【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

<2019年11月号>ミャンマー連邦共和国 ホテル・観光省 オウン・マウン大臣

悲願のユネスコ世界文化遺産登録
官民一体でミャンマー観光を盛り上げる

今回のテーマ  新たな世界遺産を得たミャンマー観光業を牽引する大臣

オウン・マウン氏 [U Ohn Maung]

ミャンマー連邦共和国 ホテル・観光省 大臣
1947年、シャン州ニャウンシュエ生まれ。大学在学中から観光業の世界に入り、インレープリンセスホテルの経営や、ドイツに拠点を置く旅行代理店Dithelm Travel Agencyとの協業などでミャンマー観光業の発展に尽力した。2016年に発足した新政権で入閣。観光地整備や観光業従事者に向けた職業訓練コース拡充などの施策を精力的に行っている。

世界遺産登録を機にミャンマー全体をアピール

永杉 今年7月、ユネスコの世界遺産委員会がミャンマー有数の観光地バガン遺跡を新たな世界文化遺産として登録しました。今回はこれを記念して、ホテル・観光省のオウン・マウン大臣にお話をうかがいます。早速ですが、登録決定の知らせを受けたときの感想をお聞かせください。

オウン バガン遺跡は我が国の観光を語る上で欠かせない場所ですから、登録決定は本当に喜ばしいことでした。それと同時に、登録に至るまで大変長い時間を要しましたから、ようやくという気持ちもありましたね。

永杉 改めて大臣からバガン遺跡の魅力をアピールしてください。

オウン 何をおいてもご覧いただきたいのは、各所に点在する美しい仏教建築の数々でしょう。11世紀に建てられ現在も金色に輝くシュエズィーゴンパゴダ、4体の黄金の仏像など多数の見どころを有するアーナンダ寺院、高さや広さに圧倒されるタビニュ寺院やダンマヤンジーパゴダなど、定番のスポットはすべて見てほしいと思います。さらにおすすめしたいのは、ミンカバー村にあるグービャウッジー寺院。12世紀に建立された寺院なのですが、ここでは当時の美しい壁画を見ることが可能。ぜひ足を伸ばしてほしいスポットですね。
 そして、バガンといえば漆器も有名。各地に工房があり、見学を受け入れていますので、職人の手さばきを間近で見ていただきたいです。

永杉 世界遺産に登録されたことで、より多くの観光客が訪れることが期待されます。この機会にミャンマーがアピールすべきスポットとして、バガンの他にどのような場所が挙げられますか。

オウン 2014年に我が国最初の世界遺産となったピュー古代都市群との相乗効果は期待したいと考えています。これはかつてエーヤワディー川流域で栄えたピュー王国の遺跡で、そのうちハリン、ベイッタノー、シュリークシェートラの3ヵ所が世界遺産として登録されています。バガンとともに訪れてほしい場所です。
 世界遺産以外にも、我が国は多くの観光資源を有しております。内陸のカヤー州やチン州、アンダマン海に面した都市ベイなどはまだまだ穴場のスポット。こうした魅力的な観光地もより強くアピールしていきたいと思っています。

国際便就航も間近
アクセス向上が期待

永杉
 現在、外国人旅行客がバガンへ行くには、ヤンゴンなどで乗り継ぎをする必要がありますが、今後バンコクからバガンへ直行便が就航するというニュースがありました。アクセスは改善されていくのでしょうか。

オウン バガン遺跡にもっとも近いニャウンウー空港は現時点で国内線のみが就航していますが、2018年にはミャンマー運輸通信省が調査を行い、国際線就航に向けた動きが加速しています。今後は税関、入国管理、検疫を滞りなく行える空港に生まれ変わり、国際線を広く受け入れていき、バガンへのアクセスが容易になることが期待されています。

永杉 ヤンゴンからバガンへのフライト代金は、隣国タイの国内線などと比べると、高価という印象を受けます。これに対する改善案はありますか。

オウン タイには数多くのLCC(格安航空券)が就航してしのぎを削っているため、激しい価格競争が起きています。一方、ミャンマー運輸通信省の発表では、ミャンマー国内で登録されている航空会社全9社のうち、現在定期的に運行しているのは4社のみ。残りの5社は運行をストップしている状況です。我が国の航空マーケットは狭く、燃料代の高騰などもあり、大幅な値下げは難しいと思われます。今後、多くの観光客に我が国を訪れてもらい需要が増えることで、こうした問題の改善につながればと考えます。

インバウンド拡大へ
日本語の宣伝も展開

永杉 今後、インバウンドを拡大していく上で政府としてはどのような対応を考えていますか。

オウン Myanmar Tourism Federationが所轄するMyanmar Tourism Marketing という組織があるのですが、そこではDestination Marketingという思想で組織が作られています。これは観光地の行政や住民などが一体となって観光をマネジメントしていくという考え方です。今後も省庁間や官民などあらゆる垣根を超えて、各観光地を発展させたいと考えています。

永杉 タイでは政府が民間企業に資金を拠出し、外国人向けのインバウンドPRを行っています。ミャンマー政府でもそうした活動の予定はありますか。

オウン タイの観光ビジネスはミャンマーにとって影響の大きなロールモデルであると言えます。幅広いPR活動は素晴らしく、多くの観光客が世界中から訪れています。ミャンマー政府はすでにタイ国政府観光庁と協力しており、現在は日本語を含む12言語を使用したデジタルマーケティングプロジェクトを進行中。今後も我が国はこうした大きなプロジェクトを推進し、多くの観光客を呼び込みたいと考えています。

永杉 2018年10月から1年間の予定で施
行されていた日本人に対する観光ビザ免除が1年間延長され、2020年9月まで有効となりました。ビザ免除と世界遺産登録をきっかけに、より多くの日本人がミャンマーを訪れ、この国の魅力に触れてほしいと私も強く願います。本日はお忙しい中ありがとうございました。

永杉 豊[NAGASUGI YUTAKA]

MYANMAR JAPON CO., LTD. CEO
ミャンマー・日本・バンコクで発行するビジネス情報誌「MJ Business」、英語・緬語ビジネス情報誌「MJ + plus」の発行人。ミャンマーの政財界や日本政府要人に豊富な人脈を持ち、ビジネス支援や投資アドバイスも務める。日本ブランドの展示・販売プロジェクト「The JAPAN BRAND」主宰者。一般社団法人日本ミャンマー友好協会副会長、公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会特別委員、ヤンゴン和僑会会長、UMFCCI(ミャンマー商工会議所連盟)、ヤンゴンロータリークラブ所属。