【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

<2018年7月号>Aung Thein Thann Printing Station ゼネラルマネージャー チョー・テイミン氏

今回のテーマ  多種多様な出版物を手がけるミャンマーの印刷企業

チョー・テイミン氏 [U Kyaw Htay Min]

Aung Thein Thann Printing Station ゼネラルマネージャー
1963年ヒンタダ生まれ。85年ヤンゴン大学卒業(地質学士)。86年から92年まで印刷会社San Nyunt Oo で実習生として印刷の基礎を学ぶ。92年からシンガポールで地質に関連するサイトエンジニアとして5年間従事。98年に帰国後、Aung Thein Thann Printing Station を設立。ミャンマー印刷出版協会で局長を務めている。

ミャンマーのプロユース印刷機は日本製が主流
紙媒体の需要は昔と変わらず高いまま

ミャンマージャポンの印刷を担当
機内誌採用を誇りに思う

永杉 本日はミャンマーの雑誌をはじめとする多数の出版物、広告等の印刷を手がけているAung Thein Thann Printing Stationのチョー・テイミンさんにお話をうかがいます。我々ミャンマージャポンも創刊から5年にわたり御社に印刷をお願いしており、品質が非常に高いと認識しております。

チョー お褒めいただきありがとうございます。実は先日もビジネス旅行で航空機に搭乗した際、機内誌として「MYANMARJAPON+plus」が目の前のポケットに入っており、とても誇りに感じました。と同時に、責任感の重さに身が引き締まる思いでした。

永杉 ご旅行中にもかかわらず、機内でも緊張させてしまい大変失礼しました(笑)。ところで、御社の設立年と設立に至った経緯を教えてください。

チョー 設立は1998年1月1日です。私はヤンゴン大学を卒業後にSan Nyunt Ooという印刷会社に実習生として入り、5年間印刷業務の基礎を学びました。その後、大学で地質学を修めたこともあり、92年からシンガポールで地質に関するサイトエンジニアとして従事していました。当時から資金を蓄えてミャンマーで会社を立ち上げることを目標としていたのですが、元々興味があり、すでに技能も身につけていた印刷業を立ち上げることを決めたのです。本好きな国民性ですから、ミャンマーにおいて印刷物がゼロになることはないだろうという考えもありました。
設立から1年間はほとんど受注がなく、大変な思いをしました。各企業をまわって注文を取り付け、何とか軌道に乗せることができました。当時発注してくれた企業とは今もよいお付き合いを続けさせていただいています。

デジタルの影響はあるが紙媒体の需要は高い

永杉 印刷会社を経営する上で、どのような点を重視していますか。また、将来に向けたビジョンをお聞かせください。

チョー まずはニーズをしっかりと聞くこと。そして品質と納期を最優先することを重視しています。また、受注量に関わらずすべての顧客に対して均一の品質とサービスをご提供することに力を入れております。
将来的には印刷品質をさらに上げること。また、パッケージ事業への業務拡大や、高い技術を持つ外資系企業と提携して業務を進めたいと考えております。

永杉 昨今、ミャンマー国内の景況感は必ずしも好調とはいえないと思うのですが、ミャンマー印刷業界全体の景気はいかがでしょうか。

チョー ミャンマーの印刷物として代表的なものは「ジャーナル」ですが、これは近年売上が低下しつつあります。背景においてデジタルの影響は否定できません。ですから、ジャーナルを専門に印刷する企業は苦戦しているのが現状と考えられます。
一方、紙媒体全体が衰退しているかというとそうではありません。当社はローカル雑誌7誌と契約しているほか、ミャンマージャポンさんをはじめとした外国企業の雑誌や冊子などを多数印刷しているため、売上の落ち込みはありません。もちろん、今後も最新機材を導入するなど、企業努力を怠ってはいけないと考えております。

品質、省電力、価格が日本製品の大きな強み

永杉 御社の印刷物は日本のクオリティと同等だと思っていましたが、それもそのはずで日本製の機械を導入していると聞きました。どのような製品を導入されているのか、そしてなぜ日本製を選ばれたのかを教えてください。

チョー もっとも新しい機械は、2016年に導入した富士ゼロックスの印刷機です。ただ、当社だけが日本製品を使っているわけではありません。ミャンマー国内の印刷業者は大半が日本製の印刷機を導入しているのです。日本以外に印刷機器が発達している国としてドイツが挙げられ、日本製品と同様に高品質な仕上がりが期待できるのですが、一方でドイツ製は電力消費量が過大なことと本体価格が高価であることから、省電力で高品質な日本製印刷機に需要が高まっているのです。

永杉 ミャンマーの印刷業界でも日本製品が広がっているのはうれしいです。とはいえ、価格は決して安くはないと思うのですがいかがでしょうか。

チョー 86年に初めてこの業界に入った際にも、その会社で使用されていたのは小型の日本製印刷機でした。その後、大型のオフセット印刷機も輸入され、ミャンマーの印刷業界で日本製品の導入が加速しました。私がこの会社を立ち上げて最初に購入した機械も、もちろん日本製です。当時は200万Ks くらいでリーズナブルだと思ったのを覚えています。今は当時よりも値上がりはしましたが、日本製に対する信頼は変わりません。
日本製品に支持が集まっている理由は、品質、省電力、価格のバランスだけではなく、古くから両国の仲が良く、強い絆があったことも関係していると思います。我々の業界だけではなく、日本は昔からミャンマーを各方面でサポートしてくれています。今後も両国の関係はより良くなっていくでしょうし、そうなるように私も願っています。

永杉 両国の信頼関係を礎として、我々の誌面が印刷されているというのは大変喜ばしい話です。今後もミャンマージャポン読者の皆様に高品質な誌面をお届けできるよう、ご協力をいただけましたら幸いです。本日はご多忙の中、ありがとうございました。

永杉 豊[NAGASUGI YUTAKA]

MYANMAR JAPON CO., LTD. CEO
ビジネス情報誌「MYANMAR JAPON BUSINESS」、「MJビジネスバンコク版」、ヤンゴン生活情報誌「ミャンジャポ!」など4誌の発行人。英語・緬語ビジネス情報誌「MYANMAR JAPON+plus」はミャンマー国際航空など3社の機内誌としても有名。日本ブランドの展示・販売プロジェクト「The JAPAN BRAND」ではTV番組を持つ。ミャンマーの政財界や日本政府要人に豊富な人脈を持ち、ビジネス支援や投資アドバイスも務める。 一般社団法人日本ミャンマー友好協会副会長、公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会特別委員、WAOJE(旧和僑会)ヤンゴン代表。