【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

<2017年6月号>ガンダマーOA & ビジネスソリューションズ チュー・チュー氏

今回のテーマ日本ブランドをミャンマーに紹介し続ける女性経営者

チュー・チュー氏[Kyu Kyu]

ガンダマーOA & ビジネスソリューションズ
マネージングダイレクター

1958年生まれ。1977年に夫と印刷やコピーなどの事業を開始、1989年に法人化する。現在はプリンターや複合機、プロジェクターなど事務機器を輸入、販売する商社。取り扱うブランドはコニカミノルタやパナソニックなど、日本ブランドが多い。個人としてはミャンマー女性ビジネス協会やミャンマー女性スポーツ委員会の役員を務めるなど、宗教、社会活動にも積極的。

「誠実さ」と「秩序」を持つ日本人の国民性日本人と日系企業の信頼につながっている

1951年創業の老舗事務機器商社 日系企業の製品を多く取り扱う

永杉 本日はお忙しいところお時間を作っていただきありがとうございます。早速ですが、ミャンマー国内においてオフィスソリューション事業を展開する御社についてお聞かせください。

チュー・チュー 創業は1951年のことです。私は二代目の経営者で、主人の両親がファミリービジネスとして立ち上げました。創業当初はもちろんコンピューターはありませんでしたから、ドイツのタイプライターブランドや、デンマークのオフィス機器ブランドの代理店としてスタートしたわけです。しかし、クライアント企業が新規オフィスを開設する際、必要となるオフィス機器をすべて当社が揃えられるようにするべく、少しずつ取扱いブランドを増やすことになりました。そして1989年に法人化し、今に至っています。

永杉 御社の取り扱いブランドを拝見すると、日本ブランドがとても多く見られます。日本製品についてどのような印象をお持ちでしょうか。

チュー・チュー おっしゃる通り、当社は日本製品を数多く販売しています。まず挙げられるのがコニカミノルタです。コピー機、プリンター、デジタルプレス(オンデマンド印刷機)を取り扱っています。パナソニックともお付き合いがあり、プロジェクターやプロユースのディスプレイを預かっています。また、デュプロの製品もミャンマーでとても人気があります。1分間に100枚程度という非常に速いスピードで印刷できるので、試験問題の印刷など、大量の印刷物を刷る必要がある企業や団体が購入してくれます。他にも、カシオやKIP、PLUS など、さまざまな日系企業とお取引させていただいています。
これらすべての日本ブランドに対して共通するイメージは、やはり「高品質」であること。代理店である私共も自信を持ってお預かりした製品を販売することができますね。

ミャンマーのビジネスチャンスはローカライズが鍵を握る

永杉 日本ブランドの製品を取り扱うことで御社が成長されたというのは、我々日本人としても大変うれしく思います。それでは今後ビジネスをさらに発展させるうえで、どのようなビジョンをお持ちでしょうか。また、成長著しい御社ですが、今後他のビジネスにも進出されるという計画はお持ちでしょうか。

チュー・チュー 創業当初から事務機器を扱っていますから、基本的には今の商売をしっかりと続けていきたいと考えています。一方で、扱うブランドが増えたことにより、異なるマーケットにも進出し始めています。当社はカシオのキャッシュレジスターやPOS システムを扱っていますが、これらの製品は小売店やレストランが対象です。現在注力しているのは、これらの製品のシステムをミャンマー語にローカライズすること。都市部ならば英語のレシートでも問題ないのですが、地方では英語を理解できない人も多いので、ミャンマー語フォントが組み込まれた製品を展開できれば市場がさらに拡大していくと思います。ミャンマー語は簡単ではありませんから苦労も多いですが、日本人の技術者とともに協力してプロジェクトを進めているところです。

都市と地方の格差が拡大 地方出身者に富を還元できるか

永杉 現在ミャンマーは著しい発展を遂げるとともに、インフレや経済格差などの問題も顕在化しつつあります。ミャンマーが抱えるこうした問題についてどのようなお考えを持っていらっしゃいますでしょうか。

チュー・チュー 経営者として頭が痛いのはチャットのレート変動です。政府との契約はドルで行うのですが、レートの変動により、契約時の代金よりも供給側が不利になることが多く、痛手を被ることも少なくありません。経営者として、しっかりとリスクヘッジを行う必要があるでしょう。
経済格差は都市部と地方の格差が深刻です。ただ、当社にも地方出身の人材が多くなってきています。優秀な人材にはどこの出身であれ多くの賃金が支払われますから、そうした人が地方に富を還元していけるようになればいいですね。しかし、根本的な地方の貧困を改善するためには、やはり政府の積極的な関与が求められます。政府には地方振興などの支援策を期待したいと思います。

見習うべき日本人の誠実さ 今後は草の根交流の充実も

永杉 先程お話いただいた通り、御社ではとても多くの日本ブランドの製品を取り扱っていらっしゃいます。日系企業に対して、他の外国企業と比べてどのような印象をお持ちですか。

チュー・チュー 私は日本人の仕事の仕方をとても気に入っています。サプライヤーとお会いするため頻繁に訪日しますが、いつ誰とお会いしても誠実に対応していただけるという印象があります。これは日本人の国民性によるものでしょう。そういえば、以前日本に行った際にとても印象的なことがありました。私が滞在している間に日本政府から国民に対して節電要請が出るというできごとがありました。その際、オフィスや学校など、あらゆる場所で誠実に節電が行われているのを目にしました。日本人ならば当たり前だと思うかもしれませんが、ミャンマー人の場合はそうではありません。「自分は電気代を払っているのだ」と主張し、好きに電気を使ってしまうのです。ミャンマー人は日本人のこうした誠実さや利他的な点を見習い、改善していかなければいけません。
また、仕事に対する考え方も同様です。ミャンマー人は少しでも高い給料の職場があるとすぐそちらに移ってしまいます。しかし、それだとキャリア構築という意味ではマイナスです。ひとつの職場で長期間勤め上げて経験を蓄積することの大切さを学ぶなど、仕事に対する概念自体の改善が必要だと考えます。

永杉 私どもは人材紹介のコンサルティングをしておりますが、キャリアアップではなくジョブホッピングを繰り返している人材が多く、彼らの将来に一抹の不安を抱いています。ところで、日本とミャンマーは非常に長い歴史を持っています。チュー・チューさんは、両国の今後の関係がどのように変遷していくとお考えですか。

チュー・チュー 日本はこれまでの歴史においてもミャンマーに多くの支援をしてくれましたが、近年はそれが加速しているのが喜ばしいことだと思います。ティラワ工業団地も多くの日系企業の投資が集まっています。これにより、ミャンマー人の雇用機会も増えますし、なによりも日本の技術を学ぶこともできるので、歓迎したいですね。
もちろん日本ブランドを多く扱っている当社としても、日本とミャンマーの橋渡し役をしていきたいですね。たとえば、定期的に開催されているJapan Expo には、当社もメインスポンサーとして支援をしています。ビジネスで両国が結びつくことはもちろんですが、こうした市民同士の交流も、より活発にさせるべきです。

永杉 私どもも100社以上の日本ブランドを集めた「The JAPAN BRANDExpo」を2017年度中に企画しておりますので、ご支援いただけましたら幸いです(笑)。日本ブランドを数多く取り扱っている会社をお持ちのチュー・チューさんが、ビジネスのみならず両国の草の根交流にも目を向けてくださっているのは大変心強いです。今後も、日本とミャンマーの関係がより良いものになるようにお力を尽くしていただければうれしく思います。本日は貴重なお時間を頂戴し、誠にありがとうございました。

永杉 豊[NAGASUGI YUTAKA]

MYANMAR JAPON CO., LTD. CEO
ビジネス情報誌「MYANMAR JAPON BUSINESS」、「MJビジネスバンコク版」、ヤンゴン生活情報誌「ミャンジャポ!」など4誌の発行人。英語・緬語ビジネス情報誌「MYANMAR JAPON+plus」はミャンマー国際航空など3社の機内誌としても有名。日本ブランドの展示・販売プロジェクト「The JAPAN BRAND」ではTV番組を持つ。ミャンマーの政財界や日本政府要人に豊富な人脈を持ち、ビジネス支援や投資アドバイスも務める。 一般社団法人日本ミャンマー友好協会副会長、公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会特別委員、WAOJE(旧和僑会)ヤンゴン代表。