井本勝幸応援隊による地方現地レポート(2)カレンニー民族進歩党

遺体を回収しに戻ると発砲される
タイからの支援で命をつなぐ現状

 長年に渡り、ミャンマーの少数民族に渡り支援を行ってきた「井本勝幸応援隊」。“ビルマのゼロファイター”こと井本勝幸氏らが中心となって活動しているネットワークであり、2月1日のクーデター以降、さらなる貧困にあえぐ少数民族に食料支援を含めたさまざまなサポートをしてきた。
 そんな井本勝幸応援隊から弊社に届いたレポートが、カイン州のカレン民族同盟(KNU)とカヤー州のカレンニー民族進歩党(KNPP = Karenni National Progressive Party)の状況だった。今回は「なんとか助けてほしい」と嘆いているKNPPの現状をお伝えする。


 すでにカヤー州内の避難民は10万人を超えた。国軍は住民に退避命令を出しており、住民はジャングル生活での生活を余儀なくされている。自宅に忘れ物を取りに帰ると銃撃され、白旗を掲げていても問答無用で銃撃されるというからその苦しい生活ぶりは想像を超えている。現地のCDM参加者は1,000名以上が逮捕され、刑務所に入れられたという。

 最大の被害が出ているデモンソーでは銃殺された住民は100人以上で、遺体がそのまま放置されている。前述したように遺体を回収しようとしても発砲の的にされるため、現時点での対応策はない。また、他州へ抜ける道路はすべて国軍の警備隊が配備されており、州内は深刻な物資不足となり、必要な物資はタイから入れるしかない状況となっている。

 タイ国境付近の避難民は、CDM参加者を含めてKNPPが保護している。KNPPはCRPH/NUG側に立ち、ミャンマー国民を支持している。

 タイ国境から遠くのデモンソー、ロイコーなどの州内(サルウィン川以西)の道路は国軍が押さえており、タイからの支援物資が燃やされているという厳しい状況。場合によっては、今後は国軍の拠点を攻撃してでも物流網を確保する必要が出てくるという。一方、国際機関からの援助はまったく届いておらず、赤十字国際委員会ミャンマー(ICRC)からも「我々はベストを尽くした(が、支援することはできない)」と連絡があった。

 タイ国境付近のKNPP実効支配地は山岳地帯のため、十分な水がなく、大勢を収容する避難民キャンプを設営できない。最適な方法は、タイ側に難民キャンプを作ることだが、タイ政府は今もなおミャンマーの避難民を認めておらず、事態は進展しない。結果、タイからのクロスボーダーで細々と生命をつなぐしかないという悲惨な状況に陥っている。

 カヤー州の住民はほとんどが軍評議会を恨み、ミャンマー政府と認めていないため、KNPPも国軍相手に交渉することないとされる。そもそも州内の国軍もKNPPとの交渉を一切拒否している。
 宗教指導者がタウンジーで国軍と交渉し、当面今後1か月の停戦で合意したが、現実は国軍の攻撃は止まっていない。

 カヤー州は無法地帯と化している。市民からは「なんとか助けてほしい」といった切実な声が絶えない。

井本 勝幸 [Imoto Katsuyuki]

Profile
1964年生まれ、福岡市出身。東京農業大学、立正大学卒業。90年から海外で難民支援を行い、帰国後仏門に入り、2000年に「四方僧伽」を発足。11年より、反政府ビルマ少数民族地域と交流を持ち、現在ではミャンマーの内戦停戦に貢献。旧日本軍兵士の遺骨調査活動を行い、多くの人権賞、外務大臣表彰を受けている。