年度税務申告。帳簿、証憑の整理について

 昨年に引き続き、今年度も3月末決算、6月末税務申告期限となっています。3月末から4月初旬にかけては、決算対応として、最低でも下記の点に気を付けて行うこととおすすめしています。すでにみなさん、ご対応済と思います。

・実地棚卸
・現金等残高の実地確認
・各種税金の予測及び対策及び予納状況の確認
・カーターカー31(名称がカーターカー05-01に変更になりました)の取得手配
・債権債務の整理(親子間・取引先間)
・キャピタルゲイン課税対象となる資産譲渡等の確認(廃棄資産もエビデンスを残す)
・来年度の事業計画の再確認
・印紙税の罰金適用の有無
・保存書類の確認

 書類の保存に関してですが、ミャンマーにおける帳簿・証憑類の保存義務は、Tax Administration Law(2019年10月施行)により定められています。保存すべき書類については、IRDのサイトにおいて、

sales and purchase invoices, costing documents, bookings, diaries, purchase orders, delivery notes, bank statements, contracts, and other documents which relate to an element of a transaction

とあります。保存期間については、Part 4 (RECORDKEEPING AND INFORMATION COLLECTION) 20.(C)において、

 A person required to prepare or retain records of a transaction under tax legislation must retain the documents
(1) for a period of seven years from the date on which the transaction took place; or
(2) if longer than the period of seven years, until expiration of the time limit for assessment of tax for a tax period to which the records are relevant.

 と定められており、基本的に7年間の保存義務が課せられています。また、タックスクリアランスが終わっていたとしても、税務調査においては、紙ベースによる証憑のチェックが行われます。税務調査が終わるまでは、保管しておく必要があります。また、監査報告書、総勘定元帳、定款、不動産関係その他重要な契約書書類、申請書、届出書等の控えなど、重要な書類については、永久に保管しておいた方が良い書類となります。

 決算の帳簿が締まった後は、監査人による監査が義務付けられています。また、取締役による財務報告の承認、株主総会への会計報告等も行う必要があります。税務申告は、確定した決算に基づいて行われます。まだ日本ほど複雑ではありませんが、会計上の利益について、減算、加算といった税務調整を行って、法人税法上の課税所得を算出します。税務調整については、永久差異として扱うものもありますが、一部、将来加算一時差異もしくは将来減算一時差異といった性質のものもあります。日本の法人税の別表5-1の様な欄が有ると良いのになあと、常々思いますが(笑)、シンプルといえばシンプルで、自社で管理ができるのであれば、リストを作成しておくと良いでしょう。

(2023年6月号掲載)

執筆者プロフィール

若松裕子
Japan Outsourcing Service Co., Ltd.(税理士法人Right Hand Associates)ヤンゴン事務所長・税理士。
2014年よりミャンマー駐在。中小企業から上場企業、ミャンマー国内法人まで幅広く事業をサポート。趣味は坐禅。