【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉がミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

<2019年3月号>在ミャンマー日本国大使館 丸山市郎 特命全権大使

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ミャンマーとの関係を深めていくことは
東南アジア外交全体の成功にも直結する

今回のテーマ 就任3年目を迎える駐ミャンマー日本国特命全権大使

丸山市郎 [Mr.Maruyama Ichiro]

在ミャンマー日本国大使館 特命全権大使
昭和28年生まれ、宮城県出身。
1978年に外務省入省後、81年在ミャンマー日本国大使館、85年日米安全保障条約課、南東アジア第一課、92年在ミャンマー日本国大使館、97年在米国日本国大使館、2002年在ミャンマー大使館、06年より外務省総合外交政策局外交政策調整官を経て、11年7月より在ミャンマー日本大使館の公使参事官を務めた。18年3月、駐ミャンマー日本国特命全権大使に就任。

政治経済や和平問題など幅広い分野で関与・支援を

永杉 今回は丸山市郎駐ミャンマー日本国特命全権大使にお話をうかがいます。就任が2018年3月ですから、まもなく大使として3年目を迎えます。まず、今年の展望をお聞かせください。

丸山 現在ミャンマーは、政治の安定、経済発展、少数民族武装勢力との国内和平、ラカイン州問題などに対処している最中です。日本としては、これまでもこうした問題すべてに関与して支援してきましたが、今年はより深く関わっていくことが大きなミッションとなります。

永杉 今挙げられた問題のなかでも、ラカイン州問題は大変注目を集めているトピックです。改めてこの問題に関するご見解をお聞かせください。

丸山 日本政府としての立場は以前から変わりありません。すなわち、日本はミャンマー政府の努力に寄り添って、解決・改善に向け全面的に支援していくということです。ミャンマー政府はラカイン州の軍事オペレーションは、2017年8月25日以降続くアラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)に対する対抗措置だと主張しています。一方、国際社会では深刻な人権侵害があったのではないかと考えている。ミャンマー国軍は国内の司法制度に基づいて、本問題に関しての調査や捜査を行うと表明しています。我々としては、それらをしっかり後押しすることが大切です。

中国との関係は理解
日本は変わらぬ投資を

永杉 先日、中国の習近平国家主席が来緬し、国内外に関係強化をアピールしました。中国の動きをどう見ていますか。

丸山 ミャンマーは約2,000Kmの国境を中国と接する国です。隣国の大国を相手にきちんとしたお付き合いをしなければならないのだろうということは我々も理解しています。他方で、ミャンマーが政治的に安定し、経済的にも持続可能で健全な発展を遂げるためには、日本の貢献・協力は不可欠であると確信しています。日本としては、中国を念頭においてというスタンスではなく、これまでのようにODAや企業投資、人材育成など、幅広い分野においてオールジャパンで取り組み、Win-Winの関係を目指すべきです。

永杉 最近、当社に対する日系企業からの問い合わせが顕著に増えています。日系企業による昨今の投資状況についてはどのような印象を持っていますか。

丸山 昨年はトヨタの進出決定や、損保・生保計6社が事業開始のライセンスを取得したことなど、日系企業にとって追い風となる話題が多い一年でした。アウン・サン・スー・チー国家最高顧問が即位礼正殿の儀参列のために訪日された折、投資誘致セミナーを行いましたが、そこにも700名以上の企業関係者が出席するなど、熱の高まりを実感しています。

民主的に行われた前回選挙
今年は5年ぶりの総選挙が控える

永杉 大使としては3年目ですが、丸山さん個人としてはミャンマーとの関わりは30年以上に及びます。さまざまな歴史を見てきた中で、特に印象深い出来事を教えてください。

丸山 まず思い至るのは、1995年7月10日にアウン・サン・スー・チーさんが自宅軟禁から解除されたことです。その日は早朝に軍情報局の幹部から内々に呼び出され、解除の意向を知らされました。夕方に会見が開かれたのですが、そこである記者が「軟禁を解除されたことで、日本政府はODAの再開を考える可能性があるが、それをどう思うか」と質問したのです。するとアウン・サン・スー・チーさんは「軍事政権下においては、一切のODAはいただきたくない」と発言されたのです。その毅然とした一言は、両国の関係を考える上で非常に大きなポイントとなりました。
 もう一つの出来事は、2015年の総選挙です。当時、一部メディアの中にはNLDが勝利しても政権交代は実現しないのではという見方も存在していました。選挙後、当時の樋口大使とともにテイン・セイン大統領、ミン・アウン・フライン国軍司令官に面会をした際、彼らは「心配しないでほしい。我々は選挙に負けたのだからNLDに政権を譲る」とはっきりおっしゃいました。一方でアウン・サン・スー・チーさんは、選挙勝利を祝ってNLD党本部に詰めかけた数千人の市民を前に「選挙に負けた人々のことも考えるべきだ。今日は静かに帰宅してほしい」と呼びかけたのです。このように民主的で抑制が効いた選挙が行われたことに感銘を受けたことも印象深い出来事です。

永杉 謙譲の美徳を持つミャンマー人の思いやり深さを感じさせます。その選挙から5年。今年再び総選挙が実施されます。展望を聞かせてください。

丸山 焦点とされるのはNLDが絶対過半数を取れるのか否か。つまり議席のうち67%、333議席を獲得できるかということです。アウン・サン・スー・チー国家最高顧問の人気は依然として高いので、NLDが一定の支持を得ると予想されますが、政権全体として考えたとき、経済や和平問題の政策遂行について肯定的な評価ばかりではありません。したがって、現段階でNLDが過半数を取れるかを見通すのは容易ではありません。永杉
 ご指摘の通りだと思います。最後になりますが、ミャンマーに対する思いを改めてお聞かせください。丸山
 第二次世界大戦で我が国はミャンマーに対してご迷惑をおかけしましたが、ミャンマーの人々は真っ先に平和条約と賠償協定の締結に応じてくれました。これが他のアジアの国々との交渉につながったのです。それ以外にも両国は戦前からさまざまな交流が続いており、日本にとって重要な国であることに間違いはありません。その国が民主化に向けて大きく羽ばたこうとしている。日本としてこれを支援できないのであれば、今後、東南アジア外交全体を適切に進められるのだろうかという疑問すら湧いてしまいます。ミャンマーが発展し、Win-Winの関係を築き上げることは、日本の外交にとって不可欠なことなのです。

永杉 丸山大使はミャンマーの言語、歴史、文化などあらゆることに精通する指折りの外交官だと敬服しています。大使として3年目ですが、今後も10年20年と両国のためのご活躍を祈念しております。本日は公務ご多忙の折、誠にありがとうございました。

永杉 豊[NAGASUGI YUTAKA]

MYANMAR JAPON CO., LTD. CEO
ミャンマー・日本・バンコクで発行するビジネス情報誌「MJ Business」、英語・緬語ビジネス情報誌「MJ + plus」の発行人。ミャンマーの政財界や日本政府要人に豊富な人脈を持ち、ビジネス支援や投資アドバイスも務める。日本ブランドの展示・販売プロジェクト「The JAPAN BRAND」主宰者。一般社団法人日本ミャンマー友好協会副会長、公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会特別委員、ヤンゴン和僑会会長、UMFCCI(ミャンマー商工会議所連盟)、ヤンゴンロータリークラブ所属。