【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

<2019年3月号>労働・入国管理・人口統計省 テイン・スウェー大臣

今回のテーマ  ミャンマー人労働者を管理する省庁

テイン・スウェー氏 [U Thein Swe]

Ministry of Labour, Immigration and Population
1949年イェナンジャウン生まれ。防衛大学に入学し、防衛学、法学のディプロマを取得。1971年陸軍入隊。2003年除隊。大統領府を経て、2004年から2011年まで運輸大臣。その後政府要職を歴任したのち、2016年3月より 労働・入国管理・人口統計省大臣。

2018年は約20万人の労働者が外国で就労
各国との覚書締結が進み今後も増加の見通し

海外で働くミャンマー人が増加
大多数がタイに就労する現状

永杉 本日は日本でも注目される外国人労働者に関する省庁、労働・入国管理・人口統計省のテイン・スウェー大臣にお話をうかがいます。早速ですが、海外で働くミャンマー人労働者に関する数値データを教えてください。

テイン 2017年に外国で働いた労働者総数は16万1897名でした。18年のデータは1月から10月までですが、すでに19万2504名と増加傾向にあります。就労先の国は、タイ、マレーシア、シンガポール、韓国、日本、UAE、カタール、マカオ、ヨルダンの9ヵ国がメイン。なかでもタイが圧倒的多数で、17年は総数約16万人のうち、14万8942名がタイでした。18年も多くの労働者がタイで働いています。

永杉 海外で働く労働者の総数は増加傾向なのですね。理由はどこにありますか。

テイン  各国政府との間で労働者に関する覚書締結が進んだことが大きな理由と考えます。かつては正式な手続きを経ずにタイで働く労働者が多くいましたが、現在はタイとの間でMOU(了解覚書)が締結され、数値に残る形で働く人が増えたことが増加につながったと考えます。覚書は日本や韓国とも結ばれましたので、今後も増加の流れは続くでしょう。

永杉 ミャンマー国内には外国人労働者の送り出し機関は何社あるのでしょうか。

テイン 現時点で外国人材紹介ライセンスを持つ企業は261社です。2017年は245社でしたので微増ですが、毎年増減があります。我々行政としても管理監督を強化しており、法令が遵守されていない企業のライセンスを取り消すなどの処分を行うこともあります。

日本での就労者数は5番目
増加の一方で問題も発生

永杉 日本で就労するミャンマー人労働者の現況を教えてください。

テイン 2017年は3,331名、18年1月から10月までで3,135名が日本で働いており、国別の就労者数ランキングでは5位となっています。他国と比べると多くありませんが、1990年から2016年までの数値すべてを合わせても5142名ですので、近年数値は大幅に増加しています。

永杉 昨年10月に訪日されましたね。どのような公務を行われたのでしょうか。

テイン 日本のNPO法人であるアジア環境技術推進機構との間で、職業訓練校設立に関するMOUの締結が主な目的でした。さらに、ミャンマー人労働者との面会や受け入れ先の日本企業の視察も行いました。

永杉 MOU締結や労働者数増加などポジティブな話題がある一方、日本に来た労働者が職場を無断で変えたり、定められた就労期間を超えて不法に働くという問題も発生しています。

テイン ミャンマー人労働者が日本に行く際、エージェントに借金をするケースがあります。飛行機のチケット代やさまざまな手数料などを含め、就労開始時点で400~500万円程度の借金を背負うこともあると報告されています。これを返済するために、より給料の高い職場へ無断で移ったり、期間を超えて働いたりするケースが発生するようです。
 問題の原因はさまざまですが、日本側のエージェントからミャンマーのエージェントに支払う手数料が定められていないことも挙げられます。ダンピングが起こった結果、労働者の手数料に上乗せされる形になり、借金の負担が大きくなっているケースが存在します。両国のエージェントが協力して、このような事例を減らすために努力しなければなりません。

永杉 そうですね。私は日本の監理団体や受け入れ企業側にも問題があると考えます。2年ほど前、私が副会長を務める日本ミャンマー友好協会の事務局あてに、日本で働くミャンマー人女性から電話がありました。彼女もミャンマーで借金をして日本に就労したのですが、月々300ドル程度の手取りしかもらえないので助けてほしいとのことでした。こうした企業がいまだに存在するのは恥ずべきことです。
 一方、もちろん立派な企業もあります。兵庫県の加古川にあるプラント企業では、社長自らがミャンマーに来て面接、雇用し、業務に必要なCAD習得の費用も全額負担するという取り組みを行っています。さらに日本人と給料やボーナスを同じ水準にし、一年に2回ほど社長がミャンマーで労働者の家族に挨拶をするという企業も存在するのです。

テイン それは素晴らしい取り組みです。そのような企業が増えればミャンマー人も安心して日本に行くことができ、より優れた人材が日本に集まるようになるでしょう。

官民ともに良好な日緬関係
より活発な人材交流を望む

永杉 日緬はこれまで大変深く長い歴史を共有しています。今後両国の関係はどのようになるとお考えでしょうか。

テイン 両国は官民とも良好な関係を続けてきました。現在でも我が国は日本も含めたASEANプラス3との関係を強化しております。昨年10月からは日本人の観光ビザ免除もスタートしましたし、ビジネスだけでなく民間交流も今後より活発化していくでしょう。

永杉 昨年末、日本では入管法の改正が行われました。国内の人材不足に対応するため、2025年までに34万5000人の外国人労働者を日本に迎えるためのものです。ミャンマーは仏教徒の国で、国民は日本人と考え方やマインドも近いため、仕事をしっかり教えれば日本の企業やミャンマーにとって優れた人材となるはずです。
 弊社には以前からミャンマー人労働者を日本に送り出す仕事のオファーを多数いただいておりました。しかし、いたずらに引き受けて好ましくない企業にミャンマー人を送り出すような結果にならないよう、すべてお断りしていました。しかし、今後は両国のためにも、日本の優良企業とアライアンスを組み、人材を送り出す事業を検討していきます。

テイン 日本で働くミャンマー人労働者は、他国と比べると決して多くはありません。私としては、ミャンマー人労働者が技術やサービスに秀でている日本でより多く働けるような未来が来れば幸いだと考えています。

永杉 ぜひミャンマーと日本両国の繁栄のためにも、今後ともご尽力いただければと思います。本日はお忙しい中ありがとうございました。

永杉 豊[NAGASUGI YUTAKA]

MYANMAR JAPON CO., LTD. CEO
ミャンマー・日本・バンコクで発行するビジネス情報誌「MJ Business」、英語・緬語ビジネス情報誌「MJ + plus」の発行人。ミャンマーの政財界や日本政府要人に豊富な人脈を持ち、ビジネス支援や投資アドバイスも務める。日本ブランドの展示・販売プロジェクト「The JAPAN BRAND」主宰者。一般社団法人日本ミャンマー友好協会副会長、公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会特別委員、ヤンゴン和僑会会長、UMFCCI(ミャンマー商工会議所連盟)、ヤンゴンロータリークラブ所属。