前駐ミャンマー大使・丸山市郎氏 書き下ろし
ミャンマーと日本─私の外交官人生

第3回:ネ・ウイン政権の経済と外交

―廃貨措置
 ネ・ウイン政権の経済について話をする時に避けることのできない話題の一つが、3回行われた「廃貨」問題です。

 国有化など統制経済に対し、国民経済の実体は密貿易などの地下経済に大きく依存する状況を生み出します。当然、ネ・ウイン政権にとっては厳しく取り締まる対象となりました。

 当時の政府は、廃貨の対象を密貿易などに関わっている商人の現金を狙ったものだとしながら、実際には一般国民に深刻な打撃を与えることになります。ミャンマーの人々が自国通貨に一切信頼を置かず、できる限り資産を金や宝石、土地などの形で所有したがるのはこのことが背景にあります。2008年の現憲法では、第36条に「廃貨」しないとわざわざ規定されているのも軍が国民の歓心を得るためのものですが、この規定で安心しているミャンマー人は誰もいないと思います。

―多重為替レート
 ネ・ウイン政権は、米ドルとの公定為替レートを1ドル=約6チャットに固定していましたが、実勢レートは20チャットから40チャットで推移し、いわゆる二重為替レートが恒常化します。

 2011年に誕生したテイン・セイン政権で、日本をはじめ各国とIMFなどの国際機関からこの問題の解決について要請や協力を行い、その結果為替レートはほぼ一本化された状態になりました。

 ネ・ウイン政権を経験した私からすると、ヤンゴン市内に両替所が出来、堂々とドル札からチャット紙幣に両替出来たことは非常に新鮮な驚きでした。しかし2021年のクーデター後には再び様々なレートで米ドルが取引きされ、ネ・ウイン政権当時よりも更に多重化しています。

 ミャンマーでは、軍事政権が「統制経済」を強権的に進めるたびに外国為替レートの多重化が外貨管理のための政策手段として「常用」されています。問題の深刻さを改めて認識させられます。
(続く)

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