日本在住17年目のミャンマー人が見たクーデター

4か月で進化してきた対抗方法

4か月で変わってきた国軍への対抗方法についてまとめます。

2月と3月は、主に外に出て抗議デモに参加し、公務員に対してCDMへの参加を促していました。3月後半になると弾圧が増え、Social punishment(社会的制裁)へシフトしていきました。デモの弾圧による死者の数も増えました。

虐殺的なデモの弾圧で、4月以降は抗議デモは減り、ヤンゴン市内では大規模なデモはほとんどみられなくなりました。少人数やデモ時間を短縮して速やかに移動するゲリラ的なものに変わって行きました。地方ではデモは続けられています。

PDFとは
NUG(国家統一政府)は、PDF(People Defence Force:人民防衛隊)を発足させました。PDFは、連邦軍の先かけとなる役割を担います。主な目的は、国軍の暴力から市民を守ることです。PDFの隊員は、場所が明らかにされていない安全地帯で訓練を受けています。訓練を指導するのはCDMに参加した国軍の将校たちです。

少数民族地域では、PDFと少数民族武装組織が組んで国軍を攻撃しています。狩猟族の多いチン州では、国軍は大打撃を受けています。ミンダットの戦いでは国軍兵士が最低100名以上死亡したとされています。多くの市民や村人は猟銃で反撃していますがいくつかの自動小銃も確認されています。

カヤー州でも、民族の武装組織KNPPの指導でPDFが国軍の戦闘を繰り広げられています。カヤー州での戦いで警察の検問場と警察署が数箇所制圧され、警察官と国軍兵士が合計80名以上死亡した日もあります。カレン族の分裂DKBA(DKBAから分裂して独自の路線を歩む武装組織)もPDFの若者を指導して国軍と戦闘しています。

カヤー州とカイン州の戦闘は、どちらも市民に対する国軍兵士の暴力が発端になっています。

市街地の爆発と暗殺
ヤンゴンなどの市街地で爆発が相次いでいます。主に国軍兵士、警察官と地区管理者が狙われています。犯行は、国軍に対応する地下組織によるものだと言われています。爆弾以外にも銃やナイフなどで殺害されています。

また、最近では町や村の地区管理者が相次いで暗殺されています。暗殺されているのは、ほとんど国軍が任命した地区管理者です。元国軍出身や国軍に近い人物が大半です。彼らは、国軍への情報提供や弾圧に加わっていることが多いのです。ヤンゴンでは、映画さながらのライフル銃による銃撃戦も起きています。

学校や寺院などの場所でも爆発はおきており、それらは国軍の策略だと思われています。国軍出身や雇われたギャングのような人の集まりです。国軍は、彼らに学校や病院に爆弾を仕込ませてCRPHやNUGによる暴力としてみせかけようとしています。これをする理由は、国軍が鎮圧のために武力を行使せざるを得ないとの「正統性」を世界に見せたいためです。

止まない鍋叩きとデモの進行
都会の高層ビルの住宅では、鍋叩きを続けています。国軍兵士は、住宅に石を投げたり罵声を浴びせたりして威嚇します。ときには発砲やドアを打ち破られて暴力を振るわれることもあります。住民は、兵士の姿を偵察しながらゲリラ的に鍋叩きを続けています。

都会でもデモは減りましたが、完全になくなったわけではありません。ヤンゴン中心地では、フラッシュモブのように抗議活動が繰り広げられています。突如デモが始まり、早いスピードで移動して即解散するという今の時代らしいやり方を取っています。これも国軍の一方的な暴力を避けるために進化した形です。

国軍の内部からの亀裂
警察官同士の殺し合いの事件が複数確認されています。上官と揉めて上官を切りつけて殺害したり、口論から撃ち合いに発展して撃ち殺さるなどで警察官の死者も出ています。警察の上官は国軍将校の天下りが多く普段から下級の警察官は、いじめや差別で不満を抱いている人が多いです。

またUSDP(最大の国軍支持党、党員のほとんどが国軍関係者)党員と国軍兵士の論争がSNS上で見え隠れしています。暗殺されている地区管理者はUSDP党員が多く、前線での犠牲者は国軍兵士の方が多いので両方ともかなり追い詰められている状態です。

また、NUGによって国軍兵士のCDMの支援活動が活発になってきています。SNSでは国軍兵士向けの相談窓口を設置したり安全地帯に到達するまで隠れ家や交通手段の用意をするなどを行っています。

4か月間続いた反クーデター活動も、様々な形へと進化してより現実的になってきています。国軍は未だに何一つ達成できていません。すでにチェコはNUGを正式に政府と認めました。日本の超党派議員連盟もNUGとの連携を強めてクーデターを認めないという声明出そうとしています。つい先日、日本の参議院でもクーデターを避難する決議が全会一致で可決されました。

国軍兵士や警察官の死者も増える一方です。それでも国軍は引き下がる気配は見えません。未だに国連やASEANからの効果のある支援はないのです。

国民は生きるために武器を持って対抗する手段しかありません。

(続く)

テウインアウン
日本在住17年目のWebエンジニア
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