【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

<2020年2月号>駐日ミャンマー連邦共和国大使館 ミン・トゥ特命全権大使

Seeing is Believing - 百聞は一見に如かず
かつてない良好な日緬関係を実見していただきたい

今回のテーマ  2019年着任の新駐日ミャンマー大使

ミン・トゥ特命全権大使 [U Myint Thu]

駐日ミャンマー連邦共和国大使館 特命全権大使
1963年ヤンゴン生まれ。
85年に農業畜産灌漑省入省。90年に外務省へ入省し、93年より在日大使館において三等書記官として勤務。その後、ジュネーブの国際連合ミャンマー政府代表部への出向や外務省ASEAN局長などの要職を歴任。2019年より現職。ASEANサミットや国連総会などへの参加も多数あり、優秀な公務員に与えられるExcellent Civil Service Awardを受賞した。

22年ぶりに駐日大使館へ
新時代の大使就任は光栄

永杉 今号では、先日新たに駐日特命全権大使となられたミン・トゥ閣下にお話をうかがいます。まずは新たな大使として、今の気持ちを聞かせてください。

ミン・トゥ 駐日特命全権大使を拝命し、2019年9月7日より東京に駐在しています。実は1993年から97年にかけてミャンマー大使館の三等書記官として東京勤務経験があるのですが、当時と比べても日本は驚異的な発展を遂げていると感じました。
 令和という新時代の幕開けに大使として日本に来られることは大変光栄なことで、10月22日には即位礼正殿の儀に参列し、その思いはより強くなりました。そして12月12日に天皇陛下に信任状を捧呈。令和の時代も両国民が理解を深め、より良い関係が築けるよう力を尽くす所存です。

永杉 古くから関係の深い両国にとって、駐日ミャンマー大使は非常に重要なポストであると認識しています。今回の大使のミッションはどのようなものとお考えになりますか。

ミン・トゥ 私は大使就任以前、外務省で事務次官として働いていました。このポストは同省の中でも高いレベルに位置するものです。これまでの駐日大使も私と同様に重要ポストに就いていた者が着任していることからも、我が国が日本に対して大きな敬意と友情を示していることがおわかりいただけると思います。
 ミッションとしてまず挙げられるのは、日本からのミャンマーへの投資と二国間協力の促進を働きかけていくことです。着任後3ヵ月間で、すでに富山、埼玉、新潟、茨城、愛知を訪問しましたが、今後もできる限り多くの地方自治体や商工会議所の方などとお会いしてミャンマーの経済や投資について説明をするつもりです。ただし、むやみに投資を促すのではなく、ミャンマーの環境や教育などによい影響を及ぼす企業を積極的に誘致したいと考えています。もちろん経済だけではなく、相互理解の推進や在日ミャンマー人の利益を守ることも大切です。

世界経済減速の影響も
インフレ率改善の兆し

永杉 2019年11月、外資系保険会社11社に営業免許が交付されました。このほか、さまざまな業種において外資の流入が加速しています。こうした流れの中、日本の経済界にどのようなことを期待されますか。

ミン・トゥ 2019会計年度中、ミャンマーから日本への輸出は衣料品、食料品、鉱石など14億ドル規模で、輸入は自動車や機械など4億8000万ドルとなっています。また、日系企業からはSEZ法の下、39業種6億7500万ドルの投資があり、大きな割合を占めています。数字上以外にも、日本がミャンマーに対して大きな貢献を果たしてくれていることに着目しなければいけません。保険営業免許交付に関しても、90年代から日本政府、JICA、日本の大手保険会社が保険業界に対して技術支援などを行っていました。こうしたことからも、日本はミャンマーにとっての最重要パートナーと言えるでしょう。
 日本の経済界に期待するのは、この流れをより加速してもらいたいこと。そして、日系企業が持つ環境問題に対する高い意識や、日本人のよい習慣などをミャンマーに持ち込んでもらいたいと考えています。

永杉 海外からの投資などによる経済発展の一方、財政赤字やインフレなどの懸念材料もあります。ミャンマー経済の現状と課題についてご見解をお聞かせください。

ミン・トゥ
 世界経済の減速による影響があることは事実です。世界銀行とIMFによると、ミャンマーは財政赤字をGDPの5%以内に維持すべきとされますが、現在は5.9%とオーバーしています。国家計画委員会の試算では、財政赤字の金額は2020年に45億ドルに達すると予想され、是正すべき問題です。しかし、決してネガティブな話題だけではないのです。例えば世界銀行のMyanmar EconomicMonitorによると、2018年のインフレ率は8.8%でしたが、2019年上半期は6.1%にまで低下していることは前向きにとらえられます。我々は今後も日本をはじめとした外国からの投資を呼び込み、発展を目指したいと考えています。

日本の教育支援に感謝
ASEANで共に発展を

永杉 2016年に発表された日本からミャンマーへの8000億円規模の支援は、日を追うごとに形として現れています。このような形の支援はこれからも続いていくと思われますが、両国の発展のため、今後日本や日本人にどのようなことを期待しますか。

ミン・トゥ 日本から受けた8,000億円規模の支援は、和平プロセスや民主化プロセス、農業・漁業への支援、交通や電気インフラの整備、人材育成などさまざまな分野で活用されています。まずはこの支援に対して、ミャンマー政府と国民に代わりお礼を申し上げたい。以前より日本からは多くの支援をいただいていますが、特に素晴らしいのは、教育分野への支援だと考えています。2002年に始まった留学生受け入れ事業(JDS)では、これまでに500名以上の学生が日本で学んでいます。また、JICAの協力の下で行われた小学校の新カリキュラム作成も素晴らしい取り組みです。将来をリードする若者への支援に深く感謝しています。
 両国の関係は過去最高の状態と言えるでしょうし、日本と日本人にお伝えしたい言葉はただ一つ。それは「Seeing isBelieving(百聞は一見に如かず)」です。まずはご自身でミャンマーを訪れ、この国を見ていただきたい。ビジネスをしている方なら、どれだけ多くのチャンスが眠っているかを実際に確かめてもらいたい。ミャンマーを通じて東西経済回廊とリンクし、ASEAN諸国のメンバーと共に発展していきましょう。

永杉 情報だけに惑わされずミャンマーの現状をその目で見るべきというお考えには、私も大いに賛同します。両国の交流があらゆる分野にまで行き渡るよう、新大使の手腕に期待したいと思います。本日は公務ご多忙の折ありがとうございました。

永杉 豊[NAGASUGI YUTAKA]

MYANMAR JAPON CO., LTD. CEO
ミャンマー・日本・バンコクで発行するビジネス情報誌「MJ Business」、英語・緬語ビジネス情報誌「MJ + plus」の発行人。ミャンマーの政財界や日本政府要人に豊富な人脈を持ち、ビジネス支援や投資アドバイスも務める。日本ブランドの展示・販売プロジェクト「The JAPAN BRAND」主宰者。一般社団法人日本ミャンマー友好協会副会長、公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会特別委員、ヤンゴン和僑会会長、UMFCCI(ミャンマー商工会議所連盟)、ヤンゴンロータリークラブ所属。