【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

<2017年11月号>UMFCCI(ミャンマー商工会議所連盟)会頭 Zaw Min Win 氏

今回のテーマミャンマーの経済発展を支える商工会議所連盟会頭

ゾウ・ミン・ウィン氏 [Mr.Zaw Min Win]

UMFCCI(ミャンマー商工会議所連盟)会頭
1970年ヤンゴン大学で理学修士号取得。Golden Land East Asia Development Ltd. 副会長、Thilawa SEZ Holding Public Ltd. の取締役をはじめ、多くの企業の経営に携わる。また、ASEAN Business Advisory Council やEast Asia Business Councilなどにも積極的に参加。2016年10月よりUMFCCIの会頭を務めている。

貿易赤字解消と熟練工の育成が急務
ミャンマーの利点を忘れずに他国と競いたい

貿易赤字解消に向けた官民一体の取り組み

永杉 本日はミャンマーの経済人の中でも著名なゾウ・ミン・ウィン商工会議所連盟(UMFCCI)会頭にお話を伺います。早速ですが、ミャンマー経済にとってきわめて重要な役割を果たすミャンマー商工会議所についてお話しいただけますでしょうか。

ゾウ こちらこそ、本日はミャンマーでも有名なビジネス情報誌のMYANMAR JAPONに取材していただきとても名誉なことです。UMFCCIは、ミャンマーの民間企業が有益にビジネスを進めていけるようさまざまなサポートをしています。設立は1919年で非営利及び非政府組織として活動を続けています。我々はチーム制をとっており、州と管区で16チーム、境域で9チーム、そのほかに貿易及びサービス業チームとして52チームがあり、計77チームに分かれて活動をしております。加入企業は貿易業、製造業、サービス業をはじめとして3700社あり、会員数は約1万3600人にのぼります。さらに毎月100名以上が新たに加入しております。

永杉 会頭は商工会議所連盟のトップとして、ミャンマー経済の最前線をご覧になっていることと思います。外国投資が続き国内経済は発展する一方で、貿易赤字やインフレが発生するなどの問題も露呈しています。ミャンマー経済の現状と課題についてお考えをお聞かせください。

ゾウ 新政権発足以後、法律改正等の影響でミャンマー経済が停滞しているという問題があります。2000年のGDP 成長率は13.7%でしたが、2001年から2012年は平均5.6%に減少。その後8.4%程度に上昇しましたが、2016年は再び6.3%に低下しています。また、貿易赤字が大きいのも問題と言えるでしょう。
そもそもミャンマーの輸出が芳しくないのは、輸送にかかる費用が大きいことが挙げられます。現在、ミャンマー産製品の品質向上とともに、輸送費の削減に力を入れている最中です。また、国家輸出戦略(National Export Strategy)と国家プロモーションプログラム(NationalPromotion Program)を設定し、スイスのジュネーブにある国際貿易センター(ITC)の協力のもと輸出額増加を目指す取り組みを行っています。 また、政府も政策の見直しをはじめとした、輸出額増加に向けた取り組みを行っています。我々は毎月ミン・スエ副大統領と会談の機会を持ち、輸出拡大の施策を提案しています。輸入品を減らして輸出を増やすことができれば、現在年間7%程度のインフレ率も次第に収まっていくはずです。

永杉 一方で、電力不足をはじめとしたインフラの脆弱さという問題もあります。これについてはどのようにお考えでしょうか。

ゾウ インフラについてはあらゆる面で不足していると言えます。電力や交通はもとより、熟練工が少ないという人的インフラ不足という問題も挙げられるでしょう。ただ、熟練工についてはパートナー国やUSAID、GIZ、また日本のJICA、JETRO、AOTS HIDA、Myanmar-Japan Centerなど諸外国の組織による支援のもと人材育成に力を入れているほか、国内ではミャンマー教育省や工業省、ヤンゴン管区政府によるトレーニングも行われています。私の見通しでは2018年度には人的インフラ不足は解消されるのではないかと考えております。

永杉 次にアセアン域内のヒト・モノ・カネの動きが自由化するASEAN経済共同体(AEC)についてお聞きします。ミャンマーがAECに組み込まれることで、国内経済にどのような影響があるとお考えでしょうか。

ゾウ AECメンバーとして名を連ねることで、有益になることもあれば、困難な挑戦に立ち向かう局面も出てくるでしょう。先程お話ししたことと通じますが、ヒトの移動が活発になれば、我が国の熟練工不足がリスクになります。また、製品の値段や品質もさらなる向上が必要です。ほかにも、インフラ整備、貿易環境の改善、税制環境の整備などにも対応しなければいけません。これらすべてについて、我々は政府に提案を行い、改善を促しております。
一方、ミャンマーの利点にもしっかりと目を向けておくことも大切です。我が国にはまだまだ多くの土地がありますし、資源も豊富です。海外企業と提携すれば高品質な農作物が作れるようになるなどの伸びしろがあると言えるでしょう。さらに、他国と比べると人件費が安いことも利点です。これらの良い側面を意識しておくべきと考えています。

日系中小企業の進出を歓迎
日本との緊密な関係を望む

永杉 続いて、日系企業についてお聞きします。近年、かつてないほどに日系企業からのミャンマーへの投資意欲が高まっています。今後どのような企業に進出してほしいとお考えでしょうか。そして、日系企業が他国資本の企業と比べて優れていると思われる点があれば挙げていただけますでしょうか。

ゾウ ティラワSEZだけでも、すでに40社以上の日系企業が進出していますね。日本からの投資はどの業種であっても大歓迎ですが、特にインフラ企業、運送関連企業、港湾関連企業、農業関連企業、さらに大手企業をサポートできる中小企業の進出を歓迎したいです。例えば部品を生産する企業であるとか、食品パッケージを手がける企業などです。 一方、資本金が少ないミャンマーの中小企業のために、小型の工場を建設してレンタルする事業を行う企業なども望ましいです。ミャンマーの企業は95%が中小企業ですから、お互いがウィンウィンの関係になれると思います。 日系企業については、入念な準備をして決めたことを最後までやり遂げる強さがある印象を持っています。ティラワSEZを例にとっても、まずは電気、上水、排水などのインフラを万全にしてから事業を開始しました。実際に始まってからの経営を見ていても、大変素晴らしい実績を上げていると思います。

永杉 日緬両国は歴史的にとても深い縁を持っています。今後の両国の関係はどのようになるとお考えでしょうか。

ゾウ 両国は外交関係樹立から60年以上が経過しました。私個人の考えですが、今年になってさらにお互いの信頼関係が深まったように感じています。日本政府からはODA のほか、技術や金融に関する援助もいただきました。このような支援をいただいたことを、ビジネスマンとして、そして一ミャンマー国民として感謝を申し上げたいと思います。今後、さらに関係が深まり、ともにビジネスをして成長していければと考えています。

永杉 ティラワSEZのような成功モデルが増え、今後も両国がより一層緊密になっていくことを私も期待しております。本日はご多忙の中お時間をいただきありがとうございました。

永杉 豊[NAGASUGI YUTAKA]

MYANMAR JAPON CO., LTD. CEO
ビジネス情報誌「MYANMAR JAPON BUSINESS」、「MJビジネスバンコク版」、ヤンゴン生活情報誌「ミャンジャポ!」など4誌の発行人。英語・緬語ビジネス情報誌「MYANMAR JAPON+plus」はミャンマー国際航空など3社の機内誌としても有名。日本ブランドの展示・販売プロジェクト「The JAPAN BRAND」ではTV番組を持つ。ミャンマーの政財界や日本政府要人に豊富な人脈を持ち、ビジネス支援や投資アドバイスも務める。 一般社団法人日本ミャンマー友好協会副会長、公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会特別委員、WAOJE(旧和僑会)ヤンゴン代表。