逆境を乗り越え、事業を継続する日系企業 稼働し続けるミャンマー縫製業(P.2)

Juki Myanmar所長
清水 達男[Shimizu Tatsuo]

世界シェアNo.1ミシン企業のミャンマービジネス
顧客の約半分は中国企業

数万台のミシンをミャンマーに導入してきたJUKI。大手アパレル工場御用達のミシンメーカーがこの地で歩んできた軌跡とはどういうものなのか。清水所長に語ってもらった。


顧客の半数以上が中国企業
今は新規契約が厳しい状況

 工業用ミシンでシェア世界1位を誇り、日本ではブラザー工業とともに縫製業界では最大手とされているJUKI。2000年初頭よりミャンマーに進出していたが、正式に拠点を設立したのが2012年。17年頃より、中国系企業を中心に顧客を増やし、順調に成長してきた。現在400社以上との取引があり、顧客の構成は半数以上が中国企業、20%が韓国企業、9%が日系企業となっている。

 中国企業の競合もあるが、そこは世界シェア1位という実績もあり、多国籍に支持されている。「過去の実績や日本クオリティという信頼もありますし、我々がミャンマーに拠点を持っているということで、困ったときに対応できるという安心感もあると思います」と話すのは同地で舵取りを任される清水所長。アフターケアが不可欠なビジネスモデルだからこそ、ときにサービスの一環として他社製品の部品も供給することもあるという。前述したように顧客の多くが中国・韓国企業のため、スタッフも中国人駐在員が2人、韓国語を話せるミャンマー人スタッフ1人を抱え、付き合いの長い中国系ディーラーをミャンマーに呼び寄せるなど万全の体制を整えている。

 ミャンマーで使われているミシンの傾向としては、ミドルスペックが多く、オートメーション化されたハイスペックはまだ少ない。「自動機はボタンを押せば縫えるため、工員の技術を補うことができます。逆にスキルがあればミドル~ロースペック機でもある程度の工程は問題なく行えます。マシンのスペックについては、人件費との兼ね合いで、工場の考え方次第です」。

 コロナ禍で新規契約は厳しい状況だが、一部の工場では増設案件もあり、年末年始にかけて受注できる可能性があるという。ただし、全体的な落ち込みは否めず、政情が落ち着くまでは地道な努力が必要と清水所長は語る。また、アフターケアはコロナの影響で工場内での作業が厳しい場合、事務所に持ち帰るなどの対応に努めている。

 政情不安や各国の景気悪化もあり、工場進出については当面厳しくなると予測する清水所長。「しかしながら、この国の人たちの人柄はとてもよく、ミャンマーはポテンシャルがあります。政情が安定し、コロナが収まれば、数年内に再度投資が復活すると期待しています」。

▲下記のハニーズ工場にも大量のJUKI 製ミシンを導入。壊れにくい日本ブランドの信頼性は何ものにも代えがたい
▲昨今増えてきている自動機のメンテナンスを行う自社スタッフ。メーカーにとってはアフターケアが最重要課題

設立当初4~500人だった従業員は現在4000人にまで増え、ミシン3000台を有し、日系縫製業でも圧巻の規模を誇るHoneys(ハニーズ)。日本人はわずか5人ながら完璧なオペレーションを実践し、日本市場向けて生産を行っている。全66ラインを有するメガ工場の生産工程をのぞかせてもらった

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(続く)