バックナンバーはコチラ

売れ行きは毎年倍増、日系自動車の需要が高まる 好景気が続く新車販売

中古車市場は衰退していき、新車が市場を席巻する日も遠くないだろう。今年から実質、中古車の輸入が禁止となり、新車販売が好調。シェアは日系メーカーがほぼ独占状態であり、トップに君臨するのがSUZUKI、次いでTOYOTA が追いかける図式だ。伸び悩むミャンマー経済を尻目に、好景気を続けている新車マーケットの実情を掘り下げる。

 昨年発表された「右ハンドル中古車の輸入が禁止」というニュースは、日系社会に少なからず衝撃を与えた。この国は右車線にもかかわらず、街中を走る車はそのほとんどが右ハンドルであり、つまり大半が日本から輸入した中古車。また、その中古車販売で財を築いたミャンマー人富裕層も多く存在するため、同ビジネスが市場から完全に締め出しを食らうと思っていた人は多くはなかったはず。しかし事実、輸入規制は施行された。

 中古車が販売できなければ、自ずと新車に注目が集まった。下記で浅野MDも語る通り、ローンが可能となったことも追い風となり、販売は好調の一途。また、TOYOTA車を販売するTTASも年々倍々で売れているとうれしい悲鳴を上げている。これまでは基本的に不動産を所有していなければ、一切ローンが組めなかったミャンマーにおいて、こうした変化が大きなうねりとなって自動車業界に好影響を与えた。それだけではない。ローンが可能となった結果、各銀行は頭金を下げるなど切磋琢磨し、金融業界も活気づく形となった。

 ティラワSEZ内にあるSUZUKI工場では、新モデル「スイフト」の生産が決定。元々、スイフトの知名度は高く、価格はエルティガよりも低い設定となることから需要増が見込まれる。願わくば製造ラインの拡張によるTier1、Tier 2の集積だが、浅野MDは「さらなる販売台数が見込めれば」とまだまだ慎重な構え。一人あたりのGDPが3,000ドルを超えると自動車が急速に普及するといわれ、現状1,300ドル以下のミャンマーでは、もう少し時間はかかるのだろう。

 自動車産業の好調ぶりは、経済で伸び悩んでいるこの地において一筋の光明。なぜなら自動車産業は裾野が広く、前述した金融から下請けの製造業、物流などにも事業が波及するため、他の産業に比べても影響力が大きい。そして現在、その中心に日系メーカーが位置しているのは間違いなく、今後も大きな期待が寄せられる。

 

ミャンマー・マーケットリーダーの事業展開に迫る ERTIGA SUZUKIの一手
ティラワSEZ、サウスダゴンの工場で3車種を製造し、販売も好調を続けるSUZUKI。今年からは新モデル「スイフト」の生産が決まり、積極的な展開を図る。
浅野Managing Director(以下MD)にさまざまな角度から同社の取り組みを語ってもらった。

ERTIGA

SUZUKI(MYANMAR)MOTOR Managing Director
浅野圭一 Asano Keiichi

今年の販売は1万台超え
地道な現地生産を継続

 ミャンマーでの自動車産業の最前線に立つのが、SUZUKIといっても過言ではないだろう。ティラワ経済特区(SEZ)とサウスダゴンに工場を構え、現地での生産を行い、新車販売のマーケットリーダーであるからだ。

 ヤンゴンの街中を歩けば、SUZUKI製の車を見かけるのは、もはや日常的な光景。ティラワSEZで生産するエルティガやシアズを社用車にする日系企業も少なくなく、日本人にもお馴染みとなっている。

 新車の販売台数は、2016年が1,139台、17年が3,397台、18年1月~9月が7,854台と、年々ほぼ倍増というその数字からも好調ぶりがうかがえる。さらに今年は1万台を超える見込みで、現地で舵取りを任される浅野社長は「想定以上でした」とうれしい悲鳴を上げている。今年の内訳で見ると、シアズ3,341台、エルティガ3,073台と若干シアズに人気が集まり、軽トラックのキャリイは1,470台。販売された7割がヤンゴンだが、浅野MDいわく「地方から買いに来る人もいます」とのことで、すべてがヤンゴン市内で利用されているわけではない。

 SUZUKIの新車がこれだけ好調な背景には、まずは中古車の輸入規制が強化されたことが挙げられる。2017年、輸入できる中古車の年式が限定され、今年18年はあらゆる右ハンドルの中古車輸入が禁止された。中古車輸入のそのほとんどを日本に頼り、実質の完全な輸入禁止が追い風となり、新車に注目が集まるようになった。さらに同社では販売網の拡大を続けてきた。現在、正規ディーラーを全国37ヵ所に設置し、そのすべてのディーラーにサービスセンターが併設され、アフターセールスの充実を図っている。「当然、新車は売りっぱなしではダメですし、売れた後が重要なんです」と浅野MD。ディーラーは37ヵ所中ヤンゴンが22ヵ所と一極集中状態だが、今後は地方を中心に増加を見込む。

 同社では、ディーラーへのサポート体制を充実させるため、サウスダゴンにトレーニングセンターを設置し、随時メカニックとセールスのスキル向上に努めている。現在、SUZUKIが認定するサービスメカニックは全国に約100名おり、さらに増やすという。「販売台数が増えてきましたから、必然的にメカニックも増やしていかないといけない。ただ、増やすだけではなく、現在いるメカニックのレベルアップも重要。ゆくゆくは彼らが下の人間に指導することでより強固な体制になります」。
 

▼ほぼ毎週末といっていいほどモールなどで行われている展示即売会。オートローンの導入が新車販売への追い風となった

▼ティラワSEZのゾーンAに入居する工場。20ha という広大な広さは圧巻。ここでは月に約1,000台が生産されている