO
General Manager

2012年ヤンゴン第二医科大学卒。
2018年Myanmar Metropolitan CollegeにてMBAを取得。大学卒業後、スイス資本のROCHEに就職し、プロダクトスペシャリストとして従事する。その後、Medi Myanmarが国内で展開するL'OCCITANEブランドのセールス・マーケティングマネージャーを経験。SMIに入社後、プロダクトマネージャーを経て現職。

上質で高級なイメージ
人気の高い日本製化粧品

永杉 本日は国内で多岐にわたる事業を展開し、ミャンマーにおける資生堂の代理店であるSINGAPORE MYANMAR INVESTCO(SMI)のゼネラルマネージャー、カイン・ティンザー・トゥンさんにお話をうかがいます。まずはSMIという会社と、カインさんの略歴や役割を教えてください。

カイン SMIはシンガポールを本拠地とする投資開発企業です。2015年にミャンマーへ進出し、ローカル企業と協業して免税品店ビジネスを開始。16年にヤンゴン国際空港の第1ターミナルに店舗を立ち上げました。17年から資生堂の代理店となり、国内店舗や空港免税品店で販売をしています。現在は、リテール(小売)、飲食、物流・倉庫という3つが事業の柱になっています。私は12年にヤンゴン第二医科大学を卒業したあと、スイス資本の製薬・ヘルスケア企業のROCHEや、L'OCCITANEブランドをミャンマーで展開する企業を経て、当社に入社しました。さまざまなプロジェクトに関わっていますが、メインは資生堂のビジネスです。

永杉 世界的にも人気の高い資生堂ですが、ミャンマーでは資生堂の製品ラインナップのうち、どのような製品が展開されているのでしょうか。また、ミャンマーの人々が抱く同社へのイメージを教えてください。

カイン 資生堂は多数のブランドを有していますが、当社では「SHISEIDO GINZATOKYO」を輸入販売しています。もっとも人気が高いのはスキンケア商品で、メイクアップ商品も好調です。資生堂のイメージは、高級で上質なブランドという言葉に尽きます。スキンケア商品を一つとってみても、5万~20万Ksという価格帯ですが、収入の多い大人の女性が多く愛用してくださっています。高価ではありますが、品質に定評のある日本製品ということで高い人気を博しています。

対面サービスを重視
接客の鍵は「おもてなし」

永杉 資生堂製品を展開する際の経営戦略を教えてください。

カイン 当社が代理店になったのは2017年ですが、資生堂自体は1991年からミャンマー市場で展開しておりました。すでに高い知名度がありますので、マス・マーケティングではなく、ターゲット・マーケティングを基本戦略としています。そして、お客様との関係構築を特に重視する、カスタマー・リレーション・マネジメントという考えを大事にしており、カウンターでは日本の「おもてなし」の精神で接客にあたっています。高い品質を広く知ってもらうことも大切。小容量の製品を詰め合わせたトラベルポーチを用意し、手軽に試してもらえるようなプロモーションを行っています。
 また、新製品の積極的なPRも重視しています。資生堂では、年に2回ほど新たな製品がリリースされるので、こうした豊富な製品群もアピールポイントとしています。

永杉 さきほど一番の売れ筋はスキンケア製品というお話がありました。メイクアップ製品の展開についてはいかがでしょうか。

カイン 今後はメイクアップ製品を拡充していきます。これまでは、35歳以上の女性が好むスキンケア製品が多くラインナップされていたのですが、成長のためには20代のファンも増やす必要があります。段階的に若い人が好むリップやファンデーションなどを展開してきて、大きな手応えを感じています。

永杉 ミャンマーの化粧品といえば、タナカが思い浮かびます。こうした伝統的な化粧品についてどうお考えになりますか。

カイン 当社が扱う化粧品とタナカは共存できると思っています。タナカはミャンマーの気候に適した優れた化粧品ですが、スキンケアの面では不十分です。年齢を重ねるとシミが出ることもあります。ですから、タナカを使っていても、スキンケア製品でお肌の手入れはしてもらうのが理想です。しかし、最近ヤンゴンではタナカを使う人が減ってきましたね。特に若い人にその傾向が強いようです。

感染拡大の影響はあるが
終息後は大きな成長を見込む

永杉 販売方法についてお聞きします。対面式の販売を重視するとしていますが、Eコマースなどの展開は考えていませんか。

カイン 現在は対面式の販売がメインです。無料のお試しメイクや3分間のクイックフェイシャルサービス、また商品購入者が事前予約をすれば、メイクアップアーティストによるメイクが受けられるサービスもあり、結婚式などに参列する人から好評を得ています。このような密なつながりが、我々のビジネスには大切です。
 一方、直接来店できない方のためのサービスももちろん重要。ミャンマーではEコマースサイトの運営は、決済の不備などの理由から決して簡単ではありませんでした。そのため我々は、公式サイトからご注文をいただき、決済は銀行振込で行い、ご自宅まで配送するインダイレクト・オンライン・マーケティングを採用しています。現在、新型コロナウイルスの影響で苦しむ小売も多い状況ですが、資生堂製品に関してはこうしたオンラインの取り組みもあり、売上の低下はほとんど見られません。

永杉 最後に今後の展望を聞かせてください。

カイン ミャンマーの化粧品マーケットは、今後より拡大するものと考えています。短期的には感染拡大の影響はありますが、終息後には毎年10~20%程度のコンスタントな成長を続けると思われます。ミャンマー人は年々ライフスタイルが洗練されてきており、スキンケアに気を使ったり、メイクを楽しんだりする人が増えています。資生堂は上質な暮らしを志向する人々に愛されるブランドだと確信していますので、今後、我々のビジネスも大きく成長していくことでしょう。

永杉 国が豊かになれば、化粧品市場はより大きく拡大していくはずです。ミャンマーの人々が化粧をして、気兼ねなく外出できるよう、まずは現在の状況の終息を願うばかりです。本日はお忙しい中ありがとうございました。

永杉 豊[NAGASUGI YUTAKA]

MYANMAR JAPON CO., LTD. CEO
ミャンマー・日本で発行するビジネス情報誌「MJ Business」、英語・緬語ビジネス情報誌「MJ + plus」の発行人。ミャンマー初のTV&オンラインショピングサイト「TV SHOP」を運営。「美容・健康・快適生活」をコンセプトに、ハイブランドを中心とした商品ラインナップを展開している。ミャンマーの政財界や日本政府要人に豊富な人脈を持ち、ビジネス支援や投資アドバイスも務める。日本ブランドの展示・販売プロジェクト「The JAPAN BRAND」主宰者。一般社団法人日本ミャンマー友好協会副会長、公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会特別委員、ヤンゴン和僑会会長、UMFCCI(ミャンマー商工会議所連盟)、ヤンゴンロータリークラブ所属。