在外ミャンマー人の所得に関する連邦税法の改正

 ミャンマー国外に住むミャンマー国民が海外で得た所得について、2023年9月12日付けにて、連邦税法改正法の施行が発表(No.55/2023)され、さらにその補足として、給与所得に関する計算方法及び納付方法の詳細についてのアナウンスも公表されました。改正税法については、第34条(A)の削除に加え、第22条の改正に関する記載がなされています。この改正税法については、2023年10月1日から2024年3月31日までその効果が及ぶとされています。
 第31条(A)の4は、在外国民への免税措置規定であり、この条文が削除されることは、再び課税を行うことを意味しています。
 第22条については、改正前は、一律で国外所得に関し、10%の税率による課税を規定したものでしたが、今回の改正にて、給与所得以外の所得と給与所得との2つに分け、それぞれ計算方法を規定したものとなっています。
 下記、弊事務所が行った改正法及び給与所得の税額及び納税方法の詳細に関する発表の意訳抜粋を使ってご説明していきます。

【改正法意訳抜粋】
(A)所得税法第8条に列挙された所得の種類のうち、給与所得以外のものについては、非居住者が外国通貨で外国において得た所得について、所得税法第6条および6条(A)に規定された控除項目を控除せずに、得た通貨の種類にて10%の所得税を課する

※参考:第8条に列挙された所得とは①給与所得②専門家所得③事業所得④賃貸
所得⑤キャピタルゲイン所得⑥源泉不明の所得⑦その他所得の7種類を指す

(B)所得税法における記載の有無にかかわらず、非居住者が外国通貨で外国で得た給与所得については、下記の2つの方法からいずれか少ない額につき、得た通貨の種類にて、所得税を課する①所得税法第6条のとおり控除項目を控除し、第19条(C)の税率により、第8条の規定のとおりに計算した額②所得税第6条及び第6条(A)に規定する控除額を控除せずに収入に対し2%を乗じて計算した額

(C)本法のとおりに計算された税額からは、税額計算に用いた所得の種類に応じ、外国で納付した税額を相殺することができる

【非居住者の給与所得についての所得税徴収に関する発表(意訳抜粋)】
 第2項
 2.ミャンマーの国外に居住し就業しているミャンマー国民は、2023年の連邦税法改正法のとおり、自己が海外において外国通貨で得た給与所得について、下記の2通りの方法により計算して、いずれか少ない税額を支払うものとするA)所得税法上認められている控除項目につき控除を行い、累進課税によって計算する方法B)所得税法上認められている控除項目を控除せず、税率2%にて計算する方法
 第3項.非居住者が、海外において外国通貨で得た給与所得につき所得税を支払うときに必要な情報等については下記の通り(※以下省略。意訳参照のこと)

※この第3項3においては、A)~F)まで納税計算および手続きの詳細等の記載がなされている。A)IRDのサイトにある所得税計算システムPaye Tax Calculatorに入り、自己が納税すべき所得税額を計算することができるB)所得税を納付するためにシステムに入って行うデータの入力は、所轄の大使館職員もしくは所轄税務署の担当官が行う。必要な情報は、納税義務者の名前、パスポート番号、身分証明書番号、OWIC番号またはCDC/SIRB番号、住所等であるC)給与所得税については、自己が取得した外国通貨で納付する必要があるD)支払うべき所得税額につき、関連する当該国の税法上納付した所得税額を相殺することができるE)通常は、関連する当該国にあるミャンマー大使館において、パスポート更新時に払うこととなる。納税者は、毎月、四半期、毎年、当該国の大使館にて支払うこともできるF)関連する収入年度につき納付した場合には、所轄大使館または、所轄タウンシップの税務署からQRコードが入っている電子納付書および非居住者の個人所得税納付関連の証明書が発行される

【まとめ】

 今回の第22条の改正におけるポイントは、給与所得と給与所得以外を分けている点です。とりわけ、給与所得については、所得控除項目の適用は無いものの2%という低い税率で計算した額で、所得税を計算することが可能であり、かつ、外国で納付した所得税額を相殺できるため、これが建付けどおり施行されるというのであれば、給与所得者についてミャンマーで再課税される可能性は低くなります。しかし、運用において実際どのような措置がなされるかという点では、外形標準的な方法の可能性も含めて、懸念が残ります。引き続き動向を見ていく必要があるでしょう。

(2023年11月号掲載)

執筆者プロフィール

若松裕子
Japan Outsourcing Service Co., Ltd.(税理士法人Right Hand Associates)ヤンゴン事務所長・税理士。
2014年よりミャンマー駐在。中小企業から上場企業、ミャンマー国内法人まで幅広く事業をサポート。趣味は坐禅。