ミャンマーローカルスタッフのマネジメント(1)

 ここ2年間くらい、在ミャンマーの日系企業の駐在員さんの交代が多くなった印象があります。赴任してきたときは、コロナ禍と政変後の困難な時期だったため、リアルにローカルスタッフの方とのコミュニケーションを取れ始めたのが、今年度になってから、という方も多く見受けられます。

 今回は、かつての私の失敗談も交えて、ミャンマーローカルスタッフのマネジメントについてご紹介していきたいと思います。

 9年前、私がミャンマーにやってきたときは、サンチャウンのオフィスに机1つ、スタッフ1人のスタートでした。最初の年に、従業員が4名まで増え、2年目には、従業員が6名ほどになっていました。そのときは、右も左も分からず、日本でやっていたのと同じように部下と接していました。具体的に言うと、専門職にありがちな、いわゆる『背中を見て育て』というやり方です。また、ミャンマーの会社文化についてもほとんど知識がありませんでした。忙しくなっていく中で、厳しい勤務管理を行って、部下からの要望も聞かず、評価についても公正なものではなかったと思います。2年間で既に離職した者もおり、ミャンマー人スタッフは、離職率が高いと聞いていたので、そんなものかなあと思っていました。

 3年目の繁忙期の直前、6名のスタッフのうち、マネージャー候補が、突然離職を願い出てきました。そして、その直後、他のスタッフ3名も離職を希望してきました。繁忙期直前で、6名中4名が辞めるというのですから、大変な状況です。業務はますます繁忙を極めており、これは大変だ、とやっと危機感を感じ、そこで初めて、自分のリーダーシップについても大猛省を始めたのでした。

 日本でも部下との衝突は何度か経験していましたが、ミャンマーに来てからは、それをひしとは感じていませんでした。その後、すぐに分かったのですが、多くのミャンマーローカルスタッフは、めったに上司に不満をはっきり言うことはありません。不満があふれたときは、退職願いを出すとき、という場合も多く見られるのです。そして、私のリーダーシップは、典型的なハラスメント上司型だったのでした。

 困り果てて猛省した私は、藁にもすがる思いで、組織作りがうまくいっているという噂の企業の方々に教えを乞うことにしました。唐突にコンタクトを取って、『ミャンマーの組織づくりのポイントについて教えて欲しい』『どうやったらミャンマーのスタッフが気持ちよく働けるのか成功している取り組みを教えて欲しい』とお願いしてみました。ミャンマーにいらっしゃる拠点長や経営者の方々は、心が広く、いろんな方が、秘訣や取り組みを教えてくださいました。それらの良いポイントを全て実行して、それでも離職率が止まらなければ、もうミャンマー事業を止めよう、と思って自分の組織づくりに取り組むことにしました。

 そして、3年目。離職率は、ついに0%になりました。そして30名弱となった9年目の今でも、一部のやむを得ないケース以外、ずっと離職率0%は、続いています。私は、ミャンマー事業を止めなくてすんだのでした(笑)。

 私の実行したマネジメントのポイントは、下記のとおりです。
(1)ロールモデルとなるキーパーソンを採用する
(2)個の成長を促せる仕組みづくりをする
(3)ミャンマー文化を取り入れて、もう少しでよいことがあると感じられるイベントを行う

 それぞれ行った施策については、次回以降、お話ししていきたいと思います。機会がありましたら、ぜひみなさまの行ってよかったマネジメントについてもお聞かせいただけたら幸甚です。共にミャンマーで頑張っていきましょう。

(2022年12月号掲載)

執筆者プロフィール

若松裕子
Japan Outsourcing Service Co., Ltd.(税理士法人Right Hand Associates)ヤンゴン事務所長・税理士。
2014年よりミャンマー駐在。中小企業から上場企業、ミャンマー国内法人まで幅広く事業をサポート。趣味は坐禅。