【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

<2019年5月号>Myanmar Thilawa SEZ Holdings Public Co., Ltd. 会長、Dagon Group of Companies 会長 ウィン・アウン氏

好調が続くティラワ経済特区
新たな都市が日々成長を続ける

今回のテーマ  ティラワ経済特区の開発を進めるミャンマーの優良企業

ウィン・アウン氏 [U Win Aung]

Dagon Group of Companies会長、Myanmar Agro Exchange Public Limited会長、Golden Land East Asia Development Limited(GLAD)会長、そしてMyanmar Thilawa SEZ Holding Public Co., Ltd.会長。2011年から16年までミャンマー商工会議所の会頭を務めたほか、2013年から14年にはAPECビジネス諮問委員会(ABAC)の会長を務めるなど、要職を歴任している。

日緬の官民が出資するティラワ
ミャンマー側企業の代表を務める

永杉 本日は、2011年から16年までミャンマー商工会議所会頭であり、多くの企業において要職を務めるウィン・アウンさんにお話をうかがいます。今回はそのなかでも日本との関係が深く、ヤンゴン証券取引所にも上場するMyanmar Thilawa SEZ Holdings Public Ltd.(以下MTSH)会長としてのお話を中心にお聞きしたいと思います。ティラワ経済特区にはMTSHのほか、Myanmar Japan Thilawa Development Ltd.(以下MJTD)などの企業が関わっており、読者には構造を理解できない方も多いと思います。改めて簡単にご説明いただけますでしょうか。

ウィン ティラワ経済特区の開発・運営を手がけるMJTDは、日本とミャンマー両国が出資しています。割合は日本が49%でミャンマーが51%。日本側の内訳はJICAが10%、三菱商事・丸紅・住友商事が出資するMJTDが39%。一方、ミャンマー側の内訳は、ミャンマー政府が関わるThilawaSEZ Management Committeeが10%、ミャンマーの民間企業9社が中心になって設立されたMTSHが41%を出資するという構造です。私はこのMTSHの会長を務めています。

永杉 MTSHを構成する9社にはどのような企業が参加しているのでしょうか。

ウィン 9社のうちの一つで、私が経営するGolden Land East Asia Development社は建設・貿易などを手がけています。ほかにも石油関係、農業関係など幅広い企業が参画。また、MTSHは9社だけではなく、株式を一般公開していることも特徴で、9社はそれぞれ5%ずつ計45%を出資し、残り55%は一般株主1万7990名で構成されています。
 当初、MTSHはティラワ経済特区への投資のみを目的として設立されましたが、現在では株主の意向もあり、他事業への投資も行うようになりました。またMTSHは、ミャンマー政府との共同出資で、ThilawaProperty Development Company(以下TPD)という不動産開発会社を設立するなど成長を続けています。

ゾーンBの販売は好調に推移
住宅地・商業地の開発も進む

永杉 ティラワ経済特区の現状をお聞きします。ゾーンAはほぼ完売していると認識しておりますが、ゾーンBはいかがでしょうか。

ウィン ゾーンBの開発は3つのフェーズに分けて行っています。101ヘクタールを開発する第1フェーズはすでに78%が成約。それに続く形で77ヘクタールを開発する第2フェーズは38%が成約に至っています。第3フェーズは現在インフラ工事の最中です。ゾーンAに引き続き好調といえるでしょう。なお、ゾーンAとBそれぞれの進出企業のうち、約半数となる54社が日系企業。残り半数は世界18ヵ国の企業となっています。

永杉 好調の要因はどこにあるとお考えですか。

ウィン 電力、給水・排水などハード面の整備に加え、進出企業をサポートするワンストップサービスなど、ソフト面も充実していることが挙げられます。また、経営の透明性を高めたことも好感を持たれていると考えています。

永杉 一方で、ヤンゴンから離れているため、一般労働者の確保が困難なことや高い技術を有した労働者が不足しているといった問題もあるかと思います。これらについてはどのようにお考えですか。

ウィン まず、労働者の技術力向上についてですが、トレーニングセンターが順調に機能しており、参加企業からはおおむね満足しているという声が聞かれます。今後、工場の稼働が増えれば、現場で高い技術を習得した人材がさらに増えるでしょう。
 労働力確保については、交通と住宅双方の面から改善を図っています。まず、ヤンゴン市内から通う労働者に対しては専用のバスを走らせるトライアルを実施。今後は増便が検討されています。一方、ティラワに住む労働者のため、住居・商業エリアに寮が建てられました。現在は3棟が完成済みで1800人が居住可能。将来は9000人が住める規模になる予定です。

永杉 住居・商業エリアについて、詳しく教えてください。

ウィン ティラワ経済特区は単なる工業団地ではありません。住居や商業地なども含む、新たな都市開発構想なのです。そこで現在行われているのが住居・商業エリアの開発。前述の不動産開発会社TPDがMJTDから35ヘクタールの土地を購入して、開発を行っています。日系大手ホテルチェーンのスーパーホテルもこのゾーン内に開業しました。今後は、コンドミニアムや戸建て住宅の開発も行われます。

計画総面積は2400ヘクタール
国の発展に寄与する開発を推進

永杉 ティラワの都市開発構想は最終的に2400ヘクタールにもおよぶと聞いています。本当にそこまで大規模なものになるのでしょうか?
 また、MTSHの将来像についてもあわせてお話しください。

ウィン 2400ヘクタールの開発の中には河川や池、村などが含まれるため、適切に行わなければいけませんが、需要に応じて開発を続けていきます。我々の将来像は、利益だけを追求するのではなく、あらゆる観点から貢献していく姿勢が大切だと考えています。ご存知の通り、ティラワの開発は公共性が高い事業です。もちろん株主への還元も重視しますが、国の発展という重要な責務を担っていることを常に意識しなければいけません。

永杉 最後に、ミャンマーと日本両国の関係についてのお考えをお聞かせください。

ウィン 日本は常にミャンマーのよき友人でいてくれています。第二次大戦後のミャンマー独立の機会を与えてくれ、2011年の民政移管後はさらに関係が深くなっています。現在はラカイン州の問題でヨーロッパから厳しい目を向けられ、なかには誤解と言える論調もありますが、日本は冷静に状況を理解してくれています。今後もこのような関係が継続してほしいと願っています。

永杉 ティラワ経済特区の開発は日緬両国にとって大変重要なプロジェクトです。ティラワを中心に両国の国民が豊かさを享受できるよう、成功を心よりお祈りしております。本日はお忙しい中ありがとうございました。

永杉 豊[NAGASUGI YUTAKA]

MYANMAR JAPON CO., LTD. CEO
ミャンマー・日本・バンコクで発行するビジネス情報誌「MJ Business」、英語・緬語ビジネス情報誌「MJ + plus」の発行人。ミャンマーの政財界や日本政府要人に豊富な人脈を持ち、ビジネス支援や投資アドバイスも務める。日本ブランドの展示・販売プロジェクト「The JAPAN BRAND」主宰者。一般社団法人日本ミャンマー友好協会副会長、公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会特別委員、ヤンゴン和僑会会長、UMFCCI(ミャンマー商工会議所連盟)、ヤンゴンロータリークラブ所属。