【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

<2018年9月号>Mango Advertising Group 共同設立者 Mango Marketing Service マネージングダイレクター リン・リン・ティン・トゥン氏

今回のテーマ  ミャンマーの広告業界をリードする代理店

リン・リン・ティン・トゥン氏 [Daw Lynn Lynn Tin Htun]

Mango Advertising Group 共同設立者
Mango Marketing Service マネージングダイレクター

マーケティング業界で25年におよぶ経歴を有し、2004年にMango Advertising Groupを立ち上げる。数多くの企業運営に携わり、現在はMango Marketing Service社のマネージングダイレクターのほか、National Tower Development社、Asia Business Synergy Public社などの取締役も務める。また、NPO法人Myanmar Business Executive Associationの会長職を務めるなど、幅広く活動を続けている。

世界的企業の広告をミャンマーで展開
ミャンマー人の好みを広告に反映させる

経済制裁をきっかけに設立
グループ5社の広告企業に成長

永杉 本日はMango Advertising Group共同設立者であり、Mango Marketing Service マネージングダイレクターのリン・リン・ティン・トゥンさんにお話を伺います。まずは、ミャンマー最大級の広告代理店である御社の設立経緯を教えてください。

リン 当社は2004年に設立しました。当時ミャンマーは国際社会からの経済制裁のさなかで外資系企業が次々と撤退。それは広告業にもおよび、当時はしっかりとした事業実績を持つ広告代理店がほとんど存在しない状況にまで陥っていました。そこで、私とパートナーであるDaw Aye Hnin Sweで広告代理店の設立を決意したわけです。
 Daw Aye Hnin Sweは、外資系広告代理店のBates Advertising社に勤務した実績もありましたし、私はFMCG(日用消費財)に関するマーケティングの経験がありましたので、我々2人で協力してスタッフを集めれば、市場のニーズに応えられるという確信を持っていました。当初は7人のメンバーからスタートしましたが、現在はグループ企業を5社を有し、社員数は200人を超える企業となっています。

永杉 5社におけるリンさんの役割について教えてください。

リン 「Mango Marketing」「Mango Media」「Mango steen PR」「Wave Digital」「Passion Point」の5社があり、私はグループ全体を見ています。各企業にはゼネラルマネージャーを配置し、必要に応じて私がサポートをする形となっています。

永杉 5社のうち、デジタルマーケティングを中心に行う「Wave Digital」社について教えていただけますでしょうか。

リン 広告業界は近年大きな変革が訪れています。これまでは、テレビ、ラジオ、紙媒体、屋外広告のみでしたが、現在はデジタルマーケティングの割合が増えています。Wave社はデジタルマーケティングに特化し、クライアントと消費者をつなげる業務を行っています。

永杉 つまり先進的なマーケティングも実施されているのですね。私どもは情報誌を発行しておりますが、オンラインメディアにも注力しており、SNSのインフルエンサーとしても評価いただいております。ところで現在、御社はミャンマーNo.1の広告代理店と理解しております。成功の秘訣を教えてください。

リン 顧客の商品やサービスの魅力をどのように最大化するかという点に対して、誠実に向き合っていることが一つ。そして、もう一つはミャンマー人主体の企業ですので、ミャンマー人の感性や趣向を熟知していることが挙げられます。さらに設立から15年ほど経過し、各企業から強い信頼を得られるようになったのも成功の要因ではないでしょうか。

地場企業である強みを武器に世界的企業もクライアントに

永杉 御社の取引状況を教えてください。
まず、日系企業との取引はいかがでしょうか。

リン 以前からお取引をしているのは、エースコックさんです。同社のインスタントラーメンを全国に広めるお手伝いをしています。もう一社はスポットでの契約ですが、ユニ・チャームさんのナプキンやおむつなども広告を請け負っています。以前、東芝さんともお付き合いをしたことがありますが、電通さんのように大手日系広告代理店も進出していますから、多くの日系企業はそちらとお付き合いをされるようです。

永杉 一方で、世界的な一般消費財メーカーであるユニリーバのミャンマー国内における広告業務を受注されていますね。

リン ユニリーバさんは大切な顧客の一つです。2011年から12年頃にかけてミャンマーに進出を開始しましたが、当初から契約をしています。現在、同社は11種類ほどの製品を販売していますが、そのうち9種類は当社が広告を担当。広告展開には2種類あり、Sunsilk、Clear、Dove、POND'S、Knorrは海外で撮影したものをミャンマー向けにローカライズする業務を行っています。一方、石鹸のLifebuoy、歯磨きのSignal、スキンケアのFair & Lovelyに関しては、当社が撮影も行っています。どのような方法であれ、ミャンマーの消費者に向けて効果的に訴求できるよう広告をコントロールすることが重要だと考えています。

永杉 広告業界全体についてお聞きします。事業の概況はいかがでしょうか。

リン ミャンマーの広告企業の技術的側面は年々上がっているといえます。一方、ミャンマー国内の景気はあまり良いとは言えないと思います。そのため、一部企業が広告宣伝費を削減していることは否めません。

永杉 そのような状況の中、どのように成長するかという将来像を教えてください。

リン 既存広告に加え、近年はデジタル広告も活発です。我々がすべきは、どの媒体であっても顧客にとって効果的な提案をし、顧客の求めに100%応じられるように会社全体をスキルアップさせていくことが大切です。また、弊社で働く若い世代の育成も大事なミッションと考えております。

日緬の関係はより深く
日本語習得にも興味あり

永杉 日本とミャンマーの関係についてお聞かせください。両国の関係は今後どのようになっていくとお考えですか。

リン 日本とミャンマーの関係は昔から非常に良好です。JICAをはじめとするさまざまな組織がいつもミャンマーに援助してくれていることを、ミャンマー人はしっかりと理解しています。現在も日本はインフラ関係の大型プロジェクトに対してアドバイスをしてくれたり、実際に手がけたりしているので、今後ますます多くの日系企業がミャンマーに進出してくるでしょう。
 文化的側面についても、日本に対して昔から好印象を抱いています。近年、韓国の文化がミャンマーで紹介されることが増えていますが、かつてのように日本の文化がもっとミャンマーに入ってくれば、ミャンマー人は積極的に受け入れると思います。ミャンマー人は、首相夫人の安倍昭恵さんからタレントの森崎ウィンさんまで、日本に関係する人や物事が大好きですから。
 実は今後、個人的に日本語を勉強しようと考えています。日系企業の進出が続く見通しがあることも一つの理由ですが、日本から学べることが多いと思うからです。例えば世界中の経営者が意識している「カイゼン」も興味深い言葉だと思います。商品やサービスの品質をどのように向上させていくかは、日本から積極的に学ぶ必要があり、ミャンマーの企業は今後、より日系企業と協業していくべきでしょう

永杉 ミャンマー屈指の広告代理店のトップに、日本語を勉強しようと考えていただけることは大変うれしいお話です。ご指摘の通り、今後日系企業の進出が相次ぐことになるでしょう。日本の優れた製品やサービスをミャンマーに広く紹介していくため、お互いが力を尽くしていければうれしい限りです。本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

永杉 豊[NAGASUGI YUTAKA]

MYANMAR JAPON CO., LTD. CEO
ビジネス情報誌「MYANMAR JAPON BUSINESS」、生活情報誌「ミャンジャポ!」、英語・緬語ビジネス情報誌「MYANMAR JAPON +plus」などの発行人。ミャンマーの政財界や日本政府要人に豊富な人脈を持ち、ビジネス支援や投資アドバイスも務める。一般社団法人日本ミャンマー友好協会副会長、公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会特別委員、UMFCCI(ミャンマー商工会議所連盟)、ヤンゴンロータリークラブ所属。