【TOP対談】ミャンマーの先輩に問う!

MYANMAR JAPON代表の永杉が日本・ミャンマーの第一線で活躍するリーダーと対談し、"現代ミャンマー"の実相に迫ります。

<2017年5月号>連邦議会 人民代表院議員 テエッ・テエッ・カイン氏

今回のテーマ議員と貴金属企業のオーナー。ふたつの顔を持つ才人

テエッ・テエッ・カイン氏[Dr.Thet Thet Khine]

連邦議会 人民代表院議員
国民民主連盟(NLD)所属の人民代表院議員。Institute of Medicine で医学の学士号を取得後、Institute of EconomicsでMBA を取得する。金や宝石を扱う企業も経営しており「Golden Palace Gold & Jewelry」社のDirector、「Jewel Collection Manufacturing Co., Ltd」のManaging Directorなども務めている。

規律を重んじる日本人や日系企業にさらなる進出と投資を期待したい

女性議員の活躍が目覚ましいミャンマーの連邦議会

永杉 本日はミャンマー連邦議会の中でも有名な女性議員テエッ・テエッ・カインさんにお話を伺います。まず、議員になられたきっかけをお聞かせください。

テエッ・テエッ 私は国民民主連盟(NLD)所属候補として、ヤンゴンのダゴン選挙区から出馬し人民代表院の議員になりました。我が党には、同じ能力の人材ならば「年少者」「少数民族」「女性」を優先するという基準があり、私が候補になったいきさつがあります。NLD の女性議員は2010年の第1回選挙時には6% でしたが、今では倍増しています。

永杉 ミャンマー議会も女性の進出が進んでいるのですね。日々の議員活動はいかがでしょうか。

テエッ・テエッ 議会への参加や、ダゴン住民の要望を国政に反映させる仕事はもちろんですが、もう一つ大切なこととして、議会の監視が挙げられます。議会の運営に目を光らせるのは、今のミャンマーではとても重要なことだと考えます。さらに、銀行・金融委員会のメンバーとしても活動しています。

家族経営からスタートした事業がミャンマーで大成功を収める

永杉 テエッ・テエッさんは以前から女性経営者として名を馳せていらっしゃいました。経営されている会社についてお聞かせください。

テエッ・テエッ 私は主人と1994年に結婚しました。その際、両親が開業資金を用立ててくれたため、同じ年に「ShweNan Daw」という金を扱う店を、従業員2名という状況からスタートしたのです。現在も主人が代表で私がサポートをする形で運営し、先日オープンしたジャンクションシティ支店が5店舗目となります。

永杉 取り扱っている商品は金のみでしょうか。また、ミャンマーでは宝石も採掘できますが、自社で山も所有されているのでしょうか。

テエッ・テエッ 5店舗のうち最初の2店舗はチャイナタウンにあり、主に金を扱っていました。しかし、以降の3店舗は「Forever Gems」というブランドでショッピングモールに展開し、ジュエリーも販売しています。自社で鋳造や鍛造を行う工場を所有しているため、販売している商品はすべてオリジナルで、現在雇用している従業員約600名のうち、400名以上が工場で働く技術者です。
当社は宝石の加工と販売のみです。原材料は外部から買い付けを行うほか、古い金製品のリサイクルも行います。これは鋳造を行える工場を持つ当社ならではの強みと言えるでしょう。

永杉 開業から23年で会社が大きな成長を遂げた秘訣はどのようなところにあるとお考えでしょうか。

テエッ・テエッ 重要なことはリーダーシップだと思います。しかし当社は、主人と私の2人で運営しているため、一般的な会社におけるリーダーシップとは少し異なるかもしれません。主人は店舗運営やイベント企画など表向きの仕事を先導する一方、私は会計処理や従業員が働きやすい環境作りなどを担当しています。役割は異なりますが、互いの仕事を尊重し、信用していることが成功の秘訣と言えるかもしれませんね。

平等な競争社会を作ることが現在のミャンマーにおける課題

永杉 次にミャンマーの経済状況についてお聞きします。国内経済規模が拡大していく一方、インフラ整備や経済格差の問題も取り沙汰されていますね。格差の原因と、是正のために必要な対策は何でしょうか。

テエッ・テエッ 永杉さんのご指摘通り、インフラ整備は喫緊の課題と言えるでしょう。これを解決するためには、電力をはじめとしたインフラ企業にも外国資本をさらに呼び込む必要があると考えます。外資誘致に向けた議論をもっと活発化させなければいけません。また、格差も大きな問題です。所得格差が広がるにつれ、社会不安も比例して大きくなっているのは由々しき問題です。軍事政権時も経済は発展しました。しかし、残念ながら賄賂が横行していたため、一部の人間しか成功を享受できなかったことは事実です。格差是正には、システムを根底から変えなければいけません。そのためにはJICA やIMF などから技術・資金両面の支援を受け、平等な競争が行える社会の仕組みを整備することが急務と言えるでしょう。

日系企業の積極投資が両国の明るい未来を切り拓く

永杉 日系企業も参入に強い興味を抱いています。日系企業との提携に興味はおありでしょうか。

テエッ・テエッ 私共は不動産ディベロッパーとして「68Residence」なども手がけています。こうした大きなプロジェクトを進める際には提携できればいいですね。私はこれまでに、7回ほど訪日経験があります。日本へ行くときの肩書は商工会議所の執行委員や、ミャンマー女性起業家協会の副会長としてなどさまざまです。どんな立場で日本に行っても、日本の会社はルールや決まりごとをしっかり守ると耳にしますから、提携は前向きに考えたいです。

永杉 訪日時に感じた日本と日本人への印象をお聞かせいただけますか。あわせて、日本人に対してメッセージをお願いします。

テエッ・テエッ 日本人は、勤勉で努力家、そして規則に厳しいという印象です。また、日本語とミャンマー語は文法や発音が比較的似ているとも感じました。そのためか、ミャンマー人のなかには、とても流暢に日本語を操る人材がいます。これは、今後両国が一層親密な関係になるために有利なことだと言えるのではないでしょうか。
日本に対して私からまずお伝えしたいことは、政府と国民に対する感謝です。ミャンマーの民主化に対して、日本は多大な支援をしてくれました。そして、日本に対してお願いしたいこととして、日系企業のミャンマーへの積極的な投資が挙げられます。日系企業にとってはコストカットなどのメリットがある一方、ミャンマーにとっては新たな雇用が生まれますし、日本の技術や規律などを学ぶことができます。日系企業の方がもし、ミャンマー進出に対して何らかのハードルを感じているのであれば、それを私たちに教えてほしいと思います。改善に向けて積極的な行動をとる準備はできています。

永杉 現在、日本政府とミャンマー政府の間ではMJJI(日ミャンマー共同イニシアティブ)という、ミャンマー国内における日系企業の投資環境整備を迅速化をする取り組みがあり、毎月会議が行われています。MJJI メンバーの多くは本誌をご覧になっているので、今のお話は興味深く受け取ってもらえると思います。この対談をきっかけに両国が新たな一歩を踏み出せればうれしく思います。本日は貴重なお時間をいただきまして誠にありがとうございました。

永杉 豊[NAGASUGI YUTAKA]

MYANMAR JAPON CO., LTD. CEO
ビジネス情報誌「MYANMAR JAPON BUSINESS」、「MJビジネスバンコク版」、ヤンゴン生活情報誌「ミャンジャポ!」など4誌の発行人。英語・緬語ビジネス情報誌「MYANMAR JAPON+plus」はミャンマー国際航空など3社の機内誌としても有名。日本ブランドの展示・販売プロジェクト「The JAPAN BRAND」ではTV番組を持つ。ミャンマーの政財界や日本政府要人に豊富な人脈を持ち、ビジネス支援や投資アドバイスも務める。 一般社団法人日本ミャンマー友好協会副会長、公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会特別委員、WAOJE(旧和僑会)ヤンゴン代表。