【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

<2017年9月号>ホテル・観光大臣 オウン・マウン氏

今回のテーマ自身もホテルを経営。ミャンマー観光を牽引する重鎮

オウン・マウン氏 [U Ohn Maung]

ホテル・観光大臣
1947年、シャン州ニャウンシュエ生まれ。インレー湖近くでゲストハウスを経営していた経歴を持ち、89年に国民民主連盟(NLD)入党。90年の選挙で議席を獲得して国政の世界に入る。その後、インレー・プリンセスリゾートの経営などで成功を収め、2012年から再度NLDに入党した。

順調な伸びを見せるミャンマーの観光業界
さらなる発展に日本との協力体制を望む

豊富な観光資源を有するミャンマー
来緬観光客数の目標は748万人

永杉 本日はミャンマーホテル・観光省のオウン・マウン大臣にお話を伺います。早速ですが、ミャンマー観光業界の現状についてお話いただけますでしょうか。

オウン 2016年にミャンマーを訪れた観光客は290万人でした。一方、17年は1月~5月だけで150万人と、前年比125%の伸びを見せています。内訳はASEAN諸国が68%、西ヨーロッパが19%、北米が7%となっています。日本人だけですと、2016年でおよそ10万人と、全体の3%程度に伸びています。業界全体としてみれば、所轄官庁やミャンマー観光連盟(MTF)などが官民一体となって施策を講じていることもあり、順調に成長していると言えるでしょう。

永杉 ミャンマーは経済だけでなく、観光面でも注目を集め始めているということですね。今後のさらなる発展に向けて、具体的な目標などはあるのでしょうか。

オウン ミャンマーは以前、ノルウェー政府とアジア開発銀行の支援で、観光マスタープランを作成しました。その中で2020年に来緬観光客数748万人という目標を掲げています。プランでは観光に関わる38のプロジェクトが設定されていて、それらを順次進めながら我が国の魅力を高める取り組みを行っています。

永杉 2020年までに748万人というと、17年予想比2倍以上という目標値です。達成の見通しはいかがでしょうか。

オウン 達成するだけでなく、上回るのではないかと考えています。例えば、観光アライバルビザ発行も間もなく始まる予定ですし、バガンを始めとした主要観光地付近の空港への直行便誘致なども積極的に進めています。我が国の観光といえば遺跡が有名ですが、北に行けば雪山、南に行けばビーチもあり、豊かな自然を有しています。また、多民族が織りなす文化の多彩さは他の国では中々見られません。こうした観光資源を生かす施策を着実に行っていけば、必ず目標を達成できると信じています。

永杉 バガンのお話が出ましたが、私が今ミャンマーに住んでいる理由の一つはバガン遺跡を目にしたことといっても過言ではありません。一人の人間の人生を変えるくらいの力があの遺跡にはありますね。

オウン それはうれしいですね。バガンを気に入られたのならば、ラカイン州の古都ミャウーもぜひ訪れてほしいですね。こちらの遺跡はレンガではなく石でできているので、また違った趣を感じていただけるのではないでしょうか。ミャウーは2019年を目途にユネスコ世界遺産登録を目指しています。さらに、観光客誘致のためにミャウー国際空港の着工が決定いたしました。

永杉 承知しました。年内にもぜひ伺わせていただきます(笑)。ところで観光客誘致に向けた開発が進んでいるようですが、そのほかに開発の動きはありますか?

オウン まず、シャン州にあるインレー湖の玄関口であるヘーホー空港の拡張工事が決定しています。また、南部にあるメルギー諸島周辺への観光客誘致のため、モウラミャイン空港とコータウン空港の拡張も決定するなど、全国的に開発を進めています。

永杉 ミャンマーの観光が成長する一方、問題も顕在化してきています。特に取り沙汰されるのが宿泊コストの高さです。この問題について、どのようにお考えでしょうか。

オウン 宿泊費を下げるには、ホテルの数が増えて適切な競争が行われることが肝要です。現在ミャンマーには内外資合わせて1500軒のホテルがあり、総部屋数はおよそ6万室にのぼりますが、年内には7万5千室になる見通しです。ホテルやゲストハウスを営業するには政府の許可が必要ですが、その数は近年右肩上がり。近い将来、宿泊費は落ち着くことになるでしょう。

両国民が行き来する未来のため政府レベルの協力は不可欠

永杉 大臣は今年4月に栃木県日光市を視察されています。その目的と日光をご覧になった感想をお聞かせください。

オウン 日光には旅館や温泉、桜に加え、世界遺産である日光東照宮などの観光資源が揃っているので、それを肌で感じるために伺いました。視察にはミャンマーで温泉事業を営んでいる経営者3人にも同行してもらい、伝統文化や美しい自然を生かしながら観光客をもてなすホスピタリティを実際に体験してもらいました。また、農業観光はミャンマーも見習うべき点なので、日本一と称されるイチゴ農園も視察し、とても美味しかったのですが、一粒500円という値段には驚きましたね(笑)。

永杉 先程、ミャンマーを訪れる日本人は全体の3%程度に増えたというお話がありました。これをさらに増やすための施策等はありますでしょうか。

オウン まず、9月21~24日の日程で東京ビックサイトで開催される「ツーリズムEXPOジャパン」に参加することが決まっています。ンガパリなど、ミャンマーにある素晴らしいビーチを紹介することはもちろんですが、今回のイベントでは地方に住む民族の食や踊り、チン州で推進している民泊ツーリズムなど、我が国の新しい魅力も紹介したいと考えています。
また、日本の支援でネピドーに桜並木を作る計画も進行しています。初回の植樹イベントは今年の1月29日に開かれ、まずは100本を植樹しました。次回は来年の1月14日に行われ、今後2年ほどかけて1000本の桜を植える予定です。いつの日か、日本人がネピドーの桜を見に来てくれるようになったら素晴らしいですね。

永杉 日本の奈良時代の貴族行事が起源とされる、現代の大衆文化の一つに「お花見」があります。ミャンマーでも拡がれば嬉しい限りです。ところで、日本とミャンマーの間には長い歴史があります。大臣は今後の日本とミャンマーの関係について、どのようにお考えでしょうか。

オウン 日本は幅広い分野でミャンマーの発展に支援してくれています。観光分野においても、樋口建史・在ミャンマー日本大使がチン州を視察に訪れてくださるなどの協力を頂いております。しかし、現在ミャンマーと日本には観光に関する二国間の覚書等は締結されていません。ASEAN+3では観光の覚書がありますが、これを二国間のものに発展させ、より両国の関係を深めたいと思います。ぜひ日本政府にはこれを前向きに考えていただき、両国民がお互いの国を頻繁に行き来できるようになればよいと考えております。

永杉 本誌は日本政府関係者も多くご覧いただいておりますので、これをきっかけにぜひ実現に向かってほしいものです。日本人がミャンマーの遺跡や桜に心を動かされ、ミャンマー人が日本の世界遺産を楽しむといった未来が訪れることを私も強く願います。本日は公務ご多忙の折、ありがとうございました。

永杉 豊[NAGASUGI YUTAKA]

MYANMAR JAPON CO., LTD. CEO
ビジネス情報誌「MYANMAR JAPON BUSINESS」、「MJビジネスバンコク版」、ヤンゴン生活情報誌「ミャンジャポ!」など4誌の発行人。英語・緬語ビジネス情報誌「MYANMAR JAPON+plus」はミャンマー国際航空など3社の機内誌としても有名。日本ブランドの展示・販売プロジェクト「The JAPAN BRAND」ではTV番組を持つ。ミャンマーの政財界や日本政府要人に豊富な人脈を持ち、ビジネス支援や投資アドバイスも務める。 一般社団法人日本ミャンマー友好協会副会長、公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会特別委員、WAOJE(旧和僑会)ヤンゴン代表。